生産管理とのタイトルの本ながら、実務的で現場重点の内容というよりはむしろ、マネジメントを基軸とした視点から、あるいは、経営戦略の全体的なグランドデザインの中に生産管理をどのように位置づけるべきかというような観点から生産管理を中心に品質管理、ロジスティクスについて今後の展望も含めて解説している本を紹介します。
本書:「生産管理(プロダクション)−品質管理とロジスティクス−」です。
本書は、著者:茂垣 広志先生、淀川 里美先生、根本 孝先生、島谷 祐史先生、ならびに編著者:池田 芳彦先生の執筆にて、2007年2月に学文社より、マネジメント全体を統括的かつ体系的に理解するために経営・会計の基本を解説するシリーズのマネジメント基本全集の14巻になります。
本書の「はしがき」で編著者は、製造業を取り巻く環境が、厳しくなってきているのは、「情報化」と「グローバル化」の背景によると総括している。
すなわち、「情報化」については、「インターネットを通じて多数の消費者が、一夜にして欠陥消費の潜在的被害者になってしまうなど企業の対応が難しくなっていること」。
さらに「グローバル化」については、「世界の工場としての中国の台頭が大きなコスト削減プレッシャーとなっていること」等を分析しています。
そして、経営者が品質管理、生産管理に目を向けにくくなってきていることを問題提起し、「より良いものをより安く」という日本企業の基本戦略は、このような「情報化」と「グローバル化」のなかでどのような影響を受けてきたのかを問い直しています。
とくに日本独自の生産管理システムについて、品質レベルを生産コストの犠牲としてではなく、生産プロセスにおいて積極的に取り込んでいくものととらえた上で、独自な意識が結果として生産の効率性を高めてきたとして、改めて評価し、本書での展望に繋げています。
本書は、4部(第1部:「生産システム」、第2部:「品質管理」、第3部:「生産管理」、第4部:「ソーシングとロジスティクス」)とその内容となる13の章から構成されています。各章の終わりには、教科書テキストとしてのその章の理解のための演習問題と本書からさらに進んだ学習のための手引きのため参考文献ならびに推薦図書が掲載されています。
第1部では、「生産システム」(第1章から第3章)
として、『競争優位と生産』、『日本的生産システム』、『サプライヤー・システムと系列』といった章立てで、日本企業の強みとしてきた生産(ものづくり)の側面から、どのような分野で競争優位を有しているかを製品アーキテクチャーの観点から解説し、生産システムについてQCD(品質、コスト、納期)の評価基準から、人材育成の観点も含めて製造現場の特徴について考察し、サプライヤーシステムに焦点をあて、日本型サプライヤーシステムの特徴と課題について解説しています。
第2部では、「品質管理」(第4章から第6章)
として、最初に「品質管理の発展」について、フォード型の大量生産のための品質検査の考え方から、顧客満足に基づく品質管理、消費者保護や製造物責任を基盤とする品質保証、TQCからTQMへの発展などの流れを総括し、TQM、MB(マルコム・ボルドリッジ)賞、シックスシグマ、ISO9000シリーズなどを概観しています。さらにQCサークル、TQC、TQM、品質経営活動などの品質管理の考え方や特徴について解説しています。さらには、日本企業が海外生産を行う上での品質管理活動の移転のあり方について解説しています。
第3部では、「生産管理」(第7章から第9章)
として、「生産管理」について製造業の目的・生産活動の概念の整理から入り、顧客にとって価値のある製品やサービスを提供することが目的とした上で、生産活動は、インプット→プロセス→アウトプットの流れで説明できるとし、さらに生産管理の概念は、生産活動の各フェーズで目標値を設定し、常にそれを測定し評価することで、QCDを最大限に高めるための管理活動であることを提示しています。さらに生産性プロセスの効率化を図るIE(Indutrial Engineering)について、その歴史的過程から「テイラーシステム」、「ギルブレスの「動作研究」、「フォードシステム」などについて詳しく解説しています。更に、「工程分析」、「レイアウト分析」、「連合作業分析」、「動作分析」、「稼働分析」などを解説した上で、「ECRSの原則」、「5W1Hの原則」を生産性改善の指針として解説しています。さらにかんばん方式などを理解する上で必要な工程管理と在庫管理について詳解しています。
第4部では、「ソーシングとロジスティクス」(第10章から第13章)
として、国内での活動に重点を置いた戦略的ソーシング活動についての概要とその具体的なプロセスについて、「購買方針の決定」、「何を自社の内部で作り、何を外部に依存するか」等の意志決定などソーシングの戦略選択について解説しています。またグローバルソーシングについての意志決定要因、ミルクラン方式やVMI(ベンダー・マネジメント・インベントリー)などの3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)など含めてグローバルソーシングの課題を解説しています。さらにロジスティクスの効率化についてのJIT(ジャストインタイム)などの基本的な考え方や経緯を総括し、これからのロジスティクスの方向性を展望しています。最後に自動車産業の調達のグローバル化の流れを取り上げ解説しています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1部 生産システム
第1章 競争優位と生産
第2章 日本的生産システム ほか
第2部 品質管理
第4章 品質管理の発展
第5章 日本的品質管理の展開 ほか
第3部 生産管理
第7章 生産管理
第8章 IE(Industrial Engineering) ほか
第4部 ソーシングとロジスティクス
第10章 ソーシングの戦略選択
第11章 グローバル・ソーシング ほか
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- 2007年10月30日
- IE(生産管理)
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