「分かり易い会計、決算書」等を標榜する本は多く出版されています。裏返すと会計の本質まで迫る理解はなかなか難しいということ。
財務諸表をつくる立場では、簿記の知識は必須ですが、経営企画、事業企画、あるいは起業家などでそれを使う観点からは、別に簿記の知識がなくても会計の仕組みがしっかりと理解できていれば活用もできるはずとの考え方に立脚。
簿記の知識がなくても会計の仕組みがしっかりと理解できることのキーは、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の財務3表の5つのつながりを理解することとして、資本金300万円で設立した会社について実際に財務3表を作成しながらこのつながりを説明するという流れを通して分かり易く会計の本質理解のポイントについて解説している本を紹介します。
上記の会社の創業時から発生してくる1回ずつの取引ごとに、決算書を作成し、何がどの表にどう反映され、それらがどのように関連付いているかについて、実務的にかつ非常に具体的に説明されています。
経営コンサルタントの著者:國貞 克則 氏によると、このような方法により『会計の全体像の把握』については、簿記や仕訳を勉強した人以上の理解が得られるとのことです。たしかに類書にない新しい会計学習法を提示している優れた入門書だと思います。
本書:「財務3表一体理解法」です。
「決算書がスラスラわかる」との副題が付いています。
本書は、著者:國貞 克則 氏にて、2007年5月に朝日新聞社出版局 より「朝日新書」の一冊として発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれています。
「簿記を勉強しなくても
会計がわかる!!
六本木ヒルズの人気ビジネス講座が
本に---」
本書は、すべての会社は、「お金を集めてきて」、「そのお金を何かに投資し」、「利益をあげる」活動をしている。この3つの活動を、数字で表したものが決算書とし、財務3表がその基本としてはじめています。
本書の中核は、資本金300万円で設立した【漆器販売】の副業の会社について「資本金300万円での設立」、「事務用品を5万円で購入」、「パソコン一式を現金50万円で購入」などの活動・取引のプロセス毎に決算書を作成した上で、PL、BS、CSの財務3表の5つの「つながり」を徹底解説することで会計の仕組みを分かり易く解説していきます。
私も以前に経営シミュレーションのビジネス研修で自分の組んだチームは、「売上が増加し、売掛金と在庫が増えていくと現金がショートする」という状況で、あえなく倒産という事態に陥って何故そうなったのかの部分の理解がすっきりとできていなかったことがありましたが、本書でその仕組みが多少とも理解できたような気になりました。
さらに「決算書を読む解くツボ」(第4章)では、財務分析指標からはじまり、決算書から粉飾を見抜く方法、キャッシュフロー計算書から会社の戦略を探る方法など解説し、「本業からどれだけ利益が出せているかが会社にとっては一番大切」なことと結んでいます。
また「新会計基準もわかる 財務3表一体理解法~発展編」(第5章)では、「退職給付費用」、「法人税等調整額」、「減損損失」、「退職給付会計」、「金融商品の時価会計」、「税効果会計」などのキーワードも含めた新会計基準、更にはM&Aの仕組みなどを分かり易く解説しています。
途中に会計にまつわる4つの「Coffee Break」が挿入されています。
会計についての分かり易いお奨めの入門書です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 会計は難しくない
なぜ会計の苦手意識がなくならないのか/六本木ヒルズの「人気講座」 ほか
第2章 財務3表の構造を知ろう
損益計算書(PL)の「五つの利益」/売上高比の棒グラフを作ろう ほか
第3章 財務3表一体理解法 基礎編
資本金300万円で会社を設立する/事務用品を現金5万円で購入 ほか
第4章 決算書を読み解くツボ
収益性を見る財務分析指標の利用法/安定性を見る分析指標の使い方 ほか
第5章 新会計基準もわかる財務3表一体理解法 発展編
退職給付会計を適用し、「退職給付費用」5万円を計上する/「貸倒引当金」を10万円計上する ほか
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- 2007年08月02日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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