金融証券取引法は、2006年6月7日に参議院本会議を通過して成立し、2008年4月以降から始まる会計年度に対して適用されることになっています。
この日本版SOX法と呼ばれている金融証券取引法のなかの「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案」について、企業経営との関わりから新しい時代の企業の内部統制を構築するための手順と枠組みまでについて具体的に提示し、解説している本を紹介します。
本書:「日本版SOX法実践ガイド」です。
本書は、著者:安田 正敏氏にて、2006年9月に日経BP社より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「先手必勝!
SOX対策こそ、ビジネスプロセスを変革し、
企業価値を高める絶好の機会
ITガババンスおよびIT全般統制を
自己評価できるチェックリストが付属!!」
本書の「はじめに」において、本書を出版に至った目的について著者は、以下のように述べています。
「この本の目的は、断片的に伝えられる米国SOX法、日本版SOX法についての全体像を説明するとともに、日本版SOX法に対して最終的に責任をとらなけらばならない企業の経営責任者に対して、日本版SOX法の企業経営にとっての本質的な意味を明らかにし、企業のリーダーとして何をしなければならないかの核心を述べることである。
すなわちその核心とは、日本版SOX法が求める「財務報告書の信頼性に係る内部統制」の構築は、企業のビジネス・プロセスを効率化して企業価値を高めると言う究極の目的を追求するための絶好の機会であるということである。
(略)
さらに、日本版SOX法を越えて、企業価値の向上を目指すビジネス・プロセスの革命的な変革がこれからのグローバルな企業競争を勝ち抜いていく上で必要不可欠なものであり、その中核的な役割を果たすのがITであるという点である。
この目標を追及して行く過程で、企業は、日本版SOX法のみならず、新しい会社法で要求される内部統制の構築も同時に達成できることになる。
(略)
この本の第二の目的は、内部統制の構築の中核としてのリーダーシップをとる経営幹部と、実際に日常業務のなかで内部統制を実践していく従業員に対して、ビジネス・プロセスの変革という目標を達成する過程のなかで、日本版SOX法に対応する内部統制をどのように構築するかという手順と枠組みを具体的に示すことである。」
本書は、3部から構成されます。
第1部では、「SOX法とは何か」として、3章から構成され、米国のSOX法、日本版SOX法についてその成立の背景と理由、その具体的な中味が解説され、日本版SOX法を越えてとしてその先にある目標としてのコーポレートガバナンスと内部統制、COSO(the Comittee of sponsoring Organaizations of the Tradeway Commision)にフレームワークとエンタ-プライズ・リスクマネジメント、IT内部統制等と米国、日本企業の先進的事例などが紹介されています。
第2部では、「企業効率の向上に向けて-実践ガイド」と題して、ビジネス・プロセスの変革による企業効率の向上という最終目標を達成するためのプロジェクトを計画し、組織し、効率的に実行していくための手順が示されています。また当面の課題である日本版SOX法への対応をどのように実践するかについても解説されています。
第3部では、「日本版SOX法対応-財務報告に係る内部統制の構築」と題して、ここでは、内部統制の文書化と有効性の評価について、エンタープライズ・リスクマネジメントならびにCOBIT(Control Objectives for Information and related Technology:情報と情報処理に関わる内部統制のガイドライン)の観点から解説しています。
また付録1として「ITガバナンスのチェックリスト」付録2として「IT全般統制に関する自己評価チェック項目」が掲載されています。

なお本書の目次は、以下の通りです。
はじめに
第1部 SOX法とは何か
1.待ったなし!日本版SOX法
1.1 日本版SOX法への企業の対応
1.2 日本版SOX法対応の基本的な枠組み
2.米国SOX法の衝撃
2.1 企業は不祥事で潰れる
2.2 不正会計の社会的インパクト
2.3 強制される会計報告の正確性、信頼性
2.4 米国SOX法の要点
3.日本版SOX法を超えて
3.1 経営者の究極の責任−「部下がやったこと」ではすまされない
− コーポレートガバナンスと内部統制
3.2 膨らむ米国SOX法対応費用 − 経費か投資か?
3.3 経営の質の新しいグローバル・スタンダード
− COSOのフレームワークとエンタープライズ・リスクマネジメント
3.4 企業の「見える化」への道 −ITの中核的役割
3.5 先行企業のビジネス・プロセス革命
3.6 先手必勝の対応
第2部 企業効率の向上へ向けて − 実践ガイド
1.目標設定と目標達成へのロードマップ
1.1 ビジネス・プロセス変革への道と日本版SOX法への対応
1.2 経営責任者の役割
1.3 目標設定とプロジェクトの意義
1.4 経営幹部、従業員に対する啓蒙教育と情報伝達の重要性
1.5 初期診断の必要性
2.基本計画の策定
2.1 プロジェクトの組織化
2.2 初期診断の実施
2.3 教育・研修と報告・情報伝達
3.エンタープライズ・リスクマネジメントによるビジネス・プロセス変革
3.1 エンタープライズ・リスクマネジメントの枠組み
3.2 エンタープライズ・リスクマネジメントとバランス・スコアカード
3.3 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズI)
− 内部環境の見直し
3.4 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズII)
− 企業目標を達成するためのビジネス・プロセスの見直し
3.5 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズIII)
− ビジネス・プロセス目標に対するリスク事象の洗い出し
3.6 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズIV)
− リスクの評価
3.7 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズV)
− リスク評価に基づいたリスクへの対応
3.8 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズVI)
− リスク事象の発生を抑制するための仕組みと手続き(内部統制)の構築と文書化
3.9 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズVII)
− 発生したリスク事象への対応
3.10 エンタープライズ・リスクマネジメント(フェーズ?)
− 継続的モニタリング
4.IT内部統制とITの活用による内部統制構築
4.1 ITガバナンスとIT内部統制
4.2 COBITの基本的な枠組み
4.3 IT内部統制の基本計画
4.4 COBITの枠組みによるIT内部統制
5.ITによる内部統制支援とITソリューション
5.1 エンタープライズ・リスクマネジメントとCOBITの枠組み及びITソリューションのマッピング
5.2 内部統制支援のためのITソリューションの選択
5.3 内部統制支援のためのITソリューション市場
第3部 日本版SOX法対応 −財務報告に係る内部統制の構築
1.財務報告に係る内部統制の評価の流れ
2.財務報告に係る内部統制の文書化
3.財務報告に係る内部統制の有効性の評価
3.1 全社統制の評価
3.2 業務プロセス統制の評価
付録1「ITガバナンスのチェックリスト」
付録2「IT全般統制に関する自己評価チェック項目」
おわりに
参考文献
<<『日本版SOX法、金融証券取引法』に関するブログを読む>>
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- 2006年12月20日
- 内部統制,日本版SOX法
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