米国を代表する社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ(Robert B. Claldini)が購買の際に『人は、どのような心理的メカニズムのもとに承諾に至るのか』といった承諾誘導に関する戦術も含めての承諾の心理を科学的に解説した「影響力の武器」(「ISOの本棚」でも紹介)の邦訳第一版は、好評で品切れとなり、オークションなどでもプレミアが付いていました。
本日は、その邦訳の第二版を紹介します。原著:「INFLUENCE SCIENCE AND PRACTICAL」の4th Editionの邦訳となります。
今回の第二版では、説得、承諾、変容などの心理学的研究の最新の情報などが反映され、加筆されている点と、『影響力の武器』の読者から寄せられた内容が「読者からのレポート」として各章に挿入された点などがこの版の特徴となっています。
本書:「影響力の武器[第二版] 」です。
「説得の秘訣」ならびに
「なぜ、人は動かされるのか」との副題が付いています。
本書は、先のロバート・B・チャルディーニの原著について、社会行動研究会 の翻訳にて2007年9月に誠信書房より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれています。
あなたは経験ないだろうか
欲しいと思った携帯は決まって在庫切れになっている
ほしくもないのに高価な英会話の教材を注文してしまった
デパートの試食コーナーで試食したら、
買わないといけないような気がする
本書の「まえがき」の印象的な部分を改めて紹介します。
『(筆者が自ら、セールスマン、募金勧誘者、広告主などの「承諾誘導」のプロの世界に飛び込んでの)この3年間にわたる参与観察で学んだことのうち、非常に有益だったことが一つあります。
それは、承諾誘導の実践家が相手からイエスを引き出すために使う戦術は何千とありますが、その多くが六つの基本的なカテゴリーに分類できると言うことです。
それぞれのカテゴリーは、人間行動を導く基本的な心理学の原理に支配されており、このことが用いられる戦術にパワーを吹き込んでいるのです。
これらの原理−返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性−は、社会でどのように機能するのだろうか。
説得のプロ達がそれらの原則が持つ巨大な力を巧みに組み合わせて購買、寄付、譲歩、投票、同意を獲得する要請に仕立て上げていくのだろうか。このような観点から、それぞれの原理を検討するつもりでいます。』
本書の基本的な構成は、第一版から変化していません。以下の構成です。各章の終わりには、その章を要約したまとめと内容の理解に関わる設問などがありますが、その前などの要所に読者からのレポートが紹介され、それについての筆者からのひと言が寄せられています。また購買に際して働く人間心理がより身近に伝わってきます。
すなわち、本書は、8章から構成されています。第1章は、タイトルと同じ表題になっていますが承諾の過程の多くは、自動的な簡便反応を行おうとする人間の傾向により理解できるとしてそのような例が取り上げられてあります。
第2章から第7章まで、六つの基本的なカテゴリー:すなわち、『返報性』、『一貫性』、『社会的証明』、『好意』、『権威』、『希少性』がそれぞれ詳細に取り上げられてあります。
第8章では、「手っとり早い影響力−自動化された時代の原始的な承諾」として、今の時代は、認知の過剰負荷の傾向が強まっているので、それに比例して、6つの承諾誘導を引き金にして簡便な意志決定が多くなっていることを述べています。
本書には、「プロの承諾誘導」の方法・手口など購買にまつわる微妙な人間心理のメカニズムから説得のためのテクニック、戦術までが鋭く説得力を持って説かれています。
セールスやマーケティングに従事する人が自分の仕事に活用するような目的で読まれ、活用されてきた本ですが、煽られてつい衝動買いをしてしまったり、詐欺もどきの商法に騙されたりすることのない賢い消費者になる上でも大いに役立つと思われます。
一読しておいて損はない
自分の気持ちの動きもわかる
ある意味恐怖
そうだったのか・・・
なお本書の概略目次は、以下です。
目次
第1章 影響力の武器
第2章 返報性――昔からある「ギブ・アンド・テーク」だが……
第3章 コミットメントと一貫性――心に住む小鬼
第4章 社会的証明――真実は私たちに
第5章 好意――優しい泥棒
第6章 権威――導かれる服従
第7章 希少性――わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力――自動化された時代の原始的な承諾
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- 2008年02月29日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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