不良問題は、企業の実力を示したものであるとして、不良低減をターゲットにその基本的な手法について解説している本を紹介します。
不良は、千差万別でその内容に応じて対応が異なるが、類似性はあるとし、本書に示したものは、一つのパターンにすぎないけれども、実際の不良低減活動においては、これらを変性し応用し効果を生むことが求められるとその「まえがき」で筆者は、述べています。
また不良低減に必要なことは、行動であるとした上で、不良には実際、難しい内容のものもあるが不良低減を達成する方法の原則は、できるまで、あきらめないこと。不良低減が達成できるまで不断の努力を傾注することと述べています。
さらに効率的な不良低減活動には、多面的なアプローチと技術に裏打ちされた論理性とデータを活用した多面的なものの見方、さらにそれらの中からの選択・判断・重要度・寄与率などの的確な判断が必要だが、これらはトライをすることで磨かれるものだとも述べています。
本書では、不良低減化の手法のポイントについて簡潔に述べていますが、参考にすべき役立つヒントが満載されていると思います。
本書:「不良低減」です。
本書は、名古屋QS研究会の編集にて、2001年7月に日本規格協会から発行されています。
同社の「実践 現場の管理と改善講座:改訂版版」のシリーズの7巻になります。
本書は、6章から構成されています。他のシリーズの巻と同様に多数のイラストや図表が採用され、分かり易い内容になっています。
以下に本書の概要をさっと紹介します。
1.では、「企業活動と不良低減」
として、企業活動の基本は、QCD(Q:Quality、C:Cost、D:Delivery)との話題から始まり、不良低減の意味について整理した上で、問題解決の摘出から問題解決のステップについてQC七つ道具を活用する方法など述べ、不良低減活動を阻害する因子についてニュートンの運動の法則との対比、不良低減活動の進め方のステップ等を解説しています。
2.では、「不良のさまざま」
として、社内不良と社外不良について、製品の特性分布と検出確率や計測精度との関係に触れ、不良低減のための留意すべき視点などを解説し、さらに顕在不良と潜在不良について、両者の関係を整理し、さらに突発不良についてそれが発生するメカニズムから日常的な積み上げによる継続的改善の重要性などについて解説しています。
3.では、「平均値・ばらつきと不良」
として、特性値を表す平均値とばらつき(標準偏差)について、正規分布、二項分布、ポアソン分布について、特性値の分布と公差(規格値)との関係などを解説し、さらにX(エックスバー)-R管理図などの管理図についての見方、さらに工程能力と不良との関係について、工程能力指数(Cp)による工程能力の把握や変動要因の解析などを解説しています。またISO9001の要求項との関係についても言及しています。
4.では、「不良の予防」
として、DR(Design Review:デザインレビュー;設計審査)、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モードと影響解析)、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、ワイブル確率紙などを用いての故障解析を含む信頼性の評価手法と信頼性の向上策などについて、その目的や活用方法などの不良の予防に繋がる手法について解説しています。ISO9001の設計・開発におけるレビュー・検証・妥当性確認との関係についても言及しています。
5.では、「不良原因の追及と不良対策」
として、不良原因に対する対応は、?4項の予防手法により発生させないこと、?発生したら、不良対策をしっかりと対応すること、?再発防止、?類似不良の防止−水平対策とした上で、?~?に関わる不良原因の追求について、FTAの活用、5段階のなぜなぜを繰り返す原因の追求法の5Whyやその4M(Man、Machine、Method、Material)、5M(前記4M+Management)など系統図的追求法について事例を交えて解説しています。さらに現場・現物・現実主義の重要性やチェックリスト、散布図、分散分析などの方法、さらに不良対策と水平展開の進め方、ポカヨケ、TPM(Total Productive Maintenance)、チェックリスト、暫定及び恒久対策などについて事例を交えてその考え方から実施手順などを解説しています。またこの章の終わりには、「はめあいと不良、検査のとらえ方小史」との題で機械工業の「はめあい」を例にして不良と検査などの考え方の歴史等を紹介しています。
6.では、「不良低減活動の基本」
として、6S(整理、整頓、清掃、清潔、躾、安全)、標準化、QC工程図と作業標準、管理などについて不良低減活動の基本として、その具体的な内容と考え方について解説しています。ここでは、究極として帰するところは人として、管子の以下の言葉を引いて不良低減活動に関わる人材育成の重要性を再確認しています。
『一年の計は、穀を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し、
十年の計は、木を樹うるに如くは莫し、
終身の計は、人を樹うるに如くは莫し、』
改めて不良低減活動を進めようとする製造業の関係者にとって本書は、不良低減の基本的な考え方から手法までが整理されまとめられていて、不良低減を進めて行く上で役に立つヒントがきっと得られるものと思います。
なお本書の概要目次は、以下です。
1.企業活動と不良低減
2.不良のさまざま
3.平均値・ばらつきと不良
4.不良の予防
5.不良原因の追及と不良対策
6.不良低減活動の基本
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- 2008年03月25日
- QC手法、統計、QC7つ道具
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