企業の2007年問題などにも絡めて「技術を伝えること」をテーマに自分の持っている技術を人に伝えるために大切なことは、「相手の立場に立って考える」「相手から見える景色を創造すること」と技術の伝達論を展開している本を紹介します。
本書:「組織を強くする技術の伝え方」です。
本書は、「失敗学」、「創造学」、「決定学」、「かわる技術」などで有名な畑村洋太郎先生で、本書は、2006年12月に講談社より講談社現代新書の一冊として発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「企業の2007年問題を
乗り越える鍵が
ここにある!!
「伝わらないのはなぜ」と悩む人、必読!!」
また本書の裏表紙の折り返し部には、本書の内容について以下のように紹介されています。
学校・職場・コミュニティ……
伝わらないことには始まらない。
伝わる方法を徹底解説!
伝わったかどうかは結果でしかわからない 「伝える」のではなく「伝わる」 理解の壁 脳の欲求を利用する 技術をむしり取れる環境こそ理想 客観のお化けに振り回されるな 暗黙知の表出の重要性 アウトプット型学習とフィードバック 「伝わるシナリオ」を考える 場を共有することの大切さ
本書の中で特に印象が深かった箇所を紹介します。
一般には、技術を伝えることを「伝承」と呼んでいますが、本書で「伝達」としているのは「伝承」は時間をかけて確立されたものが世代を超えて変わることなく引き継がれていくイメージがあるのに対して、技術というものは、周囲の状況や制約条件の変化に応じて変えるべきとの考えに基づいてとのことです。
最初に「技術」とは何かについて、次のように定義しています。「本書での『技術』とは、『知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体を作っていくやり方』としています。
「なぜ技術は伝える必要があるのか」という点について、以下のような場面で伝達を求められるからとしています。
- 別々のところにいる人から人への伝達
- 時間差がある個人と別の個人との伝達
- 時間差がある同一個人の間での伝達
- 同時期の世代間(年齢に差がある個人と個人との間)での伝達
- 同時期の人から人への伝達
- 相互理解のための双方国の伝達
また技術が伝わったかどうかについて『伝える側が、いくら「伝える」という動作を必死になって積み重ねたところで、結果として伝わっていなければ、それは「伝えた」ことにはならない。』
技術というのは、本当は「伝えるもの」ではなく、「伝わるもの」。したがって伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える側の立場で考えた「伝える方法」を充実することではない。本当に大切なのは、伝えられる相手の側の立場で考えた「伝わる状態」をいかに作るかがポイント。
「伝わる・伝わらない」は、伝えられる側の知識を吸収しようとする意欲に大きく関係している。そのためには、受入の素地を意識的に作らせることが大切で、例えば、うまくいったときは、「きちんと褒める」ということも大変に有効である。
技術をうまく伝えるためのポイントは、以下の要領が大切と説いています。
- まず体験させろ
- はじめに全体を見せろ
- やらせたことの結果を必ず確認しろ
- 一気に全部伝える必要はない
- 個はそれぞれ違うことを認めよ
さらに次の段階としては、「標準」、「型」、「作法」、マニュアルなどが大切で、形や作法の通りにやることで先人の知識を効率的に取得できる筋道としています。
また的確に伝えるための具体的手法として、写真や動画、図や絵、図と文字の組み合わせ、陰陽の二つの世界を対比して見せること、伝わるシナリオ作り、「裏図面」の活用、「「目利き」や「語り部」の育成などに触れてその手法を解説しています。
強い組織を育成するために「個人知」を表出し、「共有知」にすることが大切でそのため、メンバーと喜びや感動、楽しい時間などを共有することが大切としています。
本書の「おわりに」で著者は、「何かを伝えることで、相手と豊かなもの、温かいものを共有することができればそれは素晴らしいこと。」と述べていますが、本書では、「技術の伝え方」でなく、まさに、優れたコミュニケーション論が展開されていると感じます。
教員と学生にぜひ
自己学習のテクニックも満載
なお本書の目次は、以下の内容です。
序章 「技術」とは何か
第1章 なぜ伝えることが必要か
第2章 伝えることの誤解
第3章 伝えるために大切なこと
第4章 伝える前に知っておくべきこと
第5章 効果的な伝え方・伝わり方
第6章 的確に伝える具体的手法
第7章 一度に伝える「共有知」
終章 技術の伝達と個人の成長
「技術を伝える」を巡るおまけの章
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- 2007年02月07日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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1. Posted by 手文庫@プログラマーの手文庫 2007年02月12日 00:35
こんばんは!
伝えるということは難しく、色々と議論されることですね。伝わる環境というのが大事なのでしょうね。
「これさえ伝わっていれば」とポイントを絞ることも大事かなと思います。