品質工学の手法について、初心者がわかりやすく学べるように、ウェブサイトからプログラムとデータをダウンロードして、バーチャル実験シミュレータにより、パラメータ設計法を体験しながら学ぶという座学と実習を組み合わせた方法で、難解といわれる品質工学を実務で活用できるように解説している本を紹介します。
本書:「バーチャル実験で体得する実践・品質工学」です。
本書は、越水 重臣氏と鈴木 真人氏の共著にて、2007年1月に日刊工業新聞社より発行されています。
本書の「まえがき」で筆者は、品質工学の手法を実務で使えるためには、座学と実務のギャップを埋める体験学習が必要とし、とくにその教材には、品質工学・タグチメソッドの以下のエッセンスが全て含まれていることが必須と述べています。
- 品質ではなく機能を評価する(静特性から動特性へ)
- パラメータ設計で技術の機能限界を把握する
- テストピースで実験を行う
- 直交表を使い、利得の再現性を調べる
- 適切なノイズを取り上げ、調合して実験を行う
- 生データではなく、SN比と感度で評価する
- 2段階設計によりチューニングする
- 品質とコストのトレードオフをする
本書の「実践編」で紹介されている『バーチャル実験シミュレータ』とは、鈴木 真人氏がLabVIEWで開発したシミュレータでこのシミュレータを用いて実験し、その実験結果のデータをExcelを用いて品質工学に基づく解析をするというもの。
本書で用いる実験シミュレータは、本書で指定しているウェブサイトから無償でダウンロードできるようになっています。
以下のような操作画面となっています。
本書の構成は、第1部「解説編」および第2部「実践編」の2部構成となっています。
第1部では、品質工学の考え方から、パラメータ設計の手順、その理論の概要について解説し、第2部では、バーチャル実験シミュレータを用いて、静特性評価、動特性評価、過渡現象に関する動特性評価について解説するといった構成になっています。
第1部は、3章から構成されています。
第1章では、「品質工学の考え方」として、品質工学の概要ととくに本書で中心的に取り扱っているパラメータ設計の考え方などが分かり易く解説されています。
第2章では、「品質工学のパラメータ設計」として、パラメータ設計の詳細な手法について手順を追って解説しています。
第3章では、「品質工学におけるパラダイムシフト」として、開発の上流側での品質の作りこみと体コスト化を短期間で実施するという時代的なニーズに対応できる品質工学といった観点から品質工学の導入の重要性を解説しています。
第2部は、第4章から第8章までの4章から構成されています。
第4章では、「品質をはかる実験1(普通のエンジニアの仕事の進め方)」として、ソフトウェアのインストールからその使い方の解説に始まり、汚水処理装置について「バーチャル実験シミュレータ1による実験とデータ解析の活用の例題が提示されます。
第5章では、「品質をはかる実験2(ちょっと進んだエンジニアの仕事の進め方)」として品質工学による静特性評価として、汚水処理装置の構成要素についてパラメータをL18直交表に割り付けて実験を行い、望小特性によるSN比と計測値などを計算するデータ解析手法を解説しています。
第6章では、「機能性の評価 メインシステムの最適化」として、汚水処理装置をメインとサブシステムに分割し、捕集システムと凝集システムの複合となるメインシステムについて最適化を行うためにL18直交表に有効に割付でシミュレーション実験を行い、SN比、感度の解析を行い、さらに確認実験で最適性を評価する手法を解説しています。
第7章では、「サブシステムを含めた全体システムの最適化と過渡現象の解析」として、汚水処理装置のサブシステムの循環部の最適実験、確認実験とその解析、さらには全体システムの動特性による最適化の過渡現象の解析手法を解説しています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1部 解説編
第1章 品質工学の考え方
第2章 品質工学のパラメータ設計
第3章 品質工学によるパラダイムシフト
第2部 実践編
第4章 品質をはかる実験1(普通のエンジニアの仕事の進め方)
第5章 品質をはかる実験2(ちょっと進んだエンジニアの仕事の進め方)
第6章 機能性の評価 メインシステムの最適化
第7章 サブシステムを含めた全体システムの最適化と過渡現象の解析
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- 2007年03月22日
- 品質工学(タグチメソッド)ほか
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