埋蔵金といえば、「相撲取りには、土俵に金が埋まっている。」とよく言われます。
ということで大相撲大阪場所も始まりましたが、この話でなぜか思い出すのが「花筏」(はないかだ)という落語。
この落語のまくらでも大体、冒頭の話がでてきます。
地方巡業の際、人気の大関の「花筏」が怪我で出られず、部屋の親方は、大関に姿の似ている太った提灯屋を替え玉に連れて行く。怪我をしてるということで、見てるだけでいいから、と誘われた提灯屋。よく間違えられるくらい大関に似ている。ところが、巡業先の人にばれてしまい「一番だけでも相撲をとってくれ」と頼まれてしまう。相手は、その土地で一番強い若者。提灯屋は、こわごわ土俵にあがるが、果たしてその結末は・・・。
テレビでも、その昔、「よく全国の埋蔵金伝説が取り上げられ、確からしい情報に基づいて該当の場所を掘り進め何が出るかと気を持たせるものの、結果は何もでなかった。」というのがありました。
またテレビ番組「笑点」の大喜利(おおぎり)で、座布団が10枚たまった時のご褒美に「徳川のご埋蔵金」というのが出たことがあったように思います。
その時は、徳川の名前を入れたぞうきん(雑巾)が5枚で「ごまいぞうきん」という駄洒落。
国会でも埋蔵金が話題に。
さて、……。
「埋蔵金」という言葉には?のイメージもありましたが、本書で取り上げている埋蔵金は、経営に確かなインパクトを与える真摯なもの。
(財)社会経済生産性本部認定経営コンサルタントで、企業ドクター「ドクトル・ホリコン」を名乗り、「社員も経営者も、会社という一つの身体の中で生きている」という考えから、「人を切らない人財育成型コンサルティング」を中心に、短期間収益改善の独自ノウハウを展開中で、「赤字企業を黒字化すること」をライフワークとしている筆者:堀内 智彦 氏が、企業の活動には「多くのムダ」が潜んでいるとし、“ムダ=埋蔵金”と捉え、埋蔵金が入った隠し金庫を探し、その中身を利益に変える方策を伝授している本を紹介します。
<<ポイント>>
企業に潜むムダ=埋蔵金の定義に始まり、発見の仕方から利益へと改善に結びつける方法までを説く本。
著者の多年にわたる経営改革ノウハウをベースに、「どの企業でも売上高の10~15%程度のムダ(損失)がある」とし、そのムダ=埋蔵金を発掘し、改善することにより、生産性を上げ、利益に変えるていく手法を解説しています。
ココで取り上げているムダとは、原材料・設備などのモノに関するムダと、時間に関するムダに大別され、「実際損失と機会損失」との観点から、それらのムダは、経営資源および経営活動のすべてに隠れていると説いています。
本書:「アナタの会社の埋蔵金(ムダ)を利益に変える本」です。
本書は、著者:堀内 智彦 氏にて、2009年1月に日刊工業新聞社より発行されています。





<<本書のエッセンスの一部>>
本書の表紙カバーの下部には、以下のように書かれています。
アナタの会社にも必ずある
埋蔵金(ムダ)の発掘の仕方から利益に変える秘訣まで
伝授します!
本書では、『埋蔵金発掘ツアーへのご招待』とのプロローグから始まります。
「従業員も経営者も一体となってこの『埋蔵金発掘ツアー』に参加し、この難局を乗り切ろう」というコンセプトのもと、「全員が、目的志向で一丸となって改革に取り組む」というストーリーで展開されています。
本書の「はじめに」で筆者は、「なぜ今、このような改革の取り組みが必要か」といった点について、以下のように述べています。
景気停滞が長引き、米国のサブプライムローン問題に端を発した米国の老舗証券会社の経営破綻、それに関連した国内の生保破綻などによる株式市況の大幅下落、金融引締め政策、地価下落、原油高に関連した原材料・資材高騰、そして、政府の信用力低下など経営環境が悪化しています。
(略)
各企業は経営破綻を回避するために、業績回復に必死に取り組んでいますが、とかく収益改善というと、売上高を伸ばす、原価(コスト)を下げるという2点(あるいはその組み合わせ)だけに注力しがちです。なお、「コストカット」と「コストダウン」は識別して定義すべきです。
前者は「原価低減」を主目的とし、一律に実施するコスト低減活動であり、後者は「利益確保」を主目的とし、原価と付加価値(費用対効果)のアンバランスに着目してコストをコントロールするコスト管理活動です。
コスト管理とは、コストのバラツキを再配分するということであって、換言すれば、コストカットを原則としながらも、費用対効果が期待できるならば、部分的なコストアップもありうるということです。
一方、コストといっても固定費は「能力の確保」に必要なものであり、削減しすぎると企業体力がなくなります。
(略)
「不易流行」のごとく、この厳しい時期だからこそ、ストイックにトレーニングを重ねることが、やがて景気回復時期が来たときに飛躍するための準備となります。
本書は、先に紹介したプロローグに続く6つの章から構成されています。
各章の終わりには、『ブレストを活用しよう!』といったCOLUMNがありその章の主要な項目の留意ポイント等を章の補完し、イラストと共に分かり易く解説しています。
『埋蔵金発掘ツアー』では、利益確保の取り組みを航海になぞらえ、社長が羅針盤の管理と進路の確保、営業担当が、エンジンの管理と推進力の確保、購買・製造担当が、船体の管理とメンテや修繕、全授業員が一致して、生産性を向上させ、船内のムダを排除するといった役割を担うといった役割のもと推進するツアーとして『会社の埋蔵金(ムダ)を利益に変える』活動プロジェクトを位置づけています。
ツアーのステップと章との関係は以下のフローのような構成になっています。
ツアーの企画→参加目的の同一化→埋蔵金の定義」(第1章)→「埋蔵金が眠る隠し金庫を探す」(第2章)→「その隠し金庫の扉を開ける」(第3章)→「その金庫の中身を調べる」(第4章)→「埋蔵金を利益に変える」(第5章)
本書のコンセプト等についての概念図などの多数の図表が挿入されていて、分かり易い解説となっています。
ざっと概要を紹介します。
第1章では、「アナタの会社にも埋蔵金が眠っている隠し金庫がある!」
と題して、ツアーの全体像を解説し、ツアーの目的を確認した上で、埋蔵金について利益のもととし、「実際損失」と「機会損失」などのムダを改善することとしています。また埋蔵金が眠っている隠し金庫をどのように探すかの方法について、ブレーンストーミングによる方法、内部監査による方法、業務活動をプロセスに分解してプロセス単位で探査する方法とその具体的な手順を解説しています。
第2章では、「埋蔵金が眠っている隠し金庫を探す」
と題して、業績を定義するとして、埋蔵金が眠っている隠し金庫と業績の関係、財務会計・税務会計・管理会計、業績とはなど企業経営を維持する収益構造について財務的な視点から解説しています。さらに埋蔵金が眠っている隠し金庫を探すとして、マネジメントウエブを作っての隠し金庫の発見のためのマッピングから、売上高・変動費・固定費を要素プロセスに分解したり、固定費の変動費化の視点などによる隠し金庫の「見える化」探索方法を解説しています。
第3章では、「埋蔵金が眠っている隠し金庫の扉を開ける」
と題して、「インプットをアウトプットに…」というISO9000のプロセスの定義の仕方について解説しています。埋蔵金が眠っている隠し金庫がプロセスとのことで、そのプロセスに埋蔵金(ムダ)があるかいなかを確認する方法について解説しています。とくにプロセスの監視・測定、プロセスフローなどのよるプロセスの可視化、さらには、標準化の定義に続いて標準化とスキル評価のための手順書(マニュアル)といったプロセスの標準化の手法と手順がここでは、解説されています。
第4章では、「埋蔵金が眠っている隠し金庫の中身を調べる」
と題して、プロセスの中身を取り出してそのプロセスに埋蔵金(ムダ)があるかないかを判定するための「生産性の測定」とそのための測定ツールについて解説しています。生産性と付加価値の定義にはじまり、生産性の測定について、「付加価値(限界利益)による測定」、「稼働率による測定」、「会計による測定」の方法をそれぞれ解説しています。さらに.パレート分析によるABC管理、ポートフォリオ分析、ラインバランス分析といったQC7つ道具やIE手法を活用する方法についても解説しています。
第5章では、「埋蔵金を利益に変える」
と題して、「プロセス」=「活動または要素」+「管理システム」=「PDCAのマネジメントサイクル」とするプロセス管理システムと通じてのパフォーマンス(業績)の向上の達成の仕組みについて、マネジメントウエブとの関係、プロセス管理シートの作成例、結果の測定、是正処置といった事例を交えて解説しています。さらに「売上」、「固定費」、「変動費」の”業績の3要素”を改善する取り組みのポイント、プロセスの改善ステップと改善のポイント、標準時間の設定、必要条件となる5S活動といった側面について「埋蔵金を利益に変える」改善の取り組みとして解説しています。
第6章では、「実録 埋蔵金発掘ツアー」
と題して、K社とP社を患者に見立てて、症例、診断、治療といった両社に関わる埋蔵金発掘ツアーの状況を解説しています。
さらに「果てしなき航海を乗り切るために」としたエピローグでは、本書で取り上げてきた売上の維持向上を図りながら、損益分岐点を引き下げる取り組みの重要性を強調しています。
また巻末には、『アナタの会社の健康診断チェックリスト』が添付されています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、筆者の多年にわたる経営改革ノウハウをベースに、「どの企業でも売上高の10~15%程度のムダ(損失)がある」とし、そのムダ=埋蔵金を発掘し、改善することにより、生産性を上げ、利益に変えるていく手法を『埋蔵金発掘ツアー』の展開を通じて解説しています。
総合的な会社の改善活動を通して、どこの会社にも隠されているムダ=埋蔵金について、それを発掘し、改善することにより、生産性を上げ、利益に変えていくための具体的な手法が説かれています。
<<まとめ>>
現在、赤字経営で苦戦していたり、業績の伸び悩みを抱えていたり、また、現在順調だが、さらに企業体質を改善したいといった経営問題に直面されている組織の関係者には、おすすめの一冊です。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1章 アナタの会社にも埋蔵金が眠っている隠し金庫がある!
第2章 埋蔵金が眠っている隠し金庫を探す
第3章 埋蔵金が眠っている隠し金庫の扉を開ける
第4章 埋蔵金が眠っている隠し金庫の中身を調べる
第5章 埋蔵金を利益に変える
第6章 実録 埋蔵金発掘ツアー
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1. Posted by 堀内智彦 2011年07月30日 02:11
お礼が遅くなりました。ご紹介ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
企業ドクタードクトル・ホリコンこと堀内智彦