日本版SOX法に基づき、粉飾決算などの不正会計の防止を目的とした法律である内部統制報告制度が平成20年4月1日開始する事業年度から適用されます。
この内部統制報告制度は、すべての上場企業に対し、財務報告の健全さが問われているもの。経営者による社内管理体制の自己点検を義務づけるものです。
この内部統制についてこれまでに各社とも入念な準備を進めてきたとされていますが、万が一にも上場廃止という伝家の宝刀が振り下ろされることを警戒し“リスク過敏”に陥っている事例もみられ、依然として現場での混乱を抱えている実情と言われています。
このような背景から、3月には、金融庁による「内部統制報告制度に関する11の誤解」と呼ぶ文書も公表されています。
日経産業新聞(2007-10)の日本の人気講師ランキングのCSR・リスクマネジメント部門でトップ3にランク入りしている著者が、内部統制は経営そのもので、すでにやっているとし、内部統制について何をどこまでやれば良いかといった内部統制の本質を見極める目の『内部統制リテラシー』を高めることが大切と説いている本を紹介します。
企業価値を高めてくれる内部統制を本来の姿に戻すためにはどうしたらいいのか、内部統制に関わる「リスク過敏症」や社員が職場で抱いてしまった「やらされ感」は、如何にして解消すればいいかという処方箋を提示しています。
また多くの企業、社員が悩まされている内部統制を価値あるものに変化させるためのノウハウ等について明快に伝授しています。
本書:「リスク過敏の内部統制はこう変える!」です。
本書は、著者:戸村 智憲 氏にて、2008年4月に出版文化社より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれています。
「非まじめ」な
監査対応で、みるみる
楽になる
内部統制リテラシー
のすすめ
日経産業新聞
人気講師ランキング第3位
カリスマ講師が語る
効率的に内部統制とすすめる
奥義!
本書は、読者視点で書かれてあり、示唆に富んだ箴言の引用や身近なたとえ話なども交え、ここが重要と言ったポイントを強調しながらシンプルで分かり易く説得力に富んだ解説となっています。
本書は、5章からなりますが、各章の終わりには、「コラム1:同じ四文字の「内部統制」でもこんなに違う」といったトピックスを取り上げたコラム欄が設けられています。
第1章では、「内部統制は経営そのもの−すでにやっている内部統制」
として、『身の回りを「内部統制メガネ」で見てみよう』ではじまり、内部統制を読み解く力を養うコツは、現状の業務などで表が「戦略遂行・業務活動」、裏が「リスク管理・内部統制」という一枚のコインと気付くことだなどの含蓄深い話しが展開されています。さらに不祥事問題、COSOモデルについての解説などに続いて、内部統制のエッセンスとして、『戸村オリジナル「七文字式内部統制−リスク管理・内部統制の神髄』について紹介しています。すなわち、「内部統制で大切なことは、「『正直に』『正確に』『正式に』対応することを『適時適切』に行うこと」と述べています。七文字は、3つの『正』と『適切適正』とし、これを備えた経営活動こそ顧客の信頼が高まり、内部統制による競争優位を獲得できるとしています。
第2章では、「仏作って魂入れずの内部統制からの脱出」
として、ラーメン屋さんで内部統制を読み解く力を身につけるとし、コンサルティング会社についても自分の舌で良いコンサルタントを探すといった内容など内部統制リテラシーを高め、内部統制の基本や原点に戻ることの重要性を説いています。付け焼き刃にしない内部統制に取り組む上で、温故知新がキーワードとして、新しいことでなく、これまでやっていることを見直すことが大切と説いています。さらに監査法人・コンサルタントとのかしこい付き合い方について、監査法人との協議などの場面において、あなたの発言の語尾に『よ』と『ね』を付け加えることで、内部統制リテラシーも立場もがらっと良いものに変わると述べています。
第3章では、「幸せをもたらす内部統制へ」
として、何にでも重大なリスクありとして過剰な反応を示す『リスク過敏症』を取り上げ、自分で内部統制リテラシーを働かせ、受容可能なリスクのレベルを判断して対応する姿勢を『非まじめ』と述べ、『非まじめ』な対応の心得を説いています。ここに監査に合格するヒントがあるとしています。すなわち、非まじめにここまでは、リスクの回避・低減・転嫁する代わりに、ここからは、リスクを受容しようという内部統制対策のある程度の落としどころを付けておくのが大切と述べています。またISOや規格と内部統制との関係についても言及し、根っこも目的も同じとの「包容力」に相当する内部統制リテラシーによる相互理解が大切としています。またミッション経営による本当の内部統制を目指す考え方について解説しています。
第4章では、「内部統制「非まじめ」問答集」
として、内部統制の活動に関連して「フリーアドレス制」など実務的な8つの質問とそれに対する回答がQ&Aとして掲載されています。
第5章では、「内部統制リテラシーに役立つエッセー」
として、内部統制リテラシーを高めるとの観点から身近な幾つかの社会現象に関わる含蓄に富んだ幅広いテーマのエッセーが掲載されています。
本書は、内部統制の本質は何かを見抜く力と筆者が定義する「内部統制リテラシー」を高めることに焦点をあて、本来、企業価値を高めてくれる内部統制についてどのように誤りの部分を正し、どのように価値あるものに転換していくべきか等のノウハウやポイントを分かり易く解説しています。
内部統制に関心があるビジネスパースンには、是非、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の概要目次は、以下の内容です。
第1章 内部統制は経営そのもの−すでにやっている内部統制
第2章 仏作って魂入れずの内部統制からの脱出
第3章 幸せをもたらす内部統制へ
第4章 内部統制「非まじめ」問答集
第5章 内部統制リテラシーに役立つエッセー
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- 2008年04月22日
- 内部統制,日本版SOX法 | リスクマネジメント, 内部統制
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