環境ビジネスとして注目度も高く成長著しい廃棄物・リサイクル問題に注目し、それらから派生する環境ビジネスを中心に解説している本を紹介します。
著者の中村吉明氏は、経済産業省に入省後、本省各部局、経済産業研究所、資源エネルギー庁、福井県庁などを経て、現在は、国土交通省にあって、エコタウン事業やグリーン物流の構築など環境行政に携わってきた専門家。
その著者が地球温暖化問題、廃棄物・リサイクル問題に注目し、そこで派生する環境コミュニティビジネス、グリーン・サービサイジングなどの「環境ビジネス」について具体的な事例を含めて紹介しています。
さらに経済と環境の両立を行うための社会システム整備など国の役割等についても考察しています。
環境問題の現状から環境ビジネスの展望までが、分かり易く丁寧に解説されています。
本書:「環境ビジネス入門」です。
「環境立国にむけて」との副題が付いています。
本書は、著者:中村吉明氏にて、2007年7月に産業環境管理協会より発行されています。
本書は、産業管理協会の機関誌「環境管理」に掲載された「環境ビジネス論」を基に作成された内容となっています。
筆者は、「はじめに」で地球温暖化問題について、「不都合な真実」、「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第2部会の報告書」、「京都議定書からポスト京都議定書」、さらに廃棄物・リサイクル問題について「レジ袋の有料化問題に関わる3R(リデュース、リユース、リサイクル)問題」、「不法投棄問題」、更には、化学物質管理問題について、「焼却施設から発生したダイオキシン問題や環境ホルモンなどの化学物質の対応」などの背景に触れた上で最近の環境ビジネスの動向について以下のように述べています。
「このような環境制約は、高度成長期以前では経済成長を阻害するものであり、環境と経済成長はトレードオフの関係にあるものと考えられていた。
しかし、最近では、「経済と環境の両立」と言われるように、環境に配慮しながら持続的な経済成長を模索する動きが主流となっており、新たな環境ビジネスも登場している」」
とし、さらに以下のように述べています。
「従来は、新たな環境規制がかけられると、その対応策を提示した新たな環境ビジネスが誕生してきたが、最近では、それらに加え、環境に関する企業の自主的な取組を促進する行為自体が付加価値を生み、新たなビジネスにつながっていくようになってきた。
さらにリピュテーション(評判)効果を狙う企業や企業の社会的責任(CSR)の観点から率先して環境対策に取り組む企業を支援するビジネスも増えてきている。」
本書は、7つの章から構成されています。また各章の終わりに2,3のコラムが掲載され、コラム1の「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」からコラム14の「排出権取引」までの環境問題や環境ビジネスに関わるキーワードが解説されています、
第1章では、「環境とビジネス」
として、「環境」の環境変化について「公害問題」から今日までの環境問題の経緯についてまとめています。その歴史的な流れと共に環境ビジネスがどのような変化をしてきたか、さらに昨今の環境問題について整理し、環境ビジネスの意味、環境ビジネスの市場規模などを総括しています。
第2章では、「廃棄物・リサイクルビジネス―エコタウン事業」
として、廃棄物・リサイクルビジネスの環境ビジネスの取組事例として、地方公共団体が推進している「エコタウン」事業について解説しています。
第3章では、「新たな環境ビジネス―環境コミュニティ・ビジネスとグリーン・サービサイジング」
として、地域の住民等が中心となって地域の環境負荷を低減させるビジネスに着目し、環境コミュニティビジネスの現状について解説しています。環境負荷の低減に関する外注化の取組事例として、現在、欧米で注目を集めているグリーン・サービサイジング(米国のNPOのテラス研究所がはじめて使用したとされ、これまで製品として販売していたものをサービスとして提供するもので、例えば、レンタカー)について解説しています。
第4章では、「エコプロダクツの現状と課題」
として、環境に配慮した製品である「エコプロダクツ」についてその定義の確認から始まり、トヨタのプリウス、サントリー、カタログハウスの例を取り上げそのコンセプトなど紹介した上で、エコプロダクツが必ずしも消費者の購入に結びつかないという課題について、消費者の意識と行動とのギャップを意識調査結果から分析し、今後のエコプロダクツの方向性を展望しています。
第5章では、「CSRと環境コミュニケーション」
として、CSR(企業の社会的責任)についてCSRとは何かから環境報告書などによる環境コミュニケーションの現状と留意点について解説し、さらにCSRと環境コミュニケーションの融合、高度化の動きについて展望しています。
第6章では、「グリーン物流」
とし、グリーン物流の必要性の背景からグリーン物流の推進について特にグリーン物流パートナーシップ会議、またモーダルシフトなどのグリーン物流の取組事例、CSRとグリーン物流との関係、さらにこれからのグリーン物流の展望を解説しています。
第7章では、「環境ビジネスを促進する社会システム」
として、とくに環境の外部不経済を内部化する過程においてどのように経済厚生を高めていけばよいのか、そのための企業や国の役割は如何にあるべきか等を述べ、また金融分野を中心とした環境に関わる企業の自主的な取組を評価する動向について解説しています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 環境とビジネス
第2章 廃棄物・リサイクルビジネス―エコタウン事業
第3章 新たな環境ビジネス―環境コミュニティ・ビジネスとグリーン・サービサイジング
第4章 エコプロダクツの現状と課題
第5章 CSRと環境コミュニケーション
第6章 グリーン物流
第7章 環境ビジネスを促進する社会システム
- 2007年08月21日
- エネルギー・環境問題
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