金融庁は2月15日、企業会計審議会の総会を開催し、「財務報告にかかる内部統制の評価および監査の基準ならびに財務報告にかかる内部統制の評価および監査に関する実施基準案の設定について(意見書)」を了承し、山本金融担当大臣に提出したことを報道発表しています。
この意見書は、財務報告にかかる内部統制の整備・評価・監査の考え方を示した「基準」と、基準を実務上で実施するための「実施基準」を併せた文書で、内容は、企業会計審議会傘下の内部統制部会で1月31日に了承され、公開されたものと同じ内容です。
これでいわゆる日本版SOX法の基準と実施基準が正式公開ということになりました。
総会後の記者会見では、内部統制部会長を務める八田進二青山学院大学大学院教授が、とくに以下のような点を強調されたことが報道されています。
- 「金融商品取引法による内部統制報告制度は『J-SOX』、『日本版SOX法』と呼ばれ、米SOX法(2002年サーベインズ・オクスリー法)のように大変な制度だと誤解を生んでいる。だが、我々は上場企業が全く実行できないような制度は作っていない」
- 「コンサルティング会社や監査法人、ITベンダーなど、『これを商機』と思っている企業に振り回されないで、経営者自らが自社にふさわしい内部統制の整備方針を決めることから始めてほしい」
さて本日は、
「内部統制ってそもそもなに?」
「ITに一番お金がかかる?」
「いつから始めれば間に合うの?」
「内部統制に取り組んでいないと罰則規定があるってホント?」
など、日本版SOX法(金融商品取引法)の概要から、その法律が求める内部統制の目的、仕組み、導入手順まで、専門用語をできるだけ使わずにわかりやすく解説している本を紹介します。
本書:「 これから取り組む企業のための日本版SOX法と内部統制 」です。
本書は、著者:川上 暁生氏にて、2006年8月に日本能率協会マネジメントセンター から発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「上場企業じゃないから
取り組まなくてもいい」
ってホントですか?
日本版SOX法(金融証券取引法)2008年4月開始事業年度から運用。
はじめての人も、まだよく理解できていない人も
ラクラクわかる!
本書の「はじめに」の項で著者は、以下のように述べています。
「本書を手に取られた方は、ぜひ具体的な対策を打つ第一歩を、今すぐ踏み出して欲しいと思います。その第一歩として、お勤めになられている経営者に本書を手渡してください。なぜなら、日本版SOX法対策、内部統制の導入と整備には、経営者の正しい理解と率先した姿勢がどうしても必須になるからです。(略)
「うちは上場企業でないから関係ない」と言う方にも是非読んでいただきたいと思います。確かに法対象となるのは、上場企業のみですが、だからといって内部統制を導入しなくてもいいということになりません。詳細は、本文をお読みいただきたいのですが、取引先、お客様、従業員にとっても内部統制は、不可欠なものです。
(略)
本書では、中堅・中小企業の経営者・担当責任者のかた向けに、筆者なりのわかりやすい言葉で、「日本版SOX法」、「内部統制」と説明することを心がけました。ITコンシェルジュとしてクライアント様へご説明するのと同じように、筆者の言葉で解説をしています。」
本書は6章から成ります。
第1章では、「これだけは知っておきたい日本版SOX法」として、米国でSOX法が生まれた背景、日本での粉飾事件と日本版SOX法の背景、「内部統制」、「日本版SOX法」の基本的な内容とその概要について日米の比較、新会社法と日本版SOX法との比較等を含めて解説しています。
第2章では、「内部統制導入のポイント」として、内部統制が法律で義務付けられる企業の対象から、内部統制に取り組む必要性、経営者の果たすべき役割、事故、不正発見直後からの対策までについて内部統制を組織に導入する上でのポイントを解説しています。
第3章では、「内部統制の基本的枠組み―4つの目的と6つの基本的要素」として内部統制の4つの目的(「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信頼性」、「事業活動に関わる法令等の遵守」、「資産の保全」と6つの基本的要素(「統制環境」、「リスクの評価と対応」、「統制活動」、「情報と伝達」、「モニタリング」、「ITへの対応」)について解説しています。
第4章では、「内部統制報告書&内部統制監査報告書のつくり方」として、内部統制に関わる評価及び報告」及び「内部統制に係る内部統制の監査」に関して、財務報告に関する内部統制を評価する意義、評価のための文書化と評価の範囲、その方法と手順、内部統制報告書の作成、内部統制監査の目的とその実施等について解説しています。
第5章では、「内部統制の限界」として、判断の誤りや、不注意、複数の担当者による共謀などの4つの限界について解説し、その対策に付いてどのような姿勢が必要かなどを説いています。
第6章では、「内部統制の導入手順」として、とくに中堅・中小企業において内部統制の導入と整備をどのように推進すればよいかについてその手順を解説しています。


なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 これだけは知っておきたい日本版SOX法
なぜ米国でSOX法が生まれたのか?/日本の粉飾事件と日本版SOX法/そもそも「内部統制」とは何か?/日本版SOX法の3つの柱/「内部統制の基本的枠組み」とは?/「財務報告に係る内部統制の評価及び報告」とは?/「財務報告に係る内部統制の監査」とは? /日米の違い(1)追加された項目の意味/日米の違い(2)米国の先行事例から学んだこと/新会社法の内部統制との違い
第2章 内部統制導入のポイント
法律で内部統制が義務づけられる企業とは?/上場企業であり、上場企業の連結決算の場合/非上場企業でも内部統制が義務づけられる/なぜ法律の対象外でも内部統制に取り組むのか?/内部統制にはお金と時間がかかる/内部統制導入のポイント/導入成功のカギは経営者が握る/中長期的な計画と予算が必要/業務の理想のかたちを求めて文書化を推進する/経営者が内部統制の有効性を評価する/重要な欠陥でもすぐに是正すればOK/経営者自らが進める内部統制/日本SOX法をきっかけに本来あるべき姿へ/「性弱説」に立って考える/自己正当証明が求められている/情報セキュリティ対策と内部統制/事故、不正発見直後からの対策
第3章 内部統制の基本的枠組み ~4つの目的と6つの基本的要素
「内部統制」の言葉の定義からわかること/目的(1)「業務の有効性及び効率性」とは?/目的(2)「財務報告の信頼性」とは?/目的(3)「事業活動に関わる法令等の遵守」とは?/目的(4)「資産の保全」とは?(5)4つの目的と6つの基本的要素/基本的要素(1)「統制環境」とは?/基本的要素(2)「リスクの評価と対応」とは?/基本的要素(3)「統制活動」とは?/基本的要素(4)「情報と伝達」とは?/基本的要素(5)「モニタリング」とは?/基本的要素(6)「ITへの対応」とは?
第4章 内部統制報告書&内部統制監査報告書のつくり方
財務報告に関する内部統制を評価する意義/専門用語の意味を正確に知る/評価のための文書化と評価の範囲/評価の方法とその手順/内部統制報告書を作成する/財務諸表の監査人による内部統制監査の目的/内部統制監査の実施
第5章 内部統制の限界
実現できる内部統制のレベルとは?/ミスや間違いはなくならない/不測の事態、突発的取引には働かない/便益以上に費用をかける必要はない/経営者に悪意があれば内部統制は働かない/内部統制の限界への対策は?/コンピュータ・フォレンジックとは?
第6章 内部統制の導入手順
内部統制推進チームを結成する/統制環境を整備する/リスクの評価と対応/文書化・マニュアル化を進める/アウトソーシングを検討する/社内研修を計画し実施する/モニタリング(独立的評価)計画と実施/内部統制を評価し欠陥に対応する
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- 2007年02月28日
- 内部統制,日本版SOX法
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