「絵に描いた餅」といった戦略ではなく、またどこかの教科書からつまみ食いしたようなオリジナリティに欠ける戦略というのではなく、プロの戦略コンサルタントが創る創造的かつ実現可能な戦略が策定できるようとの観点から「見える化」「現場力」などで知られる(株)ローランド・ベルガーのコンサルタント陣が、メンバーの「腹に落ち」、かつ「実際に機能する」戦略の作り方を初歩の初歩から解説している本を紹介します。
戦略の策定のためのフレームワークやツールの実践的な使い方や方法論を解説すると共に、戦略策定のプロセスにおける「プロの技」を伝授しています。
「現状分析」→「戦略オプション策定」→「オプション評価・絞り込み」→「計画・アクションへの落とし込み」に至る、戦略策定の各ステップで、具体的に何をすればよいか、何に注意しておくべきなのか、特にプロセスにおける代表的な手法や重要な視点等について、企業事例を交えて解説し、「復習チェック」にてレビューし、簡単な「ワーク」を解きつつ、「プロの視点」といった解説などを通して、使える「プロの戦略策定の技・心構え」を学べるという構成になっています。
本書:「事業戦略のレシピ」です。
「使って味を出す現場のための意思決定ツール」との副題が付いています。
本書は、遠藤 功 氏の監修、ならびに鬼頭 孝幸 氏、山邉 圭介 氏、朝来野 晃茂 氏の共著にて、2008年5月に日本能率協会マネジメントセンターから発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
「実行できる」戦略作りの授業!
また表紙カバーの折返し部には、次のように書かれてあります。
「絵に描いた餅は、食べられません」
理解・納得できなければ
実行もできない。
メンバー全員の「腹に落ちる」
戦略策定プロセスを
惜しみなく紹介。
本書の「監修のことば」で監修者は、「『戦略』とはそもそも自らを「際だたせる」ことである。」と際だった戦略であることの意義を確認した上で、本書で読者に伝えたい「プロの技」は、以下の二つに大別されると述べています。
-
汎用的とも言えるフレームワークやツールを実際に使いこなす際の、独自の「視点」
- 実行され、結果につながる「戦略」を策定するための「プロの技」
本書は、「戦略とは何か」とするオープニングとそれに続く6つの章から構成されています。本書は、二色刷(緑黒)でメリハリが付いていて、多数の図表が挿入され、分かり易く構成されています。
各項の最初に「この項目で学ぶこと」としてその章の重点箇所が箇条書きで整理されています。
また手法の解説に続き、その事例が掲載され、具体的に手法がイメージできるように工夫されています。
さらにその項で学んだ内容を自社に適用して学習効果を高めるための「ワーク」、「復習チェック」が挿入されています。
また随所にプロの戦略コンサルタントはどのように考えるかといった「プロの視点」が挿入されていて参考になります。
オープニングでは、「「戦略」とは何か」
として、「戦略」の意味について、戦略の目的の確認にはじまり、「戦略」と「ビジョン」、「計画」との違いなどを整理し、解説しています。戦略とは、優位性を強化、拡大していくための「設計図」であり、「デザイン」であるとして解説しています。
第1章では、「「戦略」を作る前に」
として、どのようにして戦略とつくるかという策略策定において必要な大枠の考え方を解説しています。戦略策定のプロセスについて、「現状分析」→「戦略オプション策定」→「オプション評価・絞り込み」→「計画・アクションへの落とし込み」の4ステップとして解説しています。以降の第2章から第5章において、前記の各ステップの詳細が解説されるという構成になっています。
第2章では、「戦略策定ステップ1 現状分析」
として、現状分析のための手法について解説してします。現状分析の基本は、SWOT分析として、OT分析→SW分析の順に進めていくことが望ましいと解説した上で、OT分析のための「5フォーカス分析」、「ポジショニング分析」、「競合分析」、「成功要因(KFS)分析」、「顧客(消費者、ユーザー企業)分析」について解説し、次いでSW分析のための「業界/パフォーマンス分析」、「ポジショニング分析」、「マーケティング(4P)分析」、「バリューチェーン/ビジネスモデル分析」、「有形資産・無形資産・組織分析」について解説し、最後にSWOTをまとめる際の重要な視点などを解説しています。
第3章では、「戦略策定ステップ2 戦略オプション策定」
として、前章のSWOT分析をもとに、選択と集中の選択肢の洗い出しに関わる戦略オプション策定の方法について解説しています。その手順として、「成長オプションの洗い出し」→「脅威への対応オプションの洗い出し」→「磨くべき強み・補強すべき弱みの整理」→「戦略オプションの取りまとめ」との戦略オプション策定の手順について解説しています。またそのための基本的な視点と「オプションツリー」、「MECE」の概念などについても重点解説しています。
第4章では、「戦略策定ステップ3 オプション評価・絞込み」
として、前章で洗い出したオプションについて「戦略」としてどのような視点から評価し、絞り込むかというオプション評価・絞込みについて解説しています。絵に描いた餅ではなく、実際に会社が動くことができる戦略が求められるポイントの「論理性」、「実現性」、「納得性」が重要との解説にはじまり、その戦略から得られる「成果」(output)と必要な投入リソース」(input)を明確にすることや実現性の検証の視点、現場の「腹落ち感」に関わる「見える化」の徹底などのポイントを解説しています。
第5章では、「戦略策定ステップ4 計画・アクションへの落とし込み」
として、「戦略」を「施策」に落とし込む「戦略の構造化」設計など戦略を実行できる計画・アクションに落とし込んでいくために、進捗をモニタリングできる状態までの計画の詳細化が重要として、「戦略の「施策」への分解(戦略の構造化)」から「戦略実行の推進体制の構築」に至る計画・アクションへの落とし込みのステップと各ステップの留意ポイントなどを解説しています。また施策について、「戦術構築」、「組織としての問題解決などの幾つかのタイプがあるとして解説しています。また具体的なアクションに落とし込む上でのポイントや手順などを解説しています。
第6章では、「確実に「実行」するために」
として、戦略を「実行」する上で大切なポイントについて解説しています。「PDCA」の愚直なまでの繰り返し、「見える化」などについて解説し、「骨太で合理的な戦略」と「自ら問題を発見し解決する強い現場力」の両方を兼ね備えていることが強い経営のために必要と強調しています。
本書は、企画室など経営スタッフ部門で事業戦略の策定に関わっているビジネスパースンから、経営者、チームリーダー、部門責任者の方々、事業戦略の策定の基本スキルを習得したいと考えているビジネスパースンには、読んで頂きたい一冊です。
まさにレシピ
プロ意識の高い新入社員にお勧め
なお本書の概要目次は、以下です。
オープニング「戦略」とは何か
第1章 戦略を作る前に
第2章 戦略策定ステップ1 現状分析
第3章 戦略策定ステップ2 戦略オプション策定
第4章 戦略策定ステップ3 オプション評価・絞込み
第5章 戦略策定ステップ4 計画・アクションへの落とし込み
第6章 確実に「実行」するために
(広告)
ウィルコム直営オンラインショップ 最短即日発送・ポイント還元(ウィルコムストア)
- 2008年06月03日
- 経営管理 | ビジネス、自己啓発、スキルアップ
- コメント(0)