日本品質管理学会が監修した質マネジメントの深化の観点から監修した新しい『JSQC選書』のシリーズが2008年9月に日本規格協会から発行されています。
本日、紹介するのは、この「JSQC選書 4」になります
SSM(Stress-Strength Model:ストレス −ストレングスモデル)とは、製品やシステムに発生する故障・不具合・不安全などの発生メカニズム(因果連鎖)の知識を、設計・計画時のトラブル予測・未然防止に活用するための構造的に表現するモデルのこと。
本来、ストレス −ストレングスモデルの言葉は、SS曲線(応力−ひずみ)といった材料強度学の材料の破損に関して表現されているが、本書で対象としているのは、設計・計画の要因とストレス要因に基づくトラブルの因果の連鎖を表現するモデルをして開発され、トラブル知識の構造化のために確立されたモデルになります、
<<ポイント>>
トラブル予測・未然防止には、以下の3要素が必要
- 使える知識の整理
- 知識を使っての未然防止の仕組みの整理
- それらを利用できる人の教育
質マネジメント、信頼性工学に関係して、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード・影響解析)、FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、ワイブル解析などのリスク解析、統計手法があり、それらの手法を活用してトラブル予測・未然防止を実現するには、その固有技術に関するトラブルの経験、知識が必要となります。
上記のような観点から、製造業における製品やシステムの故障・不具合・不安全などを取り上げ、設計、生産技術、品質保証、購買、設備保全など製造業の様々なモノづくり業務の「設計・計画」において、トラブルを未然に防止するための知識を整理・活用するSSMによる知識マネジメントについて解説している本を紹介します。
設計者は、多忙な日程の中で、過去に発生した製品の失敗に関する記録などの情報の中から現在、設計・計画している仕様において、どのようなトラブルが起こり得るかをどのように判断したら有用かを知りたいとのニーズがあります。
その解決アプローチとしてSSM (Stress-Strength Model)の手法を解説し、モノづくり業務の設計・計画における未然防止のための知識を整理・活用する方法を説明しています。
本書:「トラブル未然防止のための知識の構造化」です。
「SSMによる設計・計画の質を高める知識マネジメント」との副題が付いています。
本書は、著者:田村 泰彦 氏、ならびに(社)日本品質管理学会の監修にて、2008年9月に日本規格協会より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書は、7章から構成されています。さらに巻末にFMEAとFTAの概要解説が補足として掲載されています。
本書の概要を紹介します。
第1章では、「設計・計画におけるトラブル予測・未然防止」
として、設計・計画におけるトラブル未然防止の重要性の確認に始まり、様々な設計・計画業務や設計・計画プロセスなどを仕様の立案時の流れについて分析した上で設計の質を高める観点から、トラブル予測・未然防止のためには、トラブルに関する知識および対象に関する知識が整備され、設計者もそれを活用できる思考能力を備えていることの必要性を説いています。
第2章では、「トラブル予測・未然防止に必要な知識」
として、「トラブルに関する知識」および「対象に関する知識」について具体的にどのような知識が必要かを説明し、これらの知識の差が予測の差につながるとした上で多数のトラブル情報の例を挙げ、トラブル情報データベースが用意されていたとしても使ってもらえないデータベースの問題点などあげて役立つためのトラブル情報データベースの作成の体系化が必要なことを強調しています。
第3章では、「知識の構造化の概要と意義」
として、知識を構造化することの意義、メリットから、構造化知識の獲得と活用について、トラブルに関する知識運用モデルのフローで説明しています。トラブルに関する知識をうまく活用して設計・計画の質を高めるには、トラブルに関する知識の『抽象化』と『具体化』を繰り返すことが重要としています。
第4章では、「トラブルに関する知識の構造化」
として、トラブルに関する知識をどのように構造化していけば良いかの方法を解説しています。とくに知識の再利用性を考慮するの重要性を説き、種々のトラブル情報からどのように知識の構造化を進めるかについて不具合事例、FT図、FMEA表からの知識の構造化を解説し、 特に本書のテーマでもあるSSM による知識構造化について具体例を交えて詳細に解説しています。
第5章では、「対象に関する知識の構造化」
として、「対象に関する知識の構造化」とは、解析者が、解析ニーズに沿ってトラブルに関する特徴を漏れなく抽出できるように、設計・計画アイテムに関係するトラブルに関する特徴を収集、分類、階層化、相互関連づけし特徴概念の体系を整備することと確認した上で、アイテムの仕様に関する知識の構造化の方法ならびにSSMを利用した対象に関する知識の構造化の方法について解説しています。
第6章では、「構造化知識を活用したトラブル予測・未然防止」
として、設計・開発立案時のトラブル予測・未然防止の進め方について解説しています。詳細には、再発防止チェックリスト、支援ソフトウェア、FMEA、FTAへの活用方法について解説し、さらにその活用の全体像についてまとめています。
第7章では、「知識の構造化によるトラブル未然防止活動の実践」
として、SSMによる構造化知識を活用したトラブル未然防止活動の実践例が解説され、そのメリットについて、1.品質問題撲滅、2.設計プロセス改革、3.技術情報管理、4.技術者スキルアップ の各視点から取り上げ説明しています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書は、製品やシステムの故障・不具合・不安全などを取り上げ、設計、生産技術、品質保証、購買、設備保全など製造業の様々なモノづくり業務の「設計・計画」において、トラブルを未然に防止するための知識を整理・活用するSSMによる知識マネジメントについて事例を交えて詳細に解説しています。
<<まとめ>>
本書は、技術者、技術責任者からとくにトラブル未然防止に関心がある技術管理、システム開発などの関係者から質マネジメントに関心があるビジネスパースンには、おすすめの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 設計・計画におけるトラブル予測・未然防止
1.1 設計・計画におけるトラブル未然防止の重要性
1.2 様々な設計・計画業務
1.3 設計・計画プロセス
1.4 設計・計画時の未然防止の考え方
1.5 トラブル予測思考を構造化してみよう
第2章 トラブル予測・未然防止に必要な知識
2.1 トラブルに関する知識
2.2 対象に関する知識
2.3 知識の差は予測の差を生む
2.4 トラブル情報は宝の山か?
2.5 使ってもらえないトラブル情報データベース
第3章 知識の構造化の概要と意義
3.1 知識を構造化しよう
3.2 知識の構造化のメリット
3.3 構造化知識の獲得と活用のフロー
第4章 トラブルに関する知識の構造化
4.1 知識の再利用性を考えよう
4.2 知識の構造化の進め方
4.3 SSM による知識構造化
4.4 トラブルに関する構造化知識と情報基盤
第5章 対象に関する知識の構造化
5.1 対象に関する知識の構造化
5.2 アイテムの仕様に関する知識を構造化する
5.3 SSMを利用した対象に関する知識構造
第6章 構造化知識を活用したトラブル予測・未然防止
6.1 構造化知識を活用した再発防止チェックリスト
6.2 支援ソフトウェアを用いた構造化知識の活用
6.3 構造化知識を活用したFMEA
6.4 構造化知識を活用したFTA
6.5 構造化知識の活用システム
第7章 知識の構造化によるトラブル未然防止活動の実践
7.1 SSM によるトラブル未然防止活動の実践例
7.2 SSM を活用した様々な未然防止活動の例
7.3 SSM による知識の構造化のメリット
捕足−FMEAとFTA
- 2008年10月06日
- 質マネジメント,JIS Q 9005/9006
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