従来から5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、製造業の現場の風土を築き挙げる基本として実践されてきています。
この5S活動に対して、「企業は人をつくる」-----人づくりは“躾”からとの観点から、”躾”を要とし、“躾”は、整理・整頓に・清掃・清潔の基本であり、人間形成をしていく上での基礎になるもの」と間接部門をターゲットとした新5S活動の考え方から進め方を説いている本を紹介します。
『心づくりの諸行動を凡事徹底(簡単なことを徹底的に実施すること)でまず人の心を変えることから始めよう』との新5S(その目的は、”人づくり”と改善をしてムダ取りを行い利益向上(儲ける)に貢献すること)を標榜して、その活動を通して、製造業・非製造業の間接部門、自治体などの「事務所」に対して、より良いサービスや利益を生む企業体質への転換を提案しています。
本書:「心づくりによる間接部門の新5S活動の進め方」です。
「きれいで、たのしい、事務所づくり」との副題が付いています。
本書は、著者:長谷川 祐三 にて、2008年4月に日本規格協会より発行されています。
本書は、著者による「人づくりのために儲ける新5S実践マニュアル」(2002年日本規格協会発行)の姉妹編になります。
本書の「はじめに」で著者は、昨今の風潮や『心づくり』の大切さについて以下のように述べています。
この数年多発している企業が起こしている不祥事は、苦心も苦労もせず汗もかいたことがない、人と人との連携の大事さ、つまり「感謝」、「気づき」、「思いやり」の心を軽視する、指導的立場の人の考えが、変わっていないからではないでしょうか。
この新5Sは、心づくりの諸行動を凡事徹底(簡単なことを徹底的に実施すること)でまず人の心を変えることから始めようという仕方です。製造業では、事務所と現場を一緒にされては困るとか、安全とか、品質とか、5Sというものは現場でやればよいことで事務所には関係ないという考え方はもう現代では受け入れられないと思います。このような考え方は払拭されなければなりません。
仕事以外の清掃などはすべて外部業者に任せるという企業のある一方で、仕事だけでなく従業員が掃除する。それも社内だけでなく地域の清掃やトイレ掃除までする企業も増えてきています。これらの奉仕活動は地域社会から感謝されるだけでなく、掃除をすることにより、従業員の心(心掛け)が要請されているのです。自律する心が育っているのです。
本書の冒頭に『トイレ掃除から凡事徹底』を実践してこられたイエローハットの取締相談役の鍵山 秀三郎氏が【本書を製造業、非製造業のムダ取りのみならず、学校を含む自治体のきれいなオフィスづくりに役立つ「心づくり」の教科書としてお薦め致します】との推薦の言葉が寄せられています。
本書は、5章から構成されています。
全般的に多数の写真、イラストなどの図表が多く用いられており、間接部門での豊富な改善事例やチェックシートなども含めて新5Sについての考え方からどのように実践すれば良いかについて具体的にわかりやすく解説されています。
また【躾(しつけ) 仕付け 】、【オズボーンのチェックリスト】などの10件の『コラム』が挿入されています。
第1章では、「新5Sの考え方と定義」
として、”躾”を要とする新5Sについて、その目的、なぜ新5Sが必要かとの背景、新5Sの考え方、更には、新5Sの概要について解説しています。(1.心を磨く、2.謙虚な人になれる、3.気付く人になれる、4.感動の心を育む、5.感謝の心が芽生える)との鍵山 秀三郎氏の「日本を美しくする会」の「なぜトイレ掃除か」なども紹介されています。
第2章では、「間接部門の新5S活動の必要性」
として、間接部門の業務の再認識から始まり、ムダが多い間接部門こそ新5Sが必要なのになぜ関心が薄く活動が低調になってしまうかなどを分析して詳細に解説しています。
第3章では、「間接部門の新5S実践のポイント」
として、事務所のマンネリ化の防止の観点から、事務所のモノの置き方の状態が正常か異常かがわかる基準づくり及びレイアウトの考え方と、ムダの少ない清潔な事務所とするために「躾・整理・整頓・清掃・清潔及び安全」の順に着眼点や改善のポイント等について写真・図の事例を通して、間接部門の新5S実践のポイントについて解説しています。上記の事例では、、直接部門の現場事務所、非製造業の間接・直接部門、更に自治体の事務所にも適用できるように取り上げられています。
第4章では、「間接部門の新5Sチェックシート」
として、間接部門の新5Sの進捗状態をチェック・評価して改善するのに用いるための『新5Sチェックシート』(躾、整理・整頓、清掃、清潔)について、作り方、チェックの仕方、その結果をレーダーチャートなどにまとめるといった評価の仕方などを解説しています。
第5章では、「間接部門の新5S活動事例」
として、間接部門の新5S活動の進め方について、前記の新5Sチェックシートを用いる方法、小集団活動のQCストーリーとして問題解決の手順、各種の改善活動提案について事例を交えて解説しています。
本書は、多数の具体的な写真やイラストによる事例の解説を交えて製造業の間接部門を中心に、非製造業の間接部門、自治体の事務所にも適用できるように、新5Sを実施する場合の考え方や進め方を分かり易く解説してあります。
職場の風土を変革することは並大抵ではありません。
しかし、この新5S(5S)活動を実践して「人づくり」、「モノづくり」、「サービス性の向上」などで職場の風土改革にも成功し、大きな成果を挙げた企業が多数あります。
本書は、風土の改革やムダ取りの成果を考えておられる経営者からリーダーの立場にある人に是非、読んで頂きたい一冊です。

なお本書の概要目次は、以下の内容です。
第1章 新5Sの考え方と定義
1.新5Sとは
2.心の新5S
3.新5Sの定義
第2章 間接部門の新5S活動の必要性
1.間接部門とは
2.なぜ間接部門に新5Sが必要か
3.なぜ間接部門の新5S活動は低調か
第3章 間接部門の新5S実践のポイント
1.事務所の位置の基準及びレイアウト
2.躾について
3.整理・整頓について
4.整理・整頓の実施例
5.清掃・清潔について
6.安全について
第4章 間接部門の新5Sチェックシート
1.チェックシートのつくり方と参考例
2.新5S評価レベルの考え方と仕方
第5章 間接部門の新5S活動事例
1. 新5Sチェックシート
2.小集団活動
3.改善提案活動
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