超硬合金を使用した冷間鍛造金型製造の分野では、高い評価を受けていた会社がバブルの崩壊以降、1997年には、創業以来はじめてという赤字会社へと転落。
暗い照明に灰色の内外装、油まみれになって働く工員……いわゆる「3K(キツイ・キタナイ・キケン)職場」の典型だった工場。
赤字会社となると仕事のプライドも失われてきて、新入社員を採用しても定着せず、社内の高齢化が進み、ますます活気が失われるという負のスパイラルに陥ってしまった工場。
その会社(大阪の金型メーカー・枚岡合金工具株式会社)が現在では、黒字回復を遂げて、高収益企業に転換した秘密を知りたいと思われませんか?
「大阪フロンティア賞新奨励部門特別賞」「関西IT活用企業百選優秀企業表彰」「大阪府品質管理推薦優良企業表彰」「IT経営百選最優秀賞企業賞認定」など経営賞を受賞する優良会社になぜ変わったのかという秘密。
その秘密は、「掃除」だけとして、同社の社長がその取り組んだ内容と変貌のプロセスを余すことなく説き明かしています。
ただ闇雲に「掃除」というのではなく、「整理」「整頓」「清掃」の3Sのステップを正しく実施すること(社長は、これを「ゴミゼロ化」と名付けていますが)が大切と説いています。
本書:「儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密 」です。
「たかが掃除で奇跡のV字回復!」との副題が付いています。
本書は、著者:古芝 保治 氏(枚岡合金工具株式会社(本社・大阪市天王寺区)の二代目社長で、1973年に父の創業した同社に入社後、金型設計・製造に携わるかたわら、1983年に自社の販売・受発注管理ソフト、2002年にISO9001工程認証システム等統合管理ソフトを開発。現在は金型事業のほか、デジタル文書管理システム事業も手がける)にて、2008年3月に日本実業出版社 より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「一枚の
ぞうきんで
会社が
変わる!
1100社3300人が見学!
あの松下電器も訪れた
NHK「つながるテレビ@ヒューマン」など
メディアも大注目
本書の最初に「ゴミゼロ化」の3S活動の一端を紹介しているカラー写真が掲載されています。社長自ら率先垂範され活動されている様子や3Sが実際にどのように進められたのかの一端がよく分かります。
また「はじめに」に続いて8ページに渡って「ゴミゼロ化」の活動の取組を振り返った漫画が掲載されています。ここでも「ゴミゼロ化」に取り組まれた途中においては、その活動は、必ずしも順風満帆に進まなかったが、社長の信念が全員を動かし、容易には創りがたい風土改革に導いたことがよく伝わってきます。
「赤字のどん底で一筋の光---「ピカピカ」工場との出会い」との序章で、社長を継いだとたんに創業以来の赤字を経験したことや改善活動の模索のなかで、京都のタナカテックという「ピカピカ工場」との出会いが契機になってこの姿が我が社が目指すべき方向と思い至り、6社合同ではじめた「3S活動勉強会」(=「大阪リエンジニアリング研究会」)の発足と社長が提示した「ゴミゼロ化」宣言の内容が紹介されるというはじまりになっています。
第1章では、「「ゴミゼロ化」で黒字転換!人格が変わる! 社格が変わる!」
として、「ゴミゼロ化」の取組について、「整理」から「整頓」、「清掃」の活動について写真も交えてどのようなとりくみであったのかが紹介されています。「ゴミゼロ化」の取組自体は、利益を直接生むものではないが、じわじわと効果を現し、作業効率が良くなり、社員が元気になり、テキパキと仕事をこなすようになってくるとのことで、自然と活路が開けると述べています。また実際に大阪リエンジニアリング研究会の6社とも見事に黒字復活を遂げたとのことです。黒字回復の直接の原因は利益率の低い仕事を捨てて、3Sを通じて生まれた、1人あたり年間130時間にもおよぶ余剰時間を、利益率の高い仕事に当てることができるようになったことによるとのこと。すなわち3S活動によって、人的経営資源を付加価値の高い利益につながる仕事にあたられるようになったとのことです。
第2章では、「朝10分の床磨きが社員の心を磨く」
として、「ゴミゼロ化」の活動は、黒字回復をもたらしただけでなく、それは副次的なものだとして、最大の成果は、社員の心が一丸となってまとまったこととして、毎朝10分の床磨きの活動のもたらした成果について語っています。行動が感情をコントロールするとし、悩むより、即行動が生き方上手の近道と述べています。
第3章では、「工場見学! いますぐできる「ゴミゼロ化」のヒント」
として、枚岡合金工具株式会社の社内で実施した仕掛けの一端について『整理・整頓』、『清掃』、『モチベーションアップ』、『省エネ』などの内容を写真を中心に紹介しています。会社は勿論、一般家庭においても参考になる内容が紹介されています。
第4章では、「「ゴミゼロ化」を続けるしくみをつくる」
として、「ゴミゼロ化」の活動は、決して平坦なものではなかったとし、当初は、「ゴミゼロ化」に反対した社員こそいなかったが最初から喜んでやっている社員は、誰一人いなかったとのことです。社長が自ら率先垂範して本気で取り組んだ背中を見て社員が少しずつ変わっていくと述べています。「ゴミゼロ化」の活動の中でどのような課題が発生し、都度どのようにしてそれを打開してきたかが語られています。例えば、「掃除なんてしてる暇があったら、ひとつでも多く製品を作るべきではないか」といった社内の声が絶えなかったということです。更には、還暦をむかえた社員の慰労会の席上で、創業期から会社を支えてくれた、ベテランの社員に『何十年も枚岡で働いてきたのは、掃除をするためやない』と言われてしまったとのことです。
第5章では、「図解! 「ゴミゼロ化」で工場改善ができるしくみ」
として、「1.『3Sとは? 職場環境整備のための合言葉』」から、「9.『チェックと定着化の方法 「出したら戻す』」を促し、定着化をはかる」までのポイントについて図解して「ゴミゼロ化」と工場改善との関係について解説しています。
第6章では、「「ゴミゼロ化」がもたらした思いがけないこと」
として、「ゴミゼロ化」がどのような波及効果をもたらしたのかというインパクトについて詳細に分析し、解説しています。
第7章では、「身近な地域貢献・環境貢献で「心の3S」ができていく」
として、「ゴミゼロ化」を巡る「心の3S」など社長の経営哲学、人生哲学が述べられています。「ゴミゼロ化」を核として、V字回復を成し遂げるために、使わなくなった設備や情報など、不必要なものはすべて捨ててきたとのことですが。たったひとつだけ決して捨ててはいけない例外があり、それは「人」だとのこと。
本書は、3Sを中心とした「ゴミゼロ化」活動によって会社が黒字化して、高収益企業に変わっていった企業革新のエッセンスについて写真やイラストなどの図表を交えて分かり易く紹介しています。
会社経営者のみならず、ビジネスパースンや家庭をあずかる主婦にも役立つノウハウが満載されています。
ISOに取り組み認証を取得しているが、効果が上がっていないと感じておられる企業の人々にも是非とも読んで頂きたい一冊です。


なお本書の概要目次は、以下の内容です。
巻頭漫画 ゴミゼロ化Story――マイナスの磁場を改善し利益を生み出す「ピカピカ」工場に
序章 赤字のどん底で一筋の光――「ピカピカ」工場との出会い
第1章 「ゴミゼロ化」で黒字転換! 人格が変わる! 社格が変わる!
第2章 朝10分間の床磨きが社員の心を磨く
第3章 工場見学! いますぐできる「ゴミゼロ化」のヒント
第4章 「ゴミゼロ化」を続けるしくみをつくる
第5章 図解! 「ゴミゼロ化」で工場改善ができるしくみ
第6章 「ゴミゼロ化」がもたらした思いがけないこと
第7章 身近な地域貢献・環境貢献で「心の3S」ができていく
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- 2008年03月28日
- 5S | 見える化、改善、ムダ取り、ポカヨケ
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