わが国でISO認証取得された組織数は、ISO9001規格で5万組織を越え,ISO14001規格で2万を越えております。
しかしながらISOが有効に組織の経営に役立っているかとなると『こんな筈では?』との課題や疑問を持っておられる組織もあるかと思われます。
業務改善コンサルタントとしてISOとも関わってきた著者が、ISOにまつわる問題提起も含めてユニークなISO論を展開されている本を紹介します。
本書「くたばれ!ISO」です。
本書は、著者:森田 勝氏で2006年9月に日刊工業新聞社より発行されています。
本書の表紙には、以下のように書かれてあります。
「ISOは日常業務の役に立つのか?
ISOは企業に利益をもたらすのか
その明確な答えが
ここにある!」
本書の『はじめに』の項で著者は、本書を発行するに至った動機について以下のように記述しています。
「ただ、私の耳に入ってくるISOに対する評価は決して芳しいものではありません。その中で気になるのは、どこかに被害者意識としての発想が入り込んでいると言うことです。ときには、傍観者としての捉え方でしかないような発言も見られます。何事にも言えることですが、その課題と徹底してぶつかり合わないと、本当の結論は、出てこないものです。
ISOが問題だと思っている人たちの声を代弁するなら、「くたばれISO」が最もふさわしいと思い、題名にさせていただきました。ただ中味は,ISOに対する単なる批判本ではありません。企業側のスタンスを変えることによっては、こういう活かし方もあるし方向も全然代わってくると言う内容を、私の今までの経験から得たノウハウと、さまざまな実例を交えて展開していきたかったのです。この本を読んで下さった人に、「私は,ISOの一部分しか捉えていなかった。こうすれば、役に立つことがわかった」と少しでも思っていただければ、この上ない喜びであります。」
刺激的なタイトルになっていますが、ISOを愛し、是非、ISOを企業に有効に活用してもらいたいとの筆者の思いがにじみ出た内容になっています。
確かに従来の要求事項の解説書などのISOの関連書籍と異なり、実務的なシステム構築・運用のノウハウを説いた内容になっています。組織のISO関係者で、本書を読んで共感される箇所も多いかと思います。
自組織のISOの展開にマンネリ感や新たなる打開策を求めておられる組織には、本書をトリガーにされ、自組織のQMSのレビューに参考となる箇所も色々と見出せるかと思われます。
すべての国際標準のISOをターゲットにしたタイトルにはなっていますが、本書の中味は、TQM、ISO9004、TS2その他の組織のパフォーマンスの向上を意図しているISO規格等には、言及することはなく、専らISO9001のパフォーマンスの改善を中心に記載されています。
内容的には、ほとんどは、正論なのですが、少し筆者の思い込みや誤解による偏った記載部分があることが少し気にはなりますが、どこの組織にも合致する万能の処方箋のようなものは、無いと思いますので本書のISO論についてもあくまでレビューのためのトリガーとして自組織に合致しているところとそうではないところをしっかり区別され、すべてを鵜呑みにされないで活用されるようなスタンスを筆者ものぞんでいるところかと推察します。
良薬は、口に苦し。しかしその薬も適量を間違えると毒になる懸念もありますので。
本書の活用もそのような面があると思います。



本書の目次は、以下の内容です。
第1章 ISOの取得を目的にするから、ISOがじゃまになる。
第2章 ISOは役に立たない!それはマネジメントシステムの中身がないからだ。
第3章 必然性があるから文書化がある。それがなければ面倒くさいだけ。
第4章 不必要なものを管理してもしょうがない。帳票でプロセスを一元管理するのだ!
第5章 ISOで価値観が固定されてしまったら経営改善のツールとはならない。
第6章 経過でなく、結果に焦点を当てればISOの効果的な運用ができる。
第7章 会社の方向性を整理するためにも品質と環境の統合マニュアルは必要だ。
第8章 審査時に言われっぱなしではダメ!もっと議論を深めよう。
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- 2006年10月20日
- マネジメント共通 | ISO9001
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