多年にわたり国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する経営コンサルタントとして、インベストメントバンクやヘッジファンドの手法や金融工学の危うさを知り尽くした著者の堀 紘一氏 が、金融知識がない一般の人にもわかるように「金融危機の真因」を解説しています。
昨今、話題に取り上げられることが多くなって来ている「インベストメントバンク」、「ヘッジファンド」、「デリバティブ」、「CDS」、「CDO」などについての実態をかみ砕いて解説し、世界連鎖恐慌をもたらした正体を解き明かしています。
<<ポイント>>
アメリカ発「金融資本主義」の生んだ鬼っ子の実態の分かり易い解説書。
例えば、CDO(Collateralized Debt Obligation)について、「資産担保証券」と呼び、この『サブプライムローン、ジャンク債、国債、社債、州債、CDSなどの異なったリスクの証券をパッケージにしたデリバティブ』について、『鳥インフルエンザの肉が混ざったミンチ肉』のようなものと喩え、いまや取引停止で紙クズ同然といわれているCDOについて、日本の地銀が実は、そのお得意さまの一つとなっていると述べています。
また世界ですでに6,000兆円市場となり「核のボタンに匹敵する」、「時限爆弾」、「金融大量破壊兵器」とも呼ばれている金融工学流のビジネスが生み出したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap)で、クレジットデリバティブの一種で、債権は、移転することなくそのままにしておいて、信用リスクのみを移転する取引)について、「企業版の生命保険」と喩えています。
そして、その巧みで怪しい利用法として、お互いのCDSを引き受け合う仕組みがある。
CDSを使った帳簿上のマジックが至るところで行われているようだ。
引当金なしで高利回りの社債を保有できる仕組みとして帳簿上は、簿外として目立たなくなっている。
しかし、世の中が不況になると危険な会社のCDSを引き受けたりした会社があれば、連鎖倒産を生むリスクが高いと説いています。
国内のCDSは60兆円だが、インベストメントバンクへ行って各社のCDSを見ると、意外な会社に8~10%といった高利回りがついていたりすると述べています。
本書:「世界連鎖恐慌の犯人」です。
「アメリカ発「金融資本主義」の罪と罰」との副題が付いています。
本書は、著者:堀 紘一 氏にて、2008年12月に PHP研究所より「Voice select」の一冊として発行されています。
金融資本主義(=強欲資本主義)の実態を数時間で理解できる本。
緊急出版ということだが・・・・・
呆然自失!
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
ほんとうの地獄はこれから始まる!
マスコミ報道だけでは、理解できない真実を明かした衝撃の書 緊急出版!
本書は、6章から構成されています。
本書のテーマは、「いま、なぜ世界的な金融危機が起きているのか、その元凶は何か?」、「そしてこれからどうなるか?」、「私たちはどうしたらいいか?」という点。
「エリートもどきの拝金主義者の集団が、今回の元凶なのである。」と述べ、「金融資本主義」が生み出した「虚の経済」の実態について、とくにインベストメントバンクの生み出した「金融工学」の産物になるデリバティブ(派生商品の意味で、株式・債権・商品などの原資産から派生した金融商品。代表的なデリバティブにスワップ、先物、オプションがある。)、金融商品の鬼っ子の「サブプライムローン」、「CDO」と「CDS」のからくり、金融資本主義の「金融異星人」の集団と化したインベストメントバンクとヘッジファンドが金融資本のバランスをどのように破壊してきたかを解き明かしています。
インベストメントバンクのシニアの年収は、数十億円から百数十億円。
金融工学を駆使したデリバティブの世界の商品となるとほとんどの人にその正体がわからない飽くなき金儲けのための虚の世界に踏み込んだ。
そもそもコンピュータを駆使したとして生み出しているものが実態がないものとすれば、マネジャーなりが利益がでて多額の報酬を受け取ることができるということは誰かが損をしているという世界。
ヘッジファンドは、通常は私募によって機関投資家や富裕層等から私的に大規模な資金を集め、金融派生商品等を活用した様々な手法で運用するファンドのことで、ロング(買い建玉)とショート(売り建玉)組み合わせたファンドにより株価が上下どちらに動いても一定の利益を出せるよう設計されたファンド。ヘッジファンドでは、信託報酬に加え、20%程度の成功報酬を取るような運用を毎年、続けるというもので大きなレバレッジをかけて、株だけでなく、原油、金、とうもろこしなどの先物取引まで手を出している。怪しいクズと見なされるヘッジファンドも多く、一部のヘッジファンドは、自分たちだけ一時的な儲けをむさぼってサブプライムローンに投資を続け破綻した。筆者が「庶民の生き血をすする」と形容するヘッジファンドでは、昨年の原油価格の高騰の例に見られるように運用者、出資者だけが儲かって、そのしわ寄せが我々、一般庶民に及ぶとの構図。
筆者は、6章で以下のように述べています。
「いまこそアメリカの国策ともいえる金融至上主義とは決別し、日本人は産業資本主義の考え方で進んで行かなければならない。元来日本人はものづくりが得意で、汗をかくことも厭わず、産業資本主義に向いている。 」
「さらに我々は、産業資本主義的な知恵と汗の結晶で価値をつくりだす社会に転換していく方策を、世界中の国々に対して提示せねばならない。 」
まさに正論で強く共感します。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、現在の世界的な金融危機がどうして起きてきたのか。そして、これからどのように展開するか。これから私たちはどうしたらいいのか。今回の金融危機を引き起こした元凶=「エリートもどきの拝金主義者の集団」の呆れた行状を徹底的に解説しています。
<<まとめ>>
本書では、「金融至上主義」とは決別し、「産業資本主義」を志向すべし」と説いています。
金融知識がない一般の人にもわかるように「金融危機の真因」を解き明かしています。
まとめのところで「会計システムへの提言」、「各企業への提言」、「読者への提言」を述べています。
とくに「読者への提言」では、以下のことを述べています。
- ブルーチップを買え。
- 転職はするな。
- 勉強する。
本書は、金融危機についての本質論に関心があるビジネスパースンには読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 この金融危機は誰にも止められない
第2章 インベストメントバンクとは何者か
第3章 これから待ち構える大惨事の元凶たち
第4章 庶民の生き血をすするヘッジファンド
第5章 「金融異星人」たちの恐るべき価値観
第6章 世界連鎖恐慌の全容と今後の対処法
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