ISO 9001:2008 規格の追補改正に対応して、ISO 9001:2000を対象とした関連の解説書等も相次いで改訂されています。
いずれも評判が高かった書籍ということになると思いますが。
ISO 9001の認証審査についてもISO 9001:2008規格での新規登録や、ISO 9001:2000からのサーベイランス審査や更新審査でのISO 9001:2008規格での移行審査も開始されています。
認証を受ける側の組織にとって、このような審査の場面では、何を聞かれ、またどこまで審査されるのかといった事柄は、大きな関心事にもかかわらず、その関連する情報は、非常に少ないという状況です。
このようなニーズに対応して、本審査の問答集がISO 9001:2000、ISO 14001:2004について発行されていました。
今回、ISO 9001:2008年改正に対応したISO9001の本審査における問答集が改訂され発行されていますので紹介します。
<<ポイント>>
ISO 9001の2008年改正に対応した本審査問答集。
ISO 9001:2008(JIS Q 9001:2008:「品質マネジメントシステム−要求事項」)に対応して、4.1項:「一般要求事項」から8.5.3項:「予防処置」までについて、要求項番号に沿って12のプロセスに区分して、ISO 9001:2008の本審査を想定したQ&Aの問答集が表形式でまとめられ、次いで要求事項の解説と関連する主な質問がまとめてある形式で審査ではどのような問答があるのかが分かります。
また解説を加えた構成にしているため、QMS導入・維持の参考資料としても最終確認のためのチェックリストとしても活用できる内容になっています。
本書:「2008年改正対応 ISO9001本審査問答集」です。
本書は、著者:竹内 繁二 氏、ならびに解説及び編集:糸山 允 氏、ならびに監修:平林 良人 氏にて、2009年3月に日本能率協会マネジメントセンター より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の表紙カバーならびにカバーの折り返し部には、以下のように書かれています。
ISO2008年版の本審査での何を聞かれ、どこまで審査されるのかがよくわかる!
導入・更新の手引き書として、最終確認のチェックリストとしても活用できる!
本書の特徴
- 審査員と受審組織との間で交わされる問答集と解説で構成
- 条文引用形式による解説で規格の要求事項の理解も図る
- 2008年版ISO 9001の改訂内容を解説に随時織り込む
本書は、5章から構成されています。
各章と中項目までのプロセスの区分は、以下のようになっています。
- 第1章:「品質マネジメントシステムに関する問答集と解説」(1.品質マネジメントシステム、2.文書化に関する要求事項)
- 第2章:「経営者の責任に関する問答集と解説」(3.経営者の責任)
- 第3章:「資源の運用管理に関する問答集と解説」(4.資源の運用管理)
- 第4章:「製品実現に関する問答集と解説」(5.製品実現の計画、6.顧客関係のプロセス、7.設計・開発、8.購買、9.製造及びサービス提供、10.監視機器及び測定機器の管理)
- 第5章:「測定、分析及び改善に関する問答集と解説」(11.測定、分析及び改善、12.改善)
なお本書では、ある架空の組立産業や装置産業といった製造会社の組織が、(本書では、その組織図などが掲載されていますが、)ISO 9001:2008による本審査を受けているという場面が想定され、審査員と企業側の従業員との間でのQ&A問答が取り上げられています。
内容は、一ページの中央を区切り左側がQ(審査員の想定質問)で、右側がA(受審組織側の想定回答)との構成になっています。またAのなかでも、微妙なニュアンスを含んだり、特に発展的なQに繋がるようなAなどの留意すべきポイントについて、ゴシックで強調されて記入されています。
また12のプロセス毎にJIS Q 9001:2008規格の要求事項が全文引用され、枠囲みで掲載され、その解説があり、さらに審査の際に質問されると判断される「主な質問」が取り上げられ解説されています。
また本書の冒頭の「解説及び監修にあたって」で解説者及び監修者は、以下のように述べ、今回の2008改正を契機に、QMSが顧客満足の向上に有効に機能しているかという継続的改善の機会とすることの意義を強調しています。
「この問答集では、規格の要求事項に従って、4.1:「品質マネジメントシステムの)一般要求事項」から始まっているが、審査の冒頭では、トップマネジメントに対して、『QMSの導入で”顧客満足は向上”しましたか』、『具体的にどのような成果が現れていますか』と質問するのが本来の姿だろうとし、…。
2008年版の規格の改正は「要求事項の内容には基本的に変更がないから今のままでよい」というのではなく、具体的な成果が得られていなければ、「今までのシステムで何が良くなっているのか}(良くなっていなければ是正処置を行う)、また「このままのシステムだと、いずれ問題が起こるであろう」(起こりそうな問題について予防処置をとる)ということを肝に銘じて行動してみたらいかがであろう」
本書は、はじめてISO 9001の審査を受ける組織には、本審査の問答は、どのようなものかといった事前知識を得ることができ、またすでにISO 9001:2000で認証を取得し、これからISO 9001:2008の移行審査を受けるという組織にとっても審査前の事前チェックリストとして活用することもできる内容となっています。
審査機関によって少しスタイルが異なるとしても審査の基準は、あくまでISO 9001:2008の要求事項で、これに組織が規定した要求事項を加えて、これらの要求事項が満たされているか否かしかありません。
このISO 9001:2008規格の要求事項をしっかりと理解する方法としても本書のようなQ&A方式というのはなかなか良い方法と思われます。
蛇足になりますが、本書は、問答集として受審組織側のAの事例が掲載されていますが、これが正解という性質のものではなく、あくまで回答の事例でこのようなやりとりがあるかもという参考例です。
<<ISO 9001:2008の関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『ISO 9001:2008』に関する本がありますのでご参照下さい。
-
ISO9001:2008(JIS Q9001:2008)要求事項の解説
-
ISO9001新旧規格の対照と解説
-
対訳ISO9001:2008(JIS Q9001:2008) 品質マネジメントの国際規格
-
新ISO9001わかりやすい解釈
-
2008年版対応 ISO9001規格のここがわからない
-
ISO9000入門 改訂版―2008年改正対応
<<本書で何が学べるか?>>
本書により、ISO 9001:2008の本審査でどういったやりとりが行われ、どこまで審査されるのかといった要領が理解できます。
また自社のQMSについて見直したり、さらに2008年版への移行審査に向けての事前チェックリストとしても本書を有効に活用できると思われます。
<<まとめ>>
本書は、ISO 9001:2008による本審査問答に関心がある組織の関係者や、コンサルタント等にはおすすめで役立つ情報が得られると思います。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1章 品質マネジメントシステムに関する問答集と解説
第2章 経営者の責任に関する問答集と解説
第3章 資源の運用管理に関する問答集と解説
第4章 製品実現に関する問答集と解説
第5章 測定、分析及び改善に関する問答集と解説
(広告)