こちらのブログでも少し前に紹介した『組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか』の続編が発行されていますので紹介します。

 前作では、ほんの些細なミスの見逃し、ベテランならではの慣れに伴う慢心から起こすミス、コスト至上主義に孕む安全の手抜き、危険な成果主義オンリー、集団が招くエラーなどを取り上げてマネジメントに着目し、人を何故ミスを犯すかを探り、リスク管理の教訓を学び取るという内容のものでした。

 今回は、前作の発行から1年経過する間に発生したパロマ湯沸かし器事故、ふじみ野市プール事故、あるある大事典2、社会保険庁不正処理、みずほ銀行システム障害などの事故・事件を取り上げています。前著に続いて、リスクマネジメントの観点から、こういった事故・事件が、なぜ起きて、どうしたら防げるのかを徹底的に追求しています

本書:「「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく」です。

本書は、著者:樋口 晴彦氏にて、2007年7月に祥伝社より、祥伝社新書の一冊として発行されています。

本書の帯には、以下のように書かれてあります。

「社会保険庁、パロマ、あるある大事典?……

性懲りもなく、おそまつな

事件、事故が頻発するのは

なぜなんだ!

------その原因を徹底的に検証する

 

本書の「まえがき」で前作後、パロマ、不二家などの様々な不祥事が相次いで発生したことについて失敗学を論ずるものとして淋しい限りとした上で、問題が発覚した後の対応も形式的として、本書のタイトルにも触れて以下のように述べています。同じことは、私も感じており、多くの人が最近の事件、事故の事例について同様の印象を抱いているように思います。


「記者会見を開いて、コンサルタントの指示通りに60度の角度に頭を下げ、ゆっくり5秒数えてから頭を上げているだけだ。

そこには、失敗を真摯に受けとめているという教訓を学び取ろうという姿勢はなく、世間が不祥事を忘れてくれるまで逃げのびたいという保身がぎらぎらしている。

 特に懸念されるのは、重要な情報を隠蔽したり、意図的にミスリードしたりすることで、事件を殊更に矮小化し、自らの責任を回避しようとする悪質なケースが目立つことだ

本書では、この風潮に対して警鐘を鳴らすために、そのような事例をなるべく選んで取り上げ、タイトルにも「組織はこうしてウソをつく」という挑発的な文言を用いることとした。」


本書は、第1章「リスクから目を背(そむ)ける人々」(パロマ湯沸かし器事故、ふじみ野プール事故、あるある?番組捏造事件を取り上げています)、第2章「虚構の輪舞曲(ロンド)」(沖縄集団自決事件、ES細胞捏造事件、災害医療の実態を取り上げています。)、第3章「ジョーカーはそこにある」(社会保険庁不正処理事件、統帥権干犯問題、留学生の不法滞在を引き起こした入国管理政策を取り上げています。)、第4章「リスクと共生するために」(本願寺教団を作り上げた蓮如の「武器」、みずほ銀行のシステム障害、失敗する担当者の典型例、リスク管理と「やかまし屋」の復活を取り上げています。)とする4章から成り、各章で3~5節で具体的な事件・事故の事例を取り上げているという構成になっています。


印象深いと感じた箇所を紹介します。

「人ひとりの生命がいかに重いかを関係者が知らなかったわけではあるまい。しかし、どんなに悩ましいことであっても、それが日常的に発生していると、いつしか感受性が麻痺し不感症になってしまうものだ。この「慣れ」というものは、どんな過酷な環境にも適応できるように、天が人間に与えた贈り物である。しかし現にそこに存在している災厄を見えなくするという点では、まさにリスク管理の大敵なのである。}(「リスクから目を背ける人々」より)


「このように外注先に過度に依存するあまり、事業者自身の責任感が希薄になる現象は、決して公的機関に限られる問題ではない。前著で紹介した美浜原発事故でも、電力会社が配管の管理を外注先に任せきりにしたことが事故原因の一つとなっている。ある意味でアウトソーシングを行った場合に生ずる典型的なリスクと言ってよいだろう。(「リスクから目を背ける人々」より)


「孫子に「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」とある。巷に出回っている危機管理の指南書では、この言葉を引用して、「彼(敵)」の情報の重要性を強調しているものが多い。しかし孫子は、「彼」と同じウエイトで、「己」を知ることを重視している。これを逆に言えば、「己」を知らない無謀な企てがいかに多いかと言うことだ。危機管理に従事する者は、自らの組織がどの程度の「実力」をもっているかを冷静に計算する視点を決して忘れてはならない。」(「虚構の輪舞曲」より)


「そこで私としては、企業理念を社内的に説明する手法として、トップ自らが授業員向けに「メモ」を書くことをお勧めしている。その手本となるのが、本願寺の中興の祖と仰がれる蓮如上人の「御文(御文章)」である。」(「リスクと共生するために」より)


「私はこれまでかなりの数の企業不祥事を研究したが、内部統制システムが全くなかったという事例は見あたらない。
(略)
それでは、内部統制システムが存在するのにどうして不祥事が起きたのだろうか。その答えは、システムが何らかの理由で機能していなかったからだ。監督者が内容を確認せずに判を押したり、作業手順を現場で勝手に改変したり、そういった些細なことの積み重ねで内部統制システムがガタガタになってしまったのである。
(略)
ここで必要とされる対策は、バケツの穴を一つひとつ塞いでいくこと。つまり内部統制システムが正常に機能するように細かな点をチェックすると言うことだ。」(「リスクと共生するために」より)


 多数の失敗・事件の事例から他所のことではなく自分の組織の問題として学び活かす姿勢を持つことがリスク管理の極めて重要な視点であることを本書は、教えてくれます。

「まずい!!」学―組織はこうしてウソをつく (祥伝社新書 79)
祥伝社
樋口 晴彦(著)
発売日:2007-07
発送時期:通常24時間以内に発送
ランキング:2659
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 今必要なのは「監督責任」の再認識か。
おすすめ度5 企業の論理って怖いですね
おすすめ度4 リスク管理に携わる人もそうでない人にも!
おすすめ度4 前作に比べると物足りない

なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 リスクから目を背ける人々
責任者は何処に―パロマ湯沸器事故・その一/同族企業が直面する「三代目の危機」―パロマ湯沸器事故・その二/無責任の連鎖―ふじみ野市プール事故/取引関係を左右する交渉力―「あるある2」番組捏造自己・その一/階層意識が生んだ、無関心というカーテン―「あるある2」番組捏造事件・その二)
第2章 虚構の輪舞曲
嘘を生み出す構図・その一―沖縄集団自決事件/嘘を生み出す構図・その二―ES細胞捏造事件/現場から乖離した危機管理―災害医療の実態
第3章 ジョーカーはそこにある
民間化の誤算―社会保険庁不正処理事件/日本を滅ぼした“禁じ手”―統帥権干犯問題/「帳尻合わせ」は失敗のもと―留学生の不法滞在を引き起こした入国管理政策)
第4章 リスクと共生するために
どうやって社員に理念を伝えるか―本願寺教団を作り上げた蓮如の「武器」/迷走するシステム開発・その一―みずほ銀行のシステム障害/迷走するシステム開発・その二―失敗する担当者の典型例/嫌われ者になる覚悟はありますか―リスク管理と「やかまし屋」の復活

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