現場で活用できる統計手法を基礎から実務的にしっかりとものにできるよう学べる本を紹介します。
自分には、不向きかもと思いつつISO9001の品質管理責任者の立場にある人。
あるいは、自分は、「もともと文系だし」、「数学は嫌いだし苦手だった」、「統計と名の付くものには、ずっと縁が無かった」という自分の特質・経歴などとは、関係なく、現在、工場で品質管理、品質保証、工場検査などに所属して検査業務等を担当している人、あるいは、建設業の現場代理人や工事部門責任者の人。
QC7つ道具(:「パレート図」「特性要因図」「ヒストグラム」「グラフ/管理図」「チェックシート」「散布図」「層別」、7つ道具の組み合わせは、この中の組み合わせ等を変えて新、旧とか呼んでいます。)については、独学で、あるいは研修会とかで一通り学んだが、表面的な理解しかできておらず、その本質的な部分は、余り理解できていないため余り活用できていないと感じている人。
一方、ISO 9001:2000規格、8.4 「データの分析」において、以下のように要求されています。
「組織は、品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証するため、また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために適切なデータを明確にし、それらのデータを収集し、分析すること。
この中には、監視及び測定の結果から得られたデータ及びそれ以外の該当する情報源からのデータを含めること。データの分析によって、次の事項に関連する情報を提供すること。
a)顧客満足(8.2.1参照)
b)製品要求事項への適合性(7.2.1参照)
c)予防処置の機会を得ることを含む、プロセスと製品の特性及び傾向
d)供給者 」
QMSの取り組みで上記に対応するため、また少しデータの蓄積が図られたので、「データをそれなりに分析して実際のアクションに結びつけてはいるが、その結果は、別にデータがなくても皆が分かっていたような範囲に留まっていることへの不満があり、蓄積したデータから有効な情報を汲み取るため更なるデータの加工を」とのニーズから、泥縄式で、少し関連本を紐解いてはみたが、難し過ぎて挫折したような人。
このような人に役立つと思われる書籍を紹介します。「文系の基礎力UPとのことで」、工場というよりは、事務スタッフ等を対象に書かれた本の体裁をしておりますが、ビジネスにおいて、統計を使うような対象の人、全てに実務に使える「基礎力UP」において役立つ内容となっていると思います。
本書:「直感的統計学」です。
著者は、吉田 耕作 先生で、2006年4月に日経BP社から発行されています。「文科系にも「ハラツキ(標準偏差:σ)」と「リスク」などの概念を分かり易く理解してもらうこと」を意図して2003年7月に同じ日経BP社から発行された前著「経営のための直感的統計学」の改訂増刷版になります。(5章分が増えています。)
例えば、本書の第2章、「アクションのための統計学」(この内容は、前著も同じですが)では、「特性要因図」、「チェックシート」、「パレート図」が取り上げられています。実に分かり易い明快な説明でしっかりと統計の基礎を身につけられる工夫がされています。
デミング博士の助手をつとめ、米国の大学で教えておられた吉田先生流の統計哲学とも言うべき【吉田の法則】のまとめが各章のポイントでまとめられてあり、多数の演習問題もついています。
きっと統計がもっと身近に感じられ、統計を自分の仕事に活用してみたいと思うような示唆を与えてくれる本だと思います。
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なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 はじめに
統計学とは何か
不確定要因とリスク
全体像をつかむ
ばらつきと確定数
まとめとして
第2章 アクションのための統計学
1 ブレーン・ストーミング
2 チェックシート(データ記録表)
3 パレート図
●練習問題
第3章 グラフはかくも雄弁なり
1 ヒストグラム
2 度数折れ線グラフ
3 累積度数分布
●練習問題
第4章 全体を一言で表すには――代表値(中心値)の諸指標
1 算術平均
度数分布表を用いた平均値の求め方
平均の直感的理解
“当たり”を使った計算方法
平均値の長所と短所
2 中央値(中位値・メディアン)
度数分布表を用いた中央値の求め方
中央値(メディアン)の長所と短所
3 モード(最頻値、並み数)
モードの長所と短所
4 加重平均
●練習問題
第5章 リスクを理解しよう――ばらつき度の諸指標
1 範囲
2 標準偏差
3 度数分布表を用いた平均及び標準偏差の計算方法
4 平均値(μ)と標準偏差(σ)のショートカット計算方法
5 変動係数
6 応用
●練習問題
第6章 不確かな世界を取り仕切る法則――確率
1 標本空間
2 ベン図
3 確率の概念
(a)理論的確率
(b)実験的確率
(c)主観的確率
4 確率の前提条件及び法則(公式)
1)確率の前提条件
2)確率の法則(公式)
5 ベイズの定理
6 ツリー・ダイアグラム
7 ツリー・ダイアグラムを用いたベイズの定理
8 可能な全事象の数え方
a)独立事象の可能性
b)順列(permutation)
c)組み合わせ(combination)
9 確率変数と確率分布
10 期待値
11 分散
●練習問題
第7章 最も典型的なばらつきのタイプ――正規分布
1 正規分布とは何か
2 Zテーブルの使い方
3 Zテーブルの応用例
●練習問題
第8章 よく見かけるもう1つの分布――二項分布
1 ベルヌーイ試行
2 二項展開
3 二項分布
4 二項分布の期待値、標準偏差、及び変動係数
●練習問題
第9章 1を聞いて10を知る方法――サンプリング論
1 サンプル、ユニバース、フレーム
サンプリング論
ユニバース(母集団)
フレーム(枠)
2 列挙的調査と分析的調査
3 ランダム・サンプリング(無作為抽出法)
4 サンプル平均とサンプル標準偏差
5 標本平均の分布(サンプリング分布)
6 中心極限定理
7 中心極限定理の応用
8 t分布
自由度
9 t分布と正規分布の比較
10 チェビシェフの不等式
11 どの公式をいつ用いるか?
●練習問題
第10章 未知のものに当たりを付ける方法――推定
1 点推定
2 区間推定
3 信頼度
4 信頼区間の推定
ユニバース・サイズが大で、σxが既知の時
ユニバース・サイズが大、σxは未知、サンプルサイズ大の時
Nが大きくなく、σxが未知の時
元の分布が正規分布でない時
5 所定の信頼区間のためのサンプル・サイズ決定方法
サンプル・サイズを決定するための一般式
6 t-分布を用いた区間推定
●練習問題
第11章 却下すべきか、せざるべきか、それが問題だ――検定
1 はじめに
2 統計的仮説
3 有意水準
4 仮説の検定
5 二種の過ち
6 片側検定と両側検定
7 サンプル・サイズが小さい時の検定
●練習問題
第12章 マネジメントに求められる統計学――管理図の手法
1 管理図とは何か
2 単一数字による管理の問題点
(1)スローガン及び目標
(2)無欠点(Zero Defect)
(3)標準(ノルマ)
(4)数量のみによる管理から質の管理へ
3 管理図のバランスト・スコアカードへの応用
4 人事評価制度への応用
●練習問題
第13章 分布がわからない時の検定――χ2(カイ二乗)分布
1 χ2分布の応用例
2 χ2分布の定義
3 χ2分布の性格
4 χ2テーブル
5 適合度(あてはまりの良さ)テスト
6 独立性のテスト――連関表
●練習問題
第14章 複数のグループを比較するには――F分布と分散分布
1 はじめに
2つの分散の比較
多くの平均値の比較
2 F分布
3 記号
4 1元配置の分散分布
5 ショートカット計算法
6 2元配置の分散分析法
7 2元配置分散分析法のショートカット計算法
直感と計算結果の突き合せ
●練習問題
第15章 風が吹いたら桶屋はもうかるか――回帰直線
1 はじめに
2 散布図
3 回帰方程式
(1)最小二乗法
(2)正規方程式
4 回帰線のまわりの標準誤差(標準偏差)(Se)
5 相関
●練習問題
第16章 売上の予測をするには――需要予測
1 予測の正確性の測定
2 予測手法――延長法
不規則な波動を除去する効果
季節性を除去する効果
●練習問題
第17章 一般的な経済時系列予測法――時系列の分解予測法
1 はじめに
2 時系列の4つの部分
3 分解法による予測
4 季節性の除去
5 長期傾向要因の除去
6 予測
●練習問題
練習問題解答
付録
1・正規分布表
2・乱数表
3・t分布表
4・χ2分布表
5・F分布表
6・二項分布表
索引
ちなみに前著は、以下の本になります。
経営のための直感的統計学 | |
吉田 耕作 おすすめ平均 統計学の入り口として 文系の人でも簡単過ぎます こんな本を待ってました! もと生徒が語る“吉田教授”! 相対度数の問題 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
- 2006年05月29日
- QC手法、統計、QC7つ道具 | ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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