ISO 9001認証を取得した多くの企業では、ISO 9001を品質不良の低減や生産性の向上などに更に活用したいとの強いニーズを持っています。
QMSにおける有効性とは、「計画した活動が実行され,計画した結果が達成された程度」として定義されています。製造業において、仮に製品を5,000台作ることを計画したとして、15台不良が発生しておれば、有効性は、99.7%とも言える訳です。品質不良を低減することでこのような有効性を継続的に改善することが顧客満足の向上にも直結することになります。
本日は、製造業の大きな経営課題の一つでもある製造工程におけ品質不良を低減するために ISO 9001のシステムに、固有技術とTQMの問題解決・品質改善の考え方・手法をどのように組み合わせ、適用していけばよいかをモデル的な企業のN社におけるストーリーの事例として分かりやすく解説している本を紹介します。
本書:「経営課題/製造段階での品質問題を減らしたい」です。
本書は、超ISO企業研究会編、二宮 慶三氏著により、2005年7月に日本規格協会 より
「超ISO企業 実践シリーズ」の9巻として発行されています。
この「超ISO企業 実践シリーズとは、すでに全12巻が発行されていますが、出版社によると以下の特徴とのことです。
- ISO 9000を超えるQMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)を自律的に構築するための手引き!
- 「総合的質経営(TQM9000)」を達成するための方法を検討するために結成されたTQM9000研究会のエキスパートによる書き下ろし
また超ISO企業研究会(「TQM 9000」)のウェブサイトも開設されています。
N製作所株式会社という従業員約100名、売上約15億円で金属部品加工、被覆電線製造の組織の抱える製造面での品質の向上の課題をめぐって以下の登場人物が登場します。
- 飯島先生:TQMとISO9001に基づくQMSに精通している専門家
- 中村社長:N社の社長
- 中村管理責任者:社長の息子で、ISO9001推進管理責任者
- 山口品質管理部長:N社の品質保証部長
本書は、ストーリーの背景ならびに不良低減活動を進める上での基本的な手順など解説するプロローグと2つの主要な章、さらに本書のポイントをまとめて総括するエピローグ、また付録の「QC七つ道具の使い方」とから構成されています。
第1章では、「製造段階での品質問題を減らすための実践事項」として、最初に以下の5つの基本原則が解説されます。
原則1:品質はプロセスで作り込む。
原則2:発生した不良の真の原因を除去し、再発させない。
原則3:品質を作りこむ技術と仕組みの構築と運用。
原則4:技術・仕組みを改善し、不良をもとから絶ち予防する。
原則5:QC的問題解決の手順を踏む
さらに具体的に基本となる以下の4つのステップについて解説しています。
ステップ1:「製造工程を管理された状態に維持する」(製造工程の管理、重要工程の明確化、QC工程表の活用など)
ステップ2:「製造,検査し,不適合製品を管理する」(人の育成、設備保全、5S、標準化、不適合製品の管理など)
ステップ3:「不良の原因を追求し,是正,予防処置をとる」(不良の原因、QC的問題解決など)
ステップ4:「集めた情報を解析し,技術と仕組みを改善する」(情報の収集と解析、改善、経験の蓄積など)
第2章では、「自己診断チェックリスト」として、工場の現状を分析し、活動の方向性を知るためのチェックリストが示され、その考え方が解説されています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
シリーズ発刊にあたって
まえがき
プロローグ
はじめに
N社と登場人物の紹介
社長の抱える悩み
製造段階で品質問題を減らすための基本ステップ
第1章 製造段階での品質問題を減らすための実践事項
1.0 基本的な原則
ステップ 1
1.1 製造工程を管理された状態に維持する
(1) 製造工程の管理体系を見直す
(2) 重要な作業を明確にし,根拠と手順を標準化する
(3) QC工程表を活用して,工程全体を整合性のとれたものにする
(4) 新製品,条件変更など特別に管理を行う
ステップ 2
1.2 製造,検査し,不適合製品を管理する
1.2.1 製造の基本を構築し維持する
(1) 作業者に教育訓練して力量を与える
(2) 設備保全で故障のない状態にする
(3) 5Sで整理された作業環境を維持する
(4) 標準に従って製造し,監視する
1.2.2 検査し,できばえを確認する
1.2.3 製品を識別し,不適合製品を管理する
ステップ 3
1.3 不良の原因を追求し,是正,予防処置をとる
(1) 是正と予防の基本事項に従って活動する
(2) 不良が発生する原因に対応して活動する
(3) QC的手順(QCストーリー)によって問題を解決する
ステップ 4
1.4 集めた情報を解析し,技術と仕組みを改善する
(1) 仕組みを構築する
(2) 情報を重点的に解析し,技術と仕組みを改善する
(3) 経験を蓄積し活用する
第2章 自己診断チェックリスト
2.1 自己診断チェックリストの考え方
(1) 不良低減への取組みはできているか
(2) 技術,仕組みができているか
(3) 実行力はあるか
(4) 問題解析・解決力はあるか
(5) 改善力はあるか
2.2 チェックリスト
エピローグ
付録 QC七つ道具の使い方
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- 2007年02月26日
- ISO9001 | QC手法、統計、QC7つ道具
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