筆者が専門とする『人間の持つ利他性の側面についての社会心理学的な見方を現代の日本社会が直面している種々の問題に当てはめたときに何が見えるか』というのが本書のテーマになっています。


本書の「まえがき」において『見えてきたもの』について筆者は、以下のように述べています。


現代の日本社会が直面している倫理の喪失とは、実は、倫理の底にある「情けは人のためならず」のしくみの喪失の問題だということです

倫理的な行動、あるいは利他的な行動は、それを支える社会的なしくみがなくなってしまえば、維持することは困難です。たとえ他人に親切にしても、それが自分の利益につながらないのであれば、誰も利他的に行動しなくなってしまうというわけです


また「情けは人のためならず」は、無私の心を称揚する武士道的な倫理観とは相容れないとし、以下のように述べています。


「モラルに従った行動をすれば、結局は自分の利益になるのだよ」という利益の相互性を強調する商人道こそが、人間の利他性を支える社会のしくみを作ることができると私は考えています。


社会的ジレンマ、信頼、社会的知性など心と社会の関係について、認知科学、心理学、社会学、経済学など多くの側面から、実験、調査、コンピュータなどを通じて総合的に研究を進めている社会心理学者の著者:山岸 俊男 先生が「偽装国家・日本」といった現代の日本社会の問題を鋭く分析・考察している本を紹介します。


<<ポイント>>


社会心理学的視点からの日本人・日本社会を解き明かした本。


本書の帯にも書かれていますが、本書では、一見、逆説的ながら「武士道」「品格」が日本をダメにすると以下のように論弁しています。


  • 構造改革が「安心社会」を崩壊させた
  • 日本人とは「人を見たら泥棒と思え」と考える人々だった
  • 「渡る世間に鬼はない」と楽天的に考えるアメリカ人たち
  • 実は日本人は集団行動よりも一匹狼のほうがずっと好き
  • 「心の教育」をやればやるほど、利己主義者の天国ができる
  • いじめを深刻化させる本当の原因は「傍観者」にあり
  • なぜ日本の若者たちは空気を読みたがるのか
  • どうして日本の企業は消費者に嘘をついてしまうのか
  • 武士道精神こそが信頼関係を破壊する

本書:「日本の「安心」はなぜ、消えたのか」です。


社会心理学から見た現代日本の問題点」との副題が付いています。


本書は、著者:山岸 俊男 先生にて、2008年2月 に集英社インターナショナルより発行されています。


なお糸井 重里氏の「ほぼ日刊イトイ新聞」の「やっぱり正直者でいこう!」でも山岸先生の講義が取り上げられています。


日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点
集英社インターナショナル
発売日:2008-02
発送時期:通常24時間以内に発送
ランキング:138
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 日本社会の問題点を明確に指摘
おすすめ度5 安心≠信頼
おすすめ度5 歩けますか?
おすすめ度5 「常識」を心地よく覆してくれる
おすすめ度5 納得できる理論をわかりやすく

<<本書のエッセンスの一部>>


本書の帯には、以下のように書かれています。


糸井重里氏、「ほぼ日」で大推薦!

いま読んでいる『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』は

ぼくの気持ちに「ぴたっ!」ときまして、

ひざを打ちすぎて痛くなっちゃうぐらい納得の本です。

「武士道」だの「品格」だのが、どうしてダメなのか、

説得力のある論を提出してくれています。

(「ほぼ日刊イトイ新聞」より)


本書は、10章から構成されています。


所々にユーモラスなイラストをはじめ、図表が挿入されています。


こんな風なことが一般に言われているがそれは本当かといった舌鋒鋭く明快な論旨がデータの裏付けのもとに展開されており大いに共感を覚えます。


「いじめ」や「企業不祥事」の問題について、「お説教」や「こころがけを改めよう」といったスローガンでは、世の中は変わらないはず


人間の心の働きを知り、私たちの心の中にある「人間性」の本質がどのようなものかをきちんと理解していくことが今日の社会で起きている様々な問題を解決する糸口になるとという考え方が本書のロジックの根底になっています。


私たち人間の心は、自分達がおかれた環境によってその働き方を変えるもの」(正に唯物論的な)という考え方が本書の論理の基調になっています。


「日本人らしさ」とは何か?について、


「どうしていいかわからないとき」に「とりあえず」選択される「無難なやり方」をデフォルト戦略とすれば、日本人の場合、自己卑下をすることがデフォルト戦略に相当する。


「日本人らしい」と思われていた謙虚さとは、日本人が本来的に持っている心の性質ではなく、日本の社会にうまく適応するための「戦略」として生まれてきた態度ではなかったか


幾つかの実証実験の結果、自分が置かれている状況が明確であるときには、日本人もアメリカ人と同じような選択をする。


日本の社会では、なぜ「多数派を選ぶ」ことが無難な選択だとされ、それが続けられているのかの原因は、「自分はどうでもいいとは思っているのだが、世間の人はやはり多数派を選ぶ人を好むのだろう」とみんなが思っているから


アメリカ人よりも日本人の方がずっと「他人に足を引っ張られるのがイヤでしょうがない」と考える傾向が強い。


日本人一人一人の心の特性は集団主義でなく、むしろ個人主義的傾向が強いように見える。


「人をみたら泥棒と思え」という日本人に対して、アメリカ人は「渡る世間に鬼はなし」ということわざに近い行動をしている


集団主義社会とは「信頼」を必要としない社会である。



農村でカギをかけずに暮らしていけるのは「環境」による。


集団主義社会で人々が互いに協力し合うのも、裏切りや犯罪が起きないのも「心がきれいだから」という理由ではなく、「そう生きることがトクだから」であろう。


農村のような集団主義社会とは本質的に「信頼」を必要としない社会であるのに対して、都会のような個人主義的社会とは、本質的に「信頼」を必要とする社会である。


安心社会が崩壊したことによって、日本人の多くが「他の人たち(企業)は『旅の恥はかき捨て』をやるのではないか」と心の中で疑い出している。


国民や消費者が企業を信用しなくなればなるほど、企業も国民や消費者を信用できなくなり、それが国民や消費者の不信の念を強めていくという「不信の連鎖」が生まれる。


信頼社会でうまく適応して生きていくためには、多少の失敗は気にせずに、前向きに他人と協力関係を結んでいく努力をしていくことが大事。


大事なのは、正直者であることが損にならない社会制度を作っていくことで、そのような社会制度をきちんと整備できれば、あとは「正直に行動し、他人を信頼することが結局は自分のためになるのだよ」という世の中の現実を教えさえすれば、商人道は、自ずから普及していく。


以上、本書のさわりの一端を紹介しましたが、確かにそうだと共感するロジックが展開されています。


<<本書で何が学べるか>>


本書では、人間の心の働きを知り、私たちの心の中にある「人間性」の本質がどのようなものかをきちんと理解していくことが今日の社会で起きている様々な問題を解決する糸口になるとという考え方に立って社会心理学的視点からの日本人・日本社会について論じています。


武士道」「品格」を声高に唱えても今日の社会問題は解決できるのか?


人間性」の本質から見ていくと「武士道」ではなく、「モラルに従った行動をすれば、結局は自分の利益になるのだよ」という利益の相互性を強調する「商人道こそが、人間の利他性を支える社会のしくみを作ることができると論じています


なぜなら、「武士道」とは「人間性」によらず、理性による倫理行動を追求するモラルの体系であり、そうしたモラルを強制することで社会を維持していくのは、たとえ不可能ではないにしても、極めて大きなコストが必要なためとしています。


<<まとめ>>


本書は、社会心理学の視点から日本社会と日本人の本質について分析し「安心」と「信頼」はどのようなものか等を論じています。


これからの社会について関心がある人には、本書は読んで頂きたい一冊です。


なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 「心がけ」では何も変わらない!
第2章 「日本人らしさ」という幻想
第3章 日本人の正体は「個人主義者」だった!?
第4章 日本人は正直者か?
第5章 なぜ、日本の企業は嘘をつくのか
第6章 信じる者はトクをする?
第7章 なぜ若者たちは空気を読むのか
第8章 「臨界質量」が、いじめを解決する
第9章 信頼社会の作り方
第10章 武士道精神が日本のモラルを破壊する






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