2008-07-29付けでマネジメントシステム規格認証制度の信頼性を確保するために認定機関、認証機関をはじめとする関係者が取り組むべき事項を経済産業省としてとりまとめた「マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保のためのガイドライン」というのが公表されています。
この背景は、マネジメントシステムの認証を取得した企業において認証に係る不祥事が頻発し、制度がこうした不祥事を抑止できていない等の社会的な期待に応えるといった観点からのもののようです。
このガイドライオンは、昨年の9月から経済産業省において、関係者とともに検討を重ねたもので、パブリックコメントを受けてまとめられた内容です。
このガイドラインでは、審査機関に対して制度全体の情報公開の充実や、形式だけでなくパフォーマンスに着目した審査の徹底を進めること等を通じ、制度を社会により分かりやすいものとすることを求めています。
2007年4月13日付けでの日本適合性認定協会による「マネジメントシステムに係る認証審査のあり方」での『マネジメントシステムの有効性の審査』の内容で言及された内容と近似した流れになっています。
この有効性審査は、 ISO/IEC 17021:2006規格(JIS Q 17021:2007 【適合性評価−マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項】)を引用して、『 a) 規定要求事項に適合している。b) 明示した方針及び目標を一貫して達成できる。c) 有効に実施(Be effectively implemented)されている。』として、例えば、以下のように言及していました。
QMSにおいて「品質の推移」を、又はEMSにおいて「環境パフォーマンスの変化」を考慮することなく、規格の規定要求事項に対する一致のみを確認するような審査では、有効なMS審査とは言えません。
この『有効性』については、 ISO/IEC 17021:2006規格が特に新たな観点として取り上げたというものでなくISO 9001:2000規格の序文でも『この規格は、顧客要求事項を満たすに当たっての品質マネジメントシステムの有効性に焦点を合わせている』として『有効性』の言葉は、ISO 9001:2000の主要なキーワードになっています。
組織が自らの裁量で進めている「品質の推移」や「環境パフォーマンスの変化」について、適合性審査において取り上げるとすると、ここが基準とする判断基準となるものがないとISO 9001:2000、ISO 14001:2004の規格要求事項の範囲を超えたバラツキの大きな審査が発生してしまうことが懸念されます。
またQMSにおいて「品質の推移」を、又はEMSにおいて「環境パフォーマンスの変化」を考慮する審査を実施することとマネジメントシステムの認証制度がこうした不祥事を抑止できるように機能することとは、関連性が薄いように思われます。
認証制度について社会に分かり易くするという面や一部の形骸化しているとされる審査について、審査機関や審査員やコンサルタントが社会的ニーズに応えられていないという面で改善すべき点は、多くあると思われますが、企業不祥事が多発している背景には、複雑な背景があると思われます。
そもそも認証の基準となる国際規格の要求事項の規定内容と社会が『マネジメントシステム規格認証制度の信頼性確保』について期待するものとの間で乖離があることが最大の課題とも言えます。
不適合の定義が、【要求事項を満たしていないこと】になりますが、規格の要求事項と組織の規定の要求事項に加えて、『社会の要求事項を満たしていない』として不適合を出すようなもので「品質の推移」や「環境パフォーマンスの変化」や「企業不祥事の芽」といったことについての適合-不適合の基準を明確に定義しておく必要があるように思われます。
この問題を実際に機能させるためには、どのようにして外資系も含めて審査機関を横断する統一基準を設定していくかが大きな課題と思われます。