金融庁の内部統制部会専門委員でもある内部統制の第一人者の町田 祥弘先生の著作で、新書版とコンパクトながら、充実した内容で、「内部統制とは何か」、「構築、評価及び報告、監査などにおいて何をするべきなのか」を図表など使いながら分かり易く、体系的に解説している内容が好評で当該分野のベストセラーともなった「内部統制の知識」(2007年3月発行:「ISOの本棚」ブログでも紹介)が改訂され、第2版が発行されています。
第2版でも、一般のビジネスパースンや学生などを対象に内部統制の重要性に始まり、会社法、金融証券取引法に関わる内部統制の定義から構築プロセス、経営者の評価、外部監査の内容まで、内部統制の基礎的な知識を体系的にやさしく解説しています。
また新たに内部統制報告制度について、内閣府令や内閣府ガイドライン、Q&A、日本公認会計士協会の内部統制監査に係る「実務上の取扱い」などが反映され、内部統制問題の焦点となる事項についての情報が新たに盛り込まれた内容になっています。
本書:「内部統制の知識 第2版 」です。
本書は、著者:町田 祥弘先生にて、2008年3月に日本経済新聞出版社より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「ベストセラーを大改訂
難解なルールも
これで氷解!!
内閣府令や「業務上の取扱い」などに完全対応
内部統制の定義から構築プロセス、経営者の評価、外部監査の内容まで、知っておきたい知識を完全網羅。」
また本書の表紙の折り返し部には、以下のように本書の特徴を記載しています。
- 本書は、内部統制の定義から、構築プロセス、経営者の評価、そして外部監査の内容まで体系的にやさしく解説しています。
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- 2008年度から導入される内部統制報告制度について、内部統制報告基準・実施基準をはじめ、内閣府令や日本公認会計士協会の「実務上の取扱い」など、最新の情報を盛り込みました。
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- 参考例を用いて報告書の具体的な記載内容を説明しています。
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- 実務の進展により、さまざまな問題が明らかになってきています。本書では、章を設けて詳しく紹介しました。
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本書の「まえがき」で著者は、「内部統制の時代」として今日の状況を概観して、「会社法」、「金融証券取引法」などの法律が規定された背景に、不正な財務報告や法令等への違反が相次ぐという状況の中で、企業がリスクに対していかなる対応を払ってきたかが問われているとしています。さらに「企業活動の国際化や雇用環境の変化を背景として、今後、日本においても、経営者が自社の活動にかかるリスクを適切に把握し、自らの責任において自社の業容等に適した内部統制を構築することが重要になっていく」と述べています。
本書は、8章から構成されています。法令などの関係文書の要点は、枠囲いで示すなど多くの図表を用いて分かり易く解説されています。
[I]では、「内部統制とは何か」
として、内部統制の時代的背景とその位置づけなど、また会社法で規定される「内部統制」では何が求められているか、さらに金融証券取引法で求められる「内部統制報告」についてその背景から概要までを解説しています。また新たに2007年8月10日および2007年10月1日の内閣府令、「内部統制報告制度に関するQ&A、日本公認会計士協会の「実務上の取扱い」などにも触れ解説しています。
[II]では、「内部統制の歴史」
として、タイトルが第1版では、変遷でしたが歴史に変わっています。内容としては、アメリカにおける内部統制の歴史から、経営者の視点による内部統制に至るまでの概要を解説し、次いでCOSOのフレームワークについて、COSOの意味から、その詳細とCOSOフレームワークの展開までを解説し、我が国の内部統制の展開を取り上げ、「監査基準」での内部統制の概念定義、経済産業省の報告書(リスク管理・内部統制研究会による「リスク新時代の内部統制-リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制の指針-」などを解説しています。
[III]では、「アメリカでの現状と問題点」
として、「エンロン事件とSOX法」について、SOX法の概要から内部統制報告制度の展開、その見直し(コスト負担への(初年度の見直し)対応、規制・基準の改定とその後の展開としての中小企業への対応など)の経緯とその課題について解説しています。
[IV]では、「内部統制の基本的枠組み」
として、「内部統制報告の定義と目的」において、その基本的な枠組み等について解説しています。内部統制の目的である業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守、資産の保全、また内部統制の基本的要素である「統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応」について解説しています。また内部統制の限界として、「リスクが受容可能なレベルまで低減できるという合理的保証をもたらすもの」とし、その限界について言及し、外部監査の観点で内部統制の評価が行われると、限界は、軽減または解消されると解説しています。さらに内部統制の基本的枠組みに関わる関係者の役割と責任について解説しています。
[V]では、「内部統制の構築プロセス」
として、「内部統制構築の意義」について、実施基準に関わる内部統制の構築の目的と範囲、財務報告に係る内部統制構築の要点について解説しています。さらに内部統制構築の事例を交えて、内部統制の構築のプロセスについて、基本的計画と方針の決定、整備状況の把握、把握された不備への対応と是正、監査人の関与などについて解説しています。
[VI]では、「経営者による評価および報告」
として、「内部統制の評価の意義」について財務報告の範囲などを解説し、「内部統制評価の範囲」について、原則として連結ベースとした上で、評価範囲の決定についてフローなどにより解説しています。また各種の内部統制の評価の方法、内部統制報告について報告書の例をあげて解説しています。
[VII]では、「内部統制の監査」
として、「内部統制監査の意義」について内部統制監査の目的、監査と財務諸表監査との関係の解説に始まり、監査計画と評価範囲、さらには内部統制監査の実施の要領や留意ポイントなどを解説し、内部統制の重要な欠陥の報告と是正、さらに監査人の報告書の記載事項等を事例を交えて解説しています。
[VIII]では、「内部統制問題の焦点」
として、会社法と金融商品取引の並列について、不正問題に対する重点移動、日本企業の内部統制の課題、内部統制の構築プロセスにおける課題、内部統制の重要な欠陥、中小企業の問題、内部統制報告のゆくえといった構成で今後の我が国の内部統制問題において焦点となると考えられる諸点について展望しています。
本書は、最新のトピックスも反映されて内部統制にまつわる全般的な概要が分かり易く解説されており内部統制に関心があるビジネスパーソンには、内部統制について網羅的に概観できるお奨めの一冊です。
なお本書の概要目次は、以下の通りです。
[I]内部統制とは何か
1 内部統制の重要性
2 会社法の「内部統制」規定
3 金融商品取引法と内部統制報告
[II]内部統制の歴史
1 アメリカにおける内部統制の歴史
2 COSOのフレームワーク
3 日本における内部統制の展開
[III]アメリカでの現状と問題点
1 SOX法と内部統制報告制度
2 内部統制報告制度の見直し
[IV]内部統制の基本的枠組み
1 内部統制報告の定義と目的
2 内部統制の基本的要素
3 内部統制の限界
4 関係者の役割と責任
[V]内部統制の構築プロセス
1 内部統制の構築の意義
2 内部統制の構築プロセス
[VI]経営者による評価および報告
1 内部統制の評価の意義
2 内部統制の評価の範囲
3 内部統制の評価の方法
4 内部統制報告
[VII]内部統制の監査
1 内部統制監査の意義
2 監査計画と評価範囲の検討
3 内部統制監査の実施
4 監査人の報告
[VIII]内部統制問題の焦点
1 会社法と金融商品取引の並列について
2 不正問題に対する重点移動
3 日本企業の内部統制の課題
4 内部統制の構築プロセスにおける課題
5 内部統制の重要な欠陥
6 中小企業の問題
7 内部統制報告のゆくえ
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- 2008年03月26日
- 内部統制,日本版SOX法
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