ISO22000(食品安全マネジメントシステム)について、すでに海外認証機関は、審査登録認定を進めてきていますが、2008年 1月28日付けで国内初の認証機関として、2つの審査機関が認定を受けたことが財団法人日本適合性認定協会より発表されています。
昨年来から食品偽装問題が相次いで報道されるなかで、さらに中国製ギョーザの薬物混入事件を契機に輸入加工食品に対する懸念という問題も抱え、食の安全・安心を求めるニーズは、益々、高まってきています。
このような背景からISO22000の認証登録は、今後、活性化していくかと思われます。
本日は、食品品質管理のプロとして自らがメーカー、工場、スーパーなどの流通までと、フードチェーンの現場の上流から下流までを経験し、『ビジュアル図解 食品工場の品質管理』(「ISOの本棚」でも紹介)などの著作でも知られる著者が一般の読者を対象に食の品質管理のプロの視点から、食の業界の現状とあるべき姿を論じている本を紹介します。
これまで余り明かされなかった食品工場からスーパーまでの食の現場の実態を解き明かし、相次いで露呈した「食の安全」が問われる事件の背景には、どのような問題があるのか等を分かり易く解説しています。
またなぜ、食品業界がそれまでの事件から「他山の石」として学び、”食の安全”を徹底することができなかったのかが本書のテーマにもなっています。
さらに消費者が自らが食べるものに真剣な目を向けるべしと説き、「食品の品質管理は、難しいことはない、『ウソをつかない』ことだけである」と説いて、『”ウソ”をついている人を見かけたら私と一緒に今日から笛を吹きませんか?』と投げかけています。
本書:「“食の安全”はどこまで信用できるのか」です。
「現場から見た品質管理の真実」との副題が付いています。
本書は、著者:河岸 宏和氏にて、2008年3月にアスキーより、『アスキー新書』の一冊として発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「−−工場からスーパーまで、
品質管理のプロが明かす!
食品事件の影にある、
消費者が知らないこと
"中国産は、危ない!→”国産なら安心”か?
特売日に卵が”大量生産”される不思議
”朝採れレタス”が採れたのはいつの朝?
食品業界の皆さん、
家族に説明できない仕事を
していませんか?」
本書は、『序章 食品偽装事件はなぜ続くのか?』からはじまり、5つの章の展開が続き、『終章 食品の現場が向かう明日』で結んでいます。序章では、中国製冷凍ギョーザ事件を取り上げ、併せて07年の食品業界の偽装問題を振り返ると共に中国製冷凍ギョーザ事件の隠れた要因に我が国の食品に対する管理体制の甘さがあったのではと提起しています。
第1章では、「消費者が知らない「賞味期限」のトリック」
として、消費・賞味期限の問題を取り上げ、「食品衛生法」、「JAS法」などで期限の設定について「科学的・合理的な根拠を持たないといけない」と定めていますが、その根拠となるべき基準があいまいなため「何となく」といった理由で賞味期限が決められていることなど指摘しています。
第2章では、「卵や肉、身近な食品にはトリックがいっぱい」
として、卵のサルモネラ菌の防止策で重要なチルド保管の問題と取り上げ、それが管理されておらず、常温のまま流通されていることを指摘しています。また鶏肉、豚肉、牛肉にまつわる品質問題、水産物の名称のウソ、弁当など加工食品の原材料や賞味期限表示などが免除されている課題などを取り上げ問題提起しています。
第3章 「コンビニ・中国産は危ない」は真実か?」
として、「コンビニ食品はかなり安全だ」との論をその品質管理面の現状から解説しています。また最近、「中国の野菜は農薬だらけだから買わない」などとしている主婦が多いようだが、日本の野菜についても、中国の野菜と同じように、危険性をはらんでいることを認識すべきとしています。無農薬栽培、有機野菜にも、土壌への農薬残留の問題や天然系農薬が使われていることなど指摘し、「コンビニ・中国産は危ない」と判断するのであれば、他の日本の食品にも同じ視点を持つべしと述べています。
第4章では、「食品事件を防ぐために本当に必要なこと」
として、中国製冷凍ギョーザ事件は、日本業者にも責任があるとし、「化学的危害についての混入を防ぐためのルール作り」に課題があったのではと述べています。もう一つの問題は、工場外で食品やパッケージに手を加えられた場合に、そのことが明確にわかる「タンパーエビデンス」を取り入れなかった点としています。偽装の理由は、儲かるからとし、企業は、コンプライアンスよりも『ビジネスエシックス(企業倫理)』を持つべきと論じています。また続けて『食の管理体制の強化』といった視点から、食品業界における種々の品質管理面での重要な管理ポイントについても具体的に言及しています。
第5章では、「賞味期限は「おいしさ」で判断するべき」
として、法律では、食中毒さえ起こさなければ問題なしとしているが、そして細菌検査だけで期限を設定するのは、上記とつながる間違った考えとし、細菌検査と合わせた「おいしさ」を含めた官能検査の結果が重要と述べています。
終章では、「食品の現場が向かう明日」
として、フィクションとしての和菓子屋さんの物語というのが登場し、改めて『ビジネスエシックス』の重要性が強調されています。そして消費者の目こそあらゆる「偽装」を打ち破るパワーになると述べています。
本書は、決して、やみくもに危機意識をあおるという訳ではなく、強い危機感を持って、食の品質管理のプロの視点から現状の食品業界が内在している課題に踏み込んで解き明かしています。筆者のビジネスエシックスの重要性を説く論点は、これからの食の安心・安全の方向性を示唆しているように思います。業界関係者のみならず、食に関心のあるすべての人が読んでおきたい一冊といえます。
なお本書の概要目次は、以下の内容です。
序章 食品偽装事件はなぜ続くのか?
第1章 消費者が知らない「賞味期限」のトリック
第2章 卵や肉、身近な食品にはトリックがいっぱい
第3章 「コンビニ・中国産は危ない」は真実か?
第4章 食品事件を防ぐために本当に必要なこと
第5章 賞味期限は「おいしさ」で判断するべき
終章 食品の現場が向かう明日
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- 2008年03月12日
- ISO22000(食品安全マネジメント)
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