「漢字の日」にちなんで日本漢字能力検定協会が12日に発表した「今年の漢字」は、「変」でしたが、経済情勢の「変」は、著しく急激で、先日の内閣府の12月の月例経済報告でも、景気の基調判断を前月の「弱まっている」から「悪化している」に下方修正しています。
また財務省が22日に発表している11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、2,234億円の赤字とのことです。
この状況は、第2次石油危機の直撃を受けた1980年10~11月以来、28年ぶりに2カ月連続の赤字とのことです。
輸出は、ほぼすべての地域で減少しており、前年同月比26.7%減の5兆3266億円とのことで、これまで日本経済をけん引してきた外需が崩壊した格好となっています。
世界同時不況と円高により輸出立国の根底が揺らいでいる状況になっています。
ただ我が国の輸出額をGDPで割った輸出依存度は、10~15%で、主要国では、中国、韓国、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアなどよりもずっと低く、米国(約7%)に次いで低い状況にあります。
今日の経済状況は、極めて深刻な状況ですが、見方を変えると国民の生活の観点からは、本来は、円高の方が国民の働きの価値が高まることになる歓迎すべきことのはずです。
そのツケが極めて大きなものとなりますが、国民の知恵でこれまでの誤った軌道を修正し、「変」でこの危機を乗り切って従来型から新しい価値観に立脚した経済構造に変換していく過渡期に差し掛かっていると思われます。
そしてこれまでのように異常な円安誘導による輸出収益を維持していくといったことは困難と思われますが、高度な技術を集約したオンリーワンの製品を提供していく限りにおいて、日本の製造業の将来は、決して暗いものではないように思います。
本日は、「強い工場」をテーマに製造業に精通したスペシャリストたちが、製造業と工場の関係、メーカーの組織構成といった基本的なことから、実際の業務とそこにある工夫や仕掛けといったことについて事例を交えて解説している本を紹介します。
<<ポイント>>
現場視点から「強い工場とは?」に焦点をあてた製造業の解説書。
今日までの日本の成長を支え、実現させた製造業について、工場を中心とした製造業の現場の視点から各業務プロセスを把握し、ますます激化していく競争環境の中で生き残っていくための工場のあり方:「強い工場」の秘密について解き明かしています。
本書:「強い工場のしくみ」です。
「メーカーの基礎知識から設計開発・生産管理の流れまで」との副題が付いています。
本書は、ワクコンサルティング の監修、新堀 克美 氏の編著にて、2008年12月に PHP研究所 よりPHPビジネス新書の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯と表紙カバーの折り返し部には、以下のように書かれてあります。
他業種にも活きるノウハウ満載!
日本の製造業の工夫や仕掛けの数々………
現場を知れば「強い工場」の秘密がわかる!
中国の工場に押されている?
アメリカのように脱製造業へ向かうべき?いやいや、日本の工場は まだまだ強い!
本書は、7章から構成されています。
途中にコラム欄が設けてあったり、ケーススタディを通して詳細な業務の解説があったり、注記による補完解説があったりと製造業について学ぶ上での関連情報についても細かい配慮があります。
最初に就職を控えた学生と、製造業に長年勤めるおじさんの会話を通して、「製造業」と「工場」について、製造業の分類、工場の分類に始まり、メーカーの中での各業務の概要、我が国における製造業の位置づけ、中国の台頭の影響、ブランド等を概観しています。
また改まってメーカーについて少し体系的に分類した上で、メーカーの組織構成は一般的にどのようなもので、各職能、部門毎にその職場ではどのような仕事が行われているかを概観しています。
次いで総合電機メーカーの野武蔵電機という会社の開発センターで多種多様な制御装置(加工機械のスタート・ストップ、加減速、加工速度、位置決めなどを制御する)の開発を担当している岡山君の開発技術者としての仕事はどのようなものかを解説しています。受注設計プロセスの開発プロジェクトの流れ、さらに各種のDR(設計レビュー)の概要から開発担当のキャリアアップまでを解説しています。
そして、総合家電メーカーの工場に生産管理部の資材調達課の係長として生産ラインの負荷調整を考えながら製造指示を作成する役割の梅田君について、生産計画から見たモノづくり、とくに生産管理部の仕事、生産技術部の仕事、工場と在庫管理について在庫の功罪、生産管理部門の生産計画、資材調達、受注管理、在庫管理などの各プロセスの業務、在庫と業務改善、「在庫回転率」と「在庫回転期間」、実地棚卸しの業務、QCD管理について、在庫管理の重要性などについて解説しています。
次に情報システム部門の仕事に焦点をあて、「資材調達業務の電子化支援」のプロジェクトを担当する川中さんの仕事をはじめとした情報システム部門の仕事を解説しています。システム開発のしくみと情報システム部門のIT企画課、システム技術課、システム運用課、業務支援課の各業務の内容を解説しています。
さらにメーカーの営業の仕事に焦点をあて、営業に勤務する斉藤君の業務をはじめ、営業の仕事の特色、商品知識、コミュニケーション、行動型営業、提案型営業、奉仕型営業、課題探求型営業の各営業形態、営業の主要な4つのプロセス、顧客満足の向上、あらには営業のキャリアアップなどについて解説しています。
最後の章では、「強い工場」をテーマに製造業の強さに焦点をあて、考察しています。QCDを着実に実践するたゆまぬ努力の大切さ、エコロジー対応、安全管理、「人にやさしい工場」と5S活動、さらに工場長の管理項目について、QCDに関わる代表的な指標と日常管理、異常対応、問題管理、改善活動など取り上げ解説しています。さらに工場の強さと弱さについて事例を交えて解説し、強い工場の実現のための要点をまとめ結んでいます。
<<本書で何が学べるか?>>
日本の工場にあって中国の工場にはないもの――。
それは“強さ”である。
として本書では、製造業の「強さを生むしくみ」に焦点をあて、工場の基礎的な知識から説き起こし、設計開発、生産管理、情報システム委、営業といった主要な業務がどのように推進されているか、QCDに関わる主要な指標と改善活動などについて実際の業務とそこにある工夫や仕掛けについて事例を交えて解説しています。
<<まとめ>>
本書には、これから製造業に進もうとする人から、実際に工場で働く若手やベテランの方は、もちろん、他業種で働く人にとっても参考になる情報が満載されていて、お奨めの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 「製造業」と「工場」の関係について知っておこう
第2章 「メーカーの組織構成」について知っておこう
第3章 開発技術者の挑戦
第4章 より良い工場を目指して
第5章 仕事を円滑にする情報システム部門
第6章 メーカーの営業はどんな特色がある?
第7章 強い工場のしくみ
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