昨今、環境をとるかそれとも経済かという二律背反(トレードオフ)のような関係に環境に関わる問題が取り上げられますが、このような二律背反の矛盾があるときに乗り越えるのが技術で、我が国の環境問題を克服していく技術開発がこれからのライフスタイルのあり方と含めて大いに注目されるところです。
本日は、環境問題と経済の基本的な関係からその捉え方について最新の分析をベースとして、日本の環境政策や排出権取引、京都議定書など、地球環境を再生し、資源の有効活用を進める取り組み、さらにはポスト京都議定書に関わる新たな展望までを分かり易く解説している本を紹介します。
本書:「環境経済入門<第3版>」です。
本書は、著者:三橋 規宏先生にて、2007年9月に日本経済新聞出版社より日経文庫の一冊として発行されています。
1998年に第一版が発行されて以降、環境と経済との関わりについてその基本の考え方から枠組み、そして我が国の環境政策の概要について分かり易く解説するテキストとして広く読み続けられてきた文庫の第3版になります。
本書では、第2版から、新たに2章:「地球温暖化と経済活動」ならびに6章:「環境経済学の視点」が追加されるなども含めて、全体的に内容も改訂されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「基本的考え方からポスト京都議定書まで!
地球環境を再生し、資源の有効利用を進める取組をやさしく解説。
好評のロングセラー・テキストを大改訂
本書の「まえがき」で本書で力点を置いたポイントとして著者は、以下のように述べています。
「本書は、なぜ私たちが地球の限界に突き当たってしまったのか、ワンウェイ型の経済システムを円形の、別の言葉でいえば、循環型の経済システムに転換させるためにはどうしたらよいか、さらにそれを支える理論・考え方などについて、できるだけ体系的かつ簡潔に説明することに重点を置いています。
(略)
この一冊を読めば、環境と経済の基本的な考え方や枠組み、日本の環境政策の現状が理解できるように工夫したつもりです。」
本書は、7章(1:「地球環境と経済」から終章:「資源循環型社会への道」まで)から構成され、まさに地球環境と経済にまつわる理論・考え方から環境政策の現状までの全体像がしっかりと展望できるように解説されています。
各章の最初にその章に関するエッセンスが、3点の箇条書きで要約され、その章の意図している点が分かり易くまとめてあります。
また全般的に内容を解説するにあたり、多くの図表が用いられ分かり易い説明となっています。
さらに地球環境問題に関する「不都合な真実」や「スターン報告書」などの関連するトピックスなどが多数盛り込まれ、環境経済について体系的に学ぶのにお奨めの一冊です。
最終章の結びで筆者は、「資源循環型社会に向けての道」について、以下のように述べており印象的で、共感します。
「「不都合な真実」に目を逸らさず、真正面から真実に向き合う勇気、科学的知見を受け入れる度量、それに基づく先見性をもった行動こそが、持続可能な新しい地球文明を構築する道につながるのではないでしょうか。」
なお本書の目次は、以下の内容です。
1.地球環境と経済
2.地球温暖化と経済活動
3.環境政策の歴史
4.環境関連諸法と物質循環
5.経済学からのアプローチ
6.環境経済学の視点
終章 資源循環型社会への道
- 2007年10月01日
- 環境保護
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