「一流の経営者に向かって書け。
この言葉が本書の出発点であった。
品質工学会会長の稲生武氏のアドバイスである。つまり本書は、企業経営者や組織管理者を対象とした品質工学の解説書である。」
との「まえがき」の言葉ですが、本日は、品質工学の専門用語の使用を避けつつ、高品質を達成するには、また高品質を生み出し続ける技術体質に変革するには、などの技術戦略的な視点から書かれた品質工学の解説書を紹介します。
本書:「技術にも品質がある」です。
「品質工学が生む革新的技術開発力」との副題がついています。
本書は、著者:長谷部 光雄 氏で、2006年2月に日本規格協会より発行されています。持ち運びにも便利な新書版となっています。
本書の表紙の帯には、以下のように書かれてあります。
「高品質を生み出し続ける技術体質の確信
モノ作り立国日本を再生させる
技術開発力とは」
また本書の帯の裏面には、本書の発刊の序を寄せられている株式会社リコーの桜井代表取締役の以下の言葉が紹介されています。
「TQCからTQMへの発展に相当する活動が技術開発分野においても必要であると言うのが本書の問題提起である。
しかし、その展開はまだ不十分である。
それは技術そのものに対する理解がボトルネックになっているからである。」
本書で印象に残った箇所を紹介します。
発刊の序の言葉ですが、以下のように書かれてあります。
「日本の品質管理の西堀栄三郎氏は、常々、以下のようなことを言われていたそうである。
『検査課の強大な会社ほど、品質は良くない』
『スタッフと称する部門に多くの人たちがいるところほど、能率は上がっていない』
『作業標準や諸規定の設定のやかましい会社ほど、だらしない作業をしている』」
こちらは、本文からです。
「標準時間は、一番短いのでいい。これは。トヨタ生産方式を中心になって作り上げた、大野耐一氏の言葉である。(略)実は、一番短い時間で出来た人のやり方が一番楽なやり方なのだ。それより長い時間がかかる人は、何かしら余分な動きをしていることになり、その部分を改善すればもっと楽に作業ができるようになる。というのがその理由である。」
「もはや作業の効率化や管理指標の追求などの「プロジェクトX」的な手法ではなく、実質を重視する「ためしてガッテン」的な認識が、世界の潮流になりつつあるのだ。技術の本質であるアートの心を取り戻す技術マネジメントが、これからは求められているのではないだろうか」
「品質工学の3原則
1.原因を追究してはいけない。
2.品質にこだわってはいけない
3.ばらつきを大きくしなさい
本書は、経営者や組織管理者とありますが、モノづくりに関わる全ての人にお勧めしたい内容の本と思います。

なお本書の目次は、以下の内容です。
序 章 品質工学が提起していること
第1章 技術の空洞化
空洞化の背景
効率化が空洞化を生み出す
空洞化を防止する方法
開発ステップ全体を見直せ
コラム 指導者を育てる教育とは
第2章 品質工学の基本思想
技術力の差が分水嶺
重要な点はユーザーによる評価
創造主だからできる未然防止
社会的責任の意味
第3章 品質工学の三原則
見落とされていた当たり前の視点
三原則
三原則とは、ツールの使い方
コラム 対象を抽象化する
第4章 合理性を追求する品質工学の方法論
合理的な機能性評価
第5章 創造力を引き出す品質工学の方法論
未病の段階で治すのが肝要
頑強制
機能の考え方
付加する機能の例
第6章 問題点を浮き上がらせる品質工学の方法論
オンライン品質工学と損失関数による可視化
複雑系を解くMT法
終 章 経営価値の革新
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- 2006年11月02日
- 品質工学(タグチメソッド)ほか | 経営管理
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