「マーケティングは次代に向かうための梃子(てこ)なのである。」というのが本書での筆者の結びの言葉になります。マーケティングとは、「売るための知恵の集積」とする著者が、「モノを売るのは難しい。いや、簡単だよという人もいるかもしれないが、その人はかなり幸運な人だと思う。」という書き出しで、最新のマーケティングの知恵について語っている本を紹介します。
本書:「売れないのは誰のせい?」です。
「最新マーケティング入門」との副題が付いています。
本書は、著者:山本 直人氏にて、2007年6月に新潮社より、新潮新書の一冊として発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「「買って!」
で買う客はいません。
必ず役立つ「売る知恵」が身につく」
本書の表紙の折り返し部では、以下のように本書を紹介しています。
「「買って下さい!」と連呼すれば売れるというものではない。
「高いから買うな」というコピーが当たることもある。
モノを売るのは難しい。
「売るための知恵」の集積、それがマーケティングである。
「午後の紅茶」と京風キムチからブランドの正体を掴み、スーパーの腕利き店員と自虐CMから効果的な売り文句のメカニズムを知る。
読めば仕事に役立つヒントが必ず得られる、すべての働いている人のためのマーケティング入門。」
本書で印象的だと思った言葉について2,3紹介します。
「そうした売るための知恵を集成したものをマーケティングというわけである。
(略)
マーケティングを知ると言うことは,金儲けの技術を知るということだけではない。
そのプロセスは、「他者を知ること」だと思っている。マーケティングをいくら研究しても確実に結果が出ないのは、相手が人間という心の移ろう動物だからだ。犬や猫と違って人の反応は複雑だ。
同じようにベルを鳴らしても、毎回涎(よだれ)ができるとは限らない。
(略)
売り方を知ることで、人の気持ちの仕組みを知っていく、そんな気分で色々な知恵の森を垣間見ていってほしいと思っている。」(序章「二つの『買ってください』」より)
「マーケティングという考え方の特徴は、こうした知恵(注:日本にも以前からあった「商人道」や「商売心得」など)が集積されて体系付けられているのである。
パラパラとした教えではなく、全体を俯瞰して、優先順序を決めて手を打っていく。それがマーケティングの根っこである。
(略)
マーケティングを学ぶものが最初に知る言葉でもあるマーケティングの4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)。マーケティング活動を行う際には、この四つの領域でいろいろ知恵を使っていくということだ、」(「市場にingをつける発想」より)
「いろいろ考えているときの、考えの中味の正体は「記憶の検索」なのだ。
この時に、人は今までのプラスの評価を特に積極的に探し出しているのである。
まさに人の頭の中には検索エンジンが入っているのだ。
人によって検索の量や方法は異なるのであろうが、それぞれにとって最適な方法で情報を探して、もっともその時にピッタリの商品を選んでいるのである。
「やっぱり○○だよな」と商品を選んでいることは、この記憶検索結果の一番上に表示されたようなことである。
したがって多くの人の記憶検索の結果、上位に表示されるようなブランドはやがてシェアを高めていく。
記憶検索で「ヒット」されるためには、限られた記憶容量の中でヒットしやすいポジションを獲得しなくてはいけない。」(「ブランドは魔法の杖か」より)
「広告に接してから、購買に至るAIDMA(Attention、Interest、Desire、Memory、Action)の法則には当てはまらない、地下鉄の結婚式場の広告のような、「広告に接して買いたくなる」という行動の他に、「買おうと決めてから情報を探す」といいう行動がある。
これを「情報受動型」に対して「情報検索型」と考えることができる。
そして「結婚式場を探さなくては」と思っているような人は、「情報検索型モード」に入っている。広告代理店の国内最大手の電通は、2005年、秋にこんなモデルを発表した。AISASという名のモデルである。
(略)
Attention(気になって)、Interest(興味を持ち)までは、一緒だが、Search(探して)、Action(購入して)、Share(分かち合う)という流れである。」(「テレビは本当に強いのか」より)
売るための知恵にまつわる興味深いヒントや情報が満載で多くのビジネスパースンに役立つと思われます。





なお本書の目次は、以下の内容です。
序章 二つの「買ってください」
第1章 市場にingをつける発想
第2章 ブランドは魔法の杖か
第3章 急増した「日本人の種類」
第4章 ああ言えばこう買う?
第5章 テレビは本当に強いのか
終章 他者を知るということ
(広告)
- 2007年08月24日
- マーケティング
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