「地球環境をこれ以上悪化させたくない、子供のために改善していきたい」という願いは今や地球全体で誰にとっても疑いなく共有されうる前提として話が進んでいる。これに反対したり、異説を唱えたりすることは変わりものだと思われたり、白い目で見られるため、非常に難しい状況になっている。
しかし、こうした地球にやさしいはずの環境活動が錦の御旗と化し、科学的な議論を斥け、合理的な判断を妨げているとしたらどうだろうか。環境活動という大義名分の下に、人々を欺き、むしろ環境を悪化させているとしたら−。」
これは、本書のInntoroduction:「環境問題が人をだます時」の冒頭の言葉を引用したもの。
名古屋大学の工学部からこの4月1日に中部大学総合工学研究所 教授(副所長)で異動されていますが、「エコロジー幻想」、「リサイクル幻想」、「リサイクル汚染列島」、「リサイクルしてはいけない」などの著書で知られる武田 邦彦先生が環境問題について科学的観点から警鐘を鳴らしておられる本を紹介します。
こちらが武田 邦彦先生のホームページになります。
本書:「 環境問題はなぜウソがまかり通るのか 」です。
本書は、著者:武田 邦彦先生にて、2007年3月に洋泉社より発行されています。
洋泉社ペーパーバックスのシリーズの一冊になります。
本書の表紙には、汚れた地球を両手に抱えた写真が掲載されてありますが、そこには、以下のように書かれてあります。
「京都議定書ぐらいでは
地球温暖化は食い止められない。
ダイオキシンはいかにして
史上最悪の猛毒に仕立て上げられたか、
官製リサイクル運動が隠してきた非効率性と利益誘導の実態とは?」
またその下には、次のように書かれてあります。
「錦の御旗と化した「地球にやさしい」環境活動が、
往々にして科学的な議論を斥け、人々を欺き、
むしろ環境を悪化させている!」
さらに本書の帯には、次のように書かれてあります。
「たかじんのそこまで言って委員会」
環境戦争勃発中! で話題騒然!
地球をめぐるもう一つの真実!?
本書は、第1章から第6章までの6つの章から構成されています。
第1章では、「資源7倍、ごみ7倍になるリサイクル」
として、ペットボトルのリサイクルについてかねてからのLCA的な観点から、ペットボトルのリサイクルで環境を汚している。分別回収した方がごみが増える? などペットボトルのリサイクルに資源を7倍使っていると問題提起しています。ペットボトルのリサイクルについて、そのほとんどがマテリアルリサイクルでなく、サーマルリサイクルで処理されている実態を提起し、ペットボトルを分別しても資源にはならないので、一般ゴミと一緒に燃やすのが適切との論を展開されています。ペットボトルのリサイクルより、自動車の量を減らす方が格段に環境にやさしく本質的などとしています。
第2章 では、「ダイオキシンはいかにして猛毒に仕立て上げられたか」
として、ダイオキシンは本当に猛毒なのか?を調査した結果、それほど毒性がないとし、かって撒かれていた農薬によって日本の水田のダイオキシンの量は、ベトナム戦争で散布された量の8倍あったとしている。このようなダイオキシン危険説についてつくられたダイオキシン騒動としてその反駁論を展開しています。さらに環境ホルモンが問題とされた背景や毒性の強いPCBをダイオキシン類として分類された背景などを取り上げています。
第3章では、「地球温暖化で頻発する故意の誤報」
として、地球温暖化騒ぎの元になったそもそもの仮想記事との新聞記事を紹介しています。また南極大陸の気温はむしろ低下していた。北極の氷が溶けて海水面が上がるという言説は、アルキメデスの原理から誤りであること。南極大陸の気温はむしろ低下していたなどを取り上げ、京都議定書ぐらいでは地球温暖化を防げないなどの論を展開し、「少しでも得しよう、お金を儲けようとはせすに、人生にもっと大事なこと-家族、友達、ゆったりした時間−そんなことを大切にしていれば、地球温暖化は自然消滅する」と論じています。
第4章 では、「チリ紙交換屋は街からなぜいなくなったのか」
とし、紙のリサイクルに対する先入観と誤解、森林資源破壊の元凶にされてしまった紙などから「紙のリサイクル」については民から官への逆転現象が起きているとし、環境問題が孕んでいる矛盾として、自分だけの健康が守られれば良いのかとマラリアとDDTとの関連について言及し問題提起しています。
第5章では、「環境問題を弄ぶ人たち」
として、「環境トラウマ」に陥った日本人として、本当の環境問題の一つは石油の枯渇である。石油が無くなれば、農業の生産性も著しく低下し、食糧問題にも発展するとしています。
筆者の正義感が怒りの糾弾の言葉となって強い口調の展開になっていますが、「おわりに」に筆者が書いている。以下の言葉に強い共感を覚える。
「もっと心豊かで平和であり、真面目に着実に働く人が尊敬される牧歌的でシンプルな社会をもう一度つくり直すということに心をおいた方が余程、環境問題に向き合うと思う。」





なお本書の目次は、以下の内容です。
Introduction 環境問題が人をだます時
第1章 資源7倍、ごみ7倍になるリサイクル
第2章 ダイオキシンはいかにして猛毒に仕立て上げられたか
第3章 地球温暖化問題で頻発する故意の誤報
第4章 チリ紙交換屋は街からなぜいなくなったのか
第5章 環境問題を弄ぶ人たち
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- 2007年04月11日
- 環境保護
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2. Posted by shchan_3 2007年10月21日 08:59
武田氏の本は、考えるべき点はありましたが、いろいろ気になる問題点もあります。「いったいどうすればいいのか」という少し考えれば私にもわかるようなことをほとんど書いておられないため、一つ間違えばシニシズム(冷笑主義)に陥るのではないか、と思えるのです。
本書を自分なりにに検討して、考えをまとめてみましたので、よりしければ下記アドレスをご覧ください。
http://sky.geocities.jp/shchan_3/
3. Posted by discus2005 2007年10月22日 21:24
shchan_3様
本書は、ホームページも拝見しましたが、ご指摘のように気になる箇所が多数あると感じています。
数理的な世界では、一つの反例の実証でその理論は否定されることになりますが、環境問題のように複雑なシステム的問題は、演繹的な論理でなく、帰納的なデータの積み上げも必要と思います。
環境問題は、社会的なコンセンサスを築きつつ継続的に改善していく取組が必要かと考えています。