「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」のシリーズがヒットし、マスコミにもしばしば登場されるようになった武田 邦彦 教授の著作を紹介します。
基本的な論調は、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」と同様で、以下のような論を展開しています。
- いわゆる「地球に優しい生活」というのは、じつは、消費者にとって無駄でしかない。
- 例えば、「エコバッグにすると、かえって石油の消費が増える」といった論旨で、「環境生活」は、逆に環境を悪化させ、国や自治体の利権の温床となっている。
本書:「偽善エコロジー」です。
「「環境生活」が地球を破壊する」との副題が付いています。
本書は、著者:武田 邦彦 教授にて、2008年5月に幻冬舎 より発行されています。同社の「幻冬舎新書 」(た-5-1)の一冊になります。
本書の帯には、以下のように書かれています。
「企業の金儲けと環境省の省益にまみれた
エコ事業・商品にダマされるな!」
家電リサイクル、エコバッグ、ペットボトル回収……庶民だけがバカをみる。」
これがエコ生活の現実だ!
- 割り箸追放→端材の使い道が消え、森林荒廃
- 食品トレイのリサイクル→技術的にできず、ほぼ焼却
- 古紙のリサイクル→漂白や廃液処理で石油を使い、環境悪化
- 生ゴミを堆肥に→土が有害物質だらけに
- 自動車燃料をバイオエタノールに→作るのに同程度の石油を使う
じゃあ、本当のエコとは?
本書は、4つの章から構成されています。
第1章から第3章までは、『検証』に対して、筆者の『判定』が記載され、その『判定』に対する筆者の理由や根拠についての解説が展開されているという構成です。
第4章は、『本当に「環境にいい生活」とは何か』との筆者の論を展開するという構成になっています。
第1章では、「エコな暮らしは本当にエコか?」
として、『検証1. レジ袋を使わない』→『判定:ただのエゴ』から『検証8.温暖化で世界は水浸しになる』→『判定:ならない』までエコな暮らしに関する8つの問題を取り上げ、判定するとの展開になっています。
第2章では、「こんな環境は危険?安全?」
として、『検証1. ダイオキシンは有害だ』→『判定:危なくない』から『検証6. 無毒、無菌が安全』→『判定:危ない』まで安全に関係するような6つの問題を取り上げて判定するとの展開になっています。
第3章では、「このリサイクルは地球に優しい?」
として、『検証1. 古紙のリサイクル』→『判定:よくない』から、『検証7. ゴミの分別』→『判定:意味無し』までゴミ・リサイクル等に関係する7つの問題を取り上げて判定するとの展開になっています。
第4章では、「本当に「環境にいい生活」とは何か」
として、もの作りの心、自然を大切にする心などが失われていると論じ、北風より太陽、物より心としての筆者のエコロジー論を展開しています。
筆者のエコロジーに対するあるべき論は、よく伝わってきます。
また一部に情報不足が散見されますが著者が知り得た情報から論旨を展開され、誠実に書いておられると思われます。
確かに環境問題の本質となるとなかなか複雑で、そこには政治、経済、人々の価値観、流行などが相互に関わるため、混乱し、誤った理解や対策が行われたりといった懸念を抱えています。
リスクマネジメントの視点で論じるならば、リスクのレベルを明らかにすることが大切でそのリスクを許容できるレベルまで減少させることが必要だとすれば、費用対効果などを明確にし、国としての、あるいは、国際的なコンセンサスを創りあげていくことが大切と考えられます。
筆者は、リスクの問題に対して判定を下していますが、ゼロリスクというのはあり得ないので、リスクについてイエス、ノーといったデジタルな判定は、およそ意味がないのではないかと感じます。
判断を下すには、判断基準が必要ですが、筆者のリスクレベルに対する判断基準というのは、よく分かりません。
複雑な環境問題について客観的に総合的に評価するという冷静な視点からずれ、あたかも筆者が善のエコロジールールブックの如く、企業や環境省は、金儲けの亡者であるがごとき特定の一側面からの見方に偏っているように感じられます。





なお本書の概要目次は、以下です。
第1章 エコな暮らしは本当にエコか?
第2章 こんな環境は危険?安全?
第3章 このリサイクルは地球に優しい?
第4章 本当に「環境にいい生活」とは何か
第1節 もの作りの心を失った日本人
第2節 幸之助精神を失う
第3節 自然を大切にする心を失う
第4節 北風より太陽、物より心
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- 2008年07月23日
- エネルギー・環境問題
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