「利は、元にあり」とは、昔からの商売の格言で仕入れの重要性を説いたものです。
今日では、購買の活動は、グローバルに拡大しています。
『CSRサプライチェーンマネジメント』とは、サプライヤーに対して,CSRに関する調達基準(行動規範)を提示し、その遵守状況をモニタリングする一連のプロセスの中で、サプイヤーのCSR意識を啓発し、サプライチェーンに潜在するCSRリスクを低減することを目的として,PDCAサイクルを運用し、その継続的な取り組みを通してリスクの顕在化を防ぎ、自社製品の社会的信頼をアピールすることで、サプライチェーン全体の価値を向上させるマネジメントの仕組みです。
本日は、このCSRサプライチェーンマネジメントについてわが国で最初に取り上げた解説書を紹介します。
本書:「グローバルCSR調達」です。
「サプライチェーンマネジメントと企業の社会的責任」との副題がついています。
本書は、藤井 敏彦 氏ならびに 海野 みづえ氏の編著にて、冨田秀美氏、鈴木均氏、西面和巳氏、武田倫世氏、矢口哲三氏、寺田良二氏、大石貴子氏、足立直樹氏、満田夏花氏、桑山三恵子氏の10人の各分野の専門家が執筆者として参加し、2006年10月に日科技連出版社より発行されています。
本書の帯には、以下のことが書かれてあります。
「調達こそ、
CSR経営のカギである。
CSRサプライチェーン
マネジメントの全て!」
本書の表紙の折り返しで、本書の内容について以下のように紹介されています。
「欧米の先進的多国籍企業ではCSR(企業の社会的責任)をより徹底させるために、
サプライチェーンまでCSRの取り組みを拡大する動きが強まっている。
たとえば、発展途上国にある調達先の不祥事を見過ごすことが、企業にとって大きなリスクとなる時代がそこまできているのだ。
日本でも本格的な取り組みが始まったCSR調達の基礎知識、そして最前線での取り組みを最強の執筆陣が徹底解説する。」
本書は、7章から構成されています。
第1章では、「調達とCSR」と題して、「CSR調達」、「CSRサプライチェーンマネジメント」と呼ばれる潮流について、CSRの変化、サプライチェーンの変化、企業のリスク認識の変化の観点から俯瞰しながら、CSR要請事項について説明し、さらに資源採取のCSRについても概観しています。
第2章では、「CSR調達の国際規格およびイニシアティブ」と題して、SA8000や電子業界サプライチェーンにおける行動規範、ISO26000(社会的責任規格)、情報開示のためのGRI(Grobal Reporting Initiative)ガイドラインの中のCSR調達に関する内容などが解説されています。
第3章では、「CSR調達を実践する企業事例」として、リーバイ・ストラウス、ミズノ、イオン、ソニー、NEC、資生堂などのCSR調達の事例が紹介されています。
第4章では、「原材料調達におけるサプライチェーンマネジメント」として、先進的な取り組みを進める日本製紙グループ、ユニリーバなどの事例が紹介されています。
第5章では、「CSRサプライチェーンマネジメントの導入、実行」として、行動規範とモニタリングを中心としたCSRに関するサプライチェーンマネジメントを想定し、調達企業が仕組みを構築するステップをPDCAサイクルの順を追って解説しています。なお,この章では、「監査」(会計界における監査は、保証業務の1種類とのことで、CSR調達で実施する監査は、保証業務に相当しないことからこの章では「モニタリング」と呼んでいるとのことです.)
第6章では、「サプライヤー、調達企業の悩みどころと対応方法」として、調達側だけでなくサプライヤーにも視点をおいて、行動規範の遵守に関してサプライヤーが直面する問題点、矛盾、解決策などが提示されています。また日本国内の工場での注意点やCSR調達への対応の必要性についても説かれています。
第7章では、「グローバル経営とCSRサプライチェーンマネジメントの将来」として、将来においてCSR調達に関して留意すべき視点として、人事政策におけるグローバルな視点等が取り上げられ、多国籍企業がグローバル化を図る上での考察などが提示されています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 調達とCSR
1.1 CSR調達とは
1.2 グリーン調達からCSR調達へ
1.3 サプライチェーンとCSR調達
1.4 CSR調達を行わないことによるリスク
1.5 CSR調達の要求事項
1.6 原材料調達におけるCSR配慮
第2章 CSR調達の国際規格およびイニシアティブ
2.1 政府のCSR調達
2.2 CSR調達にかかわる各種の枠組み
2.3 CSR全般の規格
第3章 CSR調達を実践する企業事例
3.1 リーバス・ストラウス
3.2 ミズノ
3.3 イオン
3.4 ソニー
3.5 NEC
3.6 資生堂
第4章 原材料調達におけるサプライチェーンマネジメント
4.1 原材料調達の先行事例
4.2 原材料調達マネジメントでの実践のポイント
第5章 CSRサプライチェーンマネジメントの導入、実行
5.1 CSRサプライチェーンマネジメント
5.2 基本計画
5.3 サプライヤーのための行動規範の策定
5.4 対象サプライヤーの選定
5.6 サプライヤーのモニタリング
5.7 活動結果の評価と見直し
5.8 情報開示
5.9 モニタリング型マネジメントの今後
第6章 サプライヤー、調達企業の悩みどころと対応方法
6.1 調達側の行動規範に従いCSR要求事項を実践する
6.2 サプライヤーとしての取り組みの流れ
6.3 大きなリスクを伴う項目、難しい項目
6.4 日本国内で監査を受ける際に注意すべき事項の例
6.5 CSR対応による顧客拡大
第7章 グローバル経営とCSRサプライチェーンマネジメントの将来
7.1 モニタリング型から連携型マネジメントへ
7.2 グローバルな人材戦略の展開
7.3 サステナブル・サプライチェーンの構築
7.4 日本が拓くCSRサプライチェーンマネジメントの将来
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- 2006年12月22日
- CSR,ISO26000
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