安全学入門
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「安全」とは、ISO/IEC Giude51:1999(JISZ8051:2004)「安全側面-規格への導入指針」によると以下のように定義されています。
「受入不可能なリスクがないこと」
またリスクについては、ISO/IEC Guide73:2002(TRQ008:2003)「リスクマネジメント-用語-規格において利用するための指針」において、以下のように定義されています。
「事象の発生確率と事象の結果の組合せ」
本日は、この安全についての技術的側面だけでなく社会的側面をも包括的に扱う「安全学」の解説書を紹介します。
非常に広範な領域に及ぶ「安全学」についてその全体像ならびに重要事項が、わかりやすく解説されています。
本書:「安全学入門」です。
「安全を理解し、確保するための基礎知識と手法」との副題が付いています。
本書は、吉田 一雄先生と長崎 晋也先生による共著で、2007年3月に日科技連出版社より発行されています。
本書の表紙の折り返し部には、「まえがき」より抜粋して以下のように書かれてあります。
「今や安全は「モノづくり」の問題にとどまらず、人間、社会、環境の側面を巻き込んで、非常に広い領域に関連している。
安全管理に携わる専門家や組織の決定に責任を有するリーダーは、こうした安全問題の全体像を把握しておく必要がある。
しかし、そこまで広い観点から安全を論じた入門書はほとんどない。
本書は安全学の全体像と重要事項について解説したものである。
安全学は非常に広範な領域に関連するため、詳細を網羅することは不可能であり、著者が重要と思った項目の基本概念だけを解説するにとどめざるをえなかった。
しかし、安全学の入門としてはコンパクトで十分な内容であると信じている。
(「まえがき」より)
なお本書では、安全について、JISZ8115「ディペンダビリティ(信頼性)用語」の以下の定義を引用しています。
「 人への危害又は資(機)材の損傷の危険性が、許容可能な水準に抑えられている状態」
本書は、12章から構成されています。
第1章では、「安全の基本概念」
として、「安全性とは」、「ハザードとリスク」など安全学の定義と安全学で用いられる重要な考え方について解説しています。
第2章では、「リスク表現と安全目標」
として、リスクの表現法、安全目標、リスクの許容限度、リスクの保有と移転などの安全管理の基本となる概念について解説しています。
第3章では、「ハザードの同定」
として、リスク評価(定量的リスク評価の手順)手法、失敗モード影響解析(FMEA)の手法、ハザード操作性解析(HAZOP)手法を用いてのハザードの道程の手順を解説しています。
第4章では、「確率論的安全評価」
として、事故シーケンスとその発生確率、損害の規模を体系的に明らかにし、評価する作業である確率論的安全評価(PSA:Probabilistic Safety Assessment)、確率論的リスク評価(PRA:Probabilistic Risk Assessment)について、PSAで用いる「イベントツリー解析(ETA:Event Tree Analysis)」、「フォールトツリー解析(FTA:Fault Tree Analysis)」、両者を組み合わせたET-FT解析、設備機器が故障で機能損失する事象の発生確率の評価手法を用いての常用系機器の信頼性、待機系機器の信頼性、過重強度システムの信頼性、不確かさ解析、従属性解析などの評価手法を解説しています。
第5章では、「事故分析」
として、事故や不具合が起きた後での原因解明と再発防止や類似事象の防止について、事故の因果モデルのフロー、(事象の把握、問題点の抽出、背後要因の分析、対策の列挙、対策の評価からなる事故分析の手順、また事故報告システムを設計する上で考慮すべき事項について解説しています。
第6章では、「有害物質の環境・生体動態解析と曝露量評価」
として、有害物質の評価手法の有害物質が環境中をどのように移動するかを解析する動態解析について、フィックの拡散方程式から、界面での物質移動、物質輸送中の化学反応などの基礎を解説しています。また曝露量評価について、シナリオに基づいて評価するモデル解析手法、分析評価手法、不確かさとして曝露量の個人差などの不確かさを取り上げ解説しています。
第7章では、「毒性評価」
として、化学物質と人間や生物との相互作用について、殺虫剤・除草剤、金属、ダイオキシン、発ガン物質、放射性物質と生体反応、さらに有害物質の毒性評価として、マウスやラットを用いるin vivo試験、生体細胞や生体組織の一部、微生物による生物応答を観察評価するin vitro試験、疫学調査、動物実験などに基づく毒性評価方法を解説しています。
第8章では、「環境リスク評価」
として、21世紀の環境問題の特徴から、これまでの法規制では対応できなくなりつつあるとし、このような状況に応えうる指標、考え方となる環境リスクについて、ハザード、リスク、エンドポイント、発ガンリスク、非ガンリスク、損失余命とQALY(Quality Adjust Life Year)、生態系への影響評価などの基本概念、評価手法等を解説しています。
第9章では、「ヒューマンファクター」
として、システムの安全における人間行動の関わりのヒューマンファクターについて、ヒューマンエラーの考え方、人間信頼性解析(HRA:Human Reliability Analysis)について、THERP(Technic for Human Error Rate Prediction)の手順、エラーモードと基本エラー率、作業イベントツリー、行動形成因子(PSF:Performance Shaping Factor)、従属性モデルなど、またヒューマンエラーの心理学に関して、人間行動のSRK(skill-base、rule-base、knowledge-base)モデル、更にはヒューマンエラーの防止対策について解説しています。
第10章では、「リスクマネジメント」
として、リスクマネジメントのPDCAのプロセス、組織、技術システムの安全設計、保全活動、教育訓練、安全文化(組織事故、階層、エンジニアリング)、危機管理、更には環境リスクマネジメントについて解説しています。
第11章では、「リスクコミュニケーション」
として、その考え方から一般市民のリスク認知、コミュニケーションデザイン、参加型意思決定などの方法について解説しています。
第12章では、「安全規制」
として、安全規則の役割、手段、法令基準体系、適合性評価プログラムを取り上げ解説しています。
付録に「確率統計の基礎」:確立統計の基礎が解説してあります。
本書では、安全学の全体像と重要事項について幅広く取り上げられ、分かり易く解説されています。安全に責任のある企業、行政機関のリーダーから安全に関心が深いビジネスパーソンまでお奨めの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 安全の基本概念
第2章 リスク表現と安全目標
第3章 ハザードの同定
第4章 確率論的安全評価
第5章 事故分析
第6章 有害物質の環境・生体動態解析と曝露量評価
第7章 毒性評価
第8章 環境リスク評価
第9章 ヒューマンファクター
第10章 リスクマネジメント
第11章 リスクコミュニケーション
第12章 安全規制
付録 確率統計の基礎
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