昨今の頻発する「企業不祥事」等を見るとそのような問題の発生を予防する、あるいは、発生した緊急事態にどのように対応できるかといった面で、感じるのは企業風土の大切さです。
そもそも企業風土というのは、経営理念、信条などに基づき、企業の活動と共にその歴史の中で培われてきた組織の人々に共有化されている物の考え方、または行動パターンなどを規定する企業の価値観を表すもの、あるいは当該企業全体を貫く行動規範のようなものになります。
良い企業風土というのは、見えにくいが、大きな経営資源で、理念に基づき、これを築いたり、変革したりするのは容易なことではありません。
整理、整頓、清掃、清潔、躾のいわゆる5S活動も合理的な企業風土の基礎を構築していく実践的な手法と考えます。
QMSやHACCPなどのマネジメントシステムは、5Sなどの基本が確立していることが必須条件とも言えます。
本日紹介する本の著者によると本書では、5Sを通して以下の3つの効果を目指していると述べています。
1. 品質の向上、コストの削減、安全性の確保など直接効果
2. 社員の責任感の向上、組織推進力の向上、改善力の向上など間接効果
3. 損益計算書や貸借対照表の内容を改善するなどの財務内容の改善効果
本日は、とくに5Sに取組むことで財務体質が改善することまでの5Sの取組について、その基本、進め方、財務改善効果、事例などを交えわかりやすく紹介している本を紹介します。
本書:「 5Sで決算書がグングン良くなるんです」です。
本書は、宮内 健次氏編さんにて、2007年6月に日刊工業新聞社より発行されています。
本書の表紙カバーの下部には、以下のように書かれてあります。
「儲かる会社は5Sにしっかり取り組んで
利益と顧客満足度を
上げているんです!」
本書は、要点については、要点整理として箇条書きでその重点をまとめています。また現場の事例についての参考写真や関連する帳票、さらにはチェックリストなどのサンプルが分かり易く添付されています。とくに5Sの取組がもたらす財務的な経営へのインパクトについて、損益計算書がどのように変化するかの詳細なデータが掲載されており、説得力があります。また5Sの関連トピックスを取り上げたコラム欄があり、5Sの波及効果や関連情報が掲載されています。
本書は、7章から構成されています。
第1章では、「5Sの基本」
として、「5Sとは」から始まり、5Sの必要性と目的、どのように5Sを推進すれば良いかといった5S活動の進め方、さらには、5Sによりどのような財務改善効果がもたらされるかといった5Sと財務改善の関係について解説しています。
第2章では、「整理」
として、整理の取組の考え方、具体的に整理を実施する手順についての工場、事務所での取組の事例、整理による財務改善効果などを解説しています。
第3章では、「整頓」
として、整頓の取組の考え方、具体的に整頓を実施する手順、整頓による財務改善効果などを解説しています。
第4章では、「清掃」
として、「清掃とは」から始まり、以降で清掃の手順とポイント、清掃活動のもたらす財務改善効果などを解説しています。
第5章では、「清潔」
として、清掃の基本的考え方、目的、3Sの徹底と標準化、再発防止策、清潔のもたらす財務改善効果について解説しています。
第6章では、「躾」
として、躾の基本的考え方、目的、躾の手順とそれを実施するポイント、躾活動のもたらす財務的改善効果などを解説しています。
第7章では、「財務内容が変わった」
として、実際の企業での5S導入による財務内容の改善効果について、整理、整頓、清掃、清潔、躾によって決算書の計数がどのように変化したか、また経営力の変化、損益計算書と貸借対照表でどのように財務体質が変化してきたかを解説しています。とくに財務内容を改善する4点のポイントを上げ、5Sは維持することが大切として5Sの定着化のためどのような点に留意すべきかなど解説しています。
5S活動にこれから取り組む企業だけでなく、すでに5Sを実施している組織、さらには業績改善に関心のあるビジネスパーソンに参考になる一冊だと思います。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 5Sの基本
第2章 整理
第3章 整頓
第4章 清掃
第5章 清潔
第6章 躾
第7章 財務内容が変わった
- 2007年07月02日
- 5S | マネジメント共通
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