環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人(特定事業者)に対する環境報告書の作成・公表の義務付け等について規定している環境配慮促進法(「環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律」)などの背景のもと、我が国では、環境報告書、環境ラベリング、環境パフォーマンス評価、環境会計、ライフサイクル・アセスメント、環境マネジメントシステム、環境適合設計等に取り組む事業者が次第に増加してきています。
これらはいずれも、事業活動における環境への負荷を把握・評価し、時にはステークホルダーの理解と協力を得ながら、その削減のための対策を進める有効な手法となっています。
環境コミュニケーションについては、ISO14001:2004(JISQ14001:2004)でも、「4.4.3項 コミュニケーション」で『組織は、著しい環境側面について外部コミュニケーションを行うかどうかを決定し、その決定を文書化すること。外部コミュニケーションを行うと決定した場合は、この外部コミュニケーションの方法を確立し、実施すること。』 とし、組織の環境パフォーマンスなどの情報公開について組織にその判断を委ねています。またリスクコミュニケーションに関わる「4.4.7項 緊急事態への準備及び対応」の規定もあります。
環境コミュニケーションの指針規格として、ISO/TC207/WG4において作成されたISO14063:2006(2006年8月発行)規格について、JISへの取入れが検討され、この6月にJISQ14063:2007規格:「環境マネジメント-環境コミュニケーション-指針及びその事例」が発行されています。
この規格は、その1項 適用範囲において、『組織に対し,内部及び外部環境コミュニケーションについての一般的な原則,方針,戦略及び活動についての手引を提供する』ものと規定されています。
本日は、TC207/WG4に参加し、2001年以降、規格の作成に関わり、ISO/TC207/WG4国内委員会のメンバーでもある筆者がISO 14063(JIS Q 14063)の基本的考え方だけでなく、他分野への応用なども加え、環境経営の柱となる有効な外部コミュニケーションのあり方について解説している本を紹介します。
本書:「環境コミュニケーション入門」です。
「ISOガイドラインからの展開!」との副題が付いています。
本書は、吉澤 正 先生の編集にて、吉澤 正 先生ならびに後藤 敏彦 氏ならびに松本 清文 氏の共著にて、2007年6月に日本規格協会 より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「有効な外部コミュニケーションのあり方に
興味のある方、悩みを抱えている方や、
新入社員教育用のテキストとしても最適!
- 環境コニュニケーション規格作成に携わった、専門家による 的確で実用的な一冊
- ISO 14063の基本解説だけであく、環境コミュニケーションに 定評あるキャノンの事例や他分野への応用等のやさしい解説も!」
本書は、5つの章から構成されています。
第1章では、「環境コミュニケーションの基礎知識」
として、『環境コミュニケーションとは』など10問のQ&Aが掲載され、環境コミュニケーションに関係する基本的な知識について分かり易く解説されています。
第2章では、「ISO14063の概要」
として、ISO14063規格について構成と特徴を紹介し、そこに織り込まれている基本的な考え方(5原則)、序文、適用範囲、用語及び定義、環境コミュニケーション活動を幅広いコミュニケーション活動のプロセスと位置づけ、そのプロセスの方針、戦略などについて、P-D-C-Aの流れで実践的な手引きやツールの紹介などを交えて解説しています。
第3章では、「キヤノンにおける環境コミュニケーション―経営に有効なコミュニケーション事例」
として、先進的な環境コミュニケーションの取組を実践してきたキャノンの環境コミュニケーションの考え方と各種の取組事例が紹介されています。
第4章では、「総合的マネジメントシステムへの環境コミュニケーションの展開」
として、品質、環境、労働安全衛生、情報セキュリティ、食品安全などのマネジメントシステム規格の現状と構造を解説し、全体的な経営管理システムの中に環境コミュニケーションプロセスをどのように組み込んだら良いかという考え方を解説しています。
第5章では、「CSRへの環境コミュニケーションの展開」
として、ISO14063をCSRに活用する観点から、CSRの二つの流れ、CSR―社会にかかわるアクターすべての関係性の見直しなど応用的な活動について解説しています。
なお付録として「ISO14000ファミリー規格内の参照表」「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言(仮訳)」が添付されています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章環境コミュニケーションの基礎知識(Q&A)
環境コミュニケーションとは/環境コミュニケーションの必要性/メリット/方法と環境報告書/情報・意見の活用/実践のステップ/効率的に効果をあげるには/CSRなどへの展開/ほか
第2章ISO 14063の概要
2.1 規格構成と特徴
2.2 序文、適用範囲、用語及び定義
2.3 環境コミュニケーションの原則
2.4 環境コミュニケーションのPDCA
第3章キヤノンにおける環境コミュニケーション−経営に有効なコミュニケーション事例−
3.1 情報開示−環境コミュニケーションの基礎
3.2 キヤノンの環境コミュニケーション活動
3.3 企業(組織)にとっての利害関係者との関係
第4章総合マネジメントシステムへの環境コミュニケーションの展開
4.1 マネジメントシステム規格の現状と構造
4.2 EMSへの環境コミュニケーションプロセスの組み込み
4.3 QMSとの統合
4.4 関係性マネジメントツールとしてのコミュニケーション
4.5 EMSのプロセスアプローチ
第5章CSRへの環境コミュニケーションの展開
5.1 CSRの二つの流れ
5.2 CSR−社会にかかわるアクターすべての関係性の見直し
5.3 企業の取組み
5.4 CSRとコミュニケーション
5.5 ステークホルダー・エンゲージメント
5.6 環境コミュニケーション規格のCSRへの応用
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- 2007年07月03日
- 環境経済学、環境経営 | CSR,ISO26000
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