品質工学(QE:Quality Engineering)とは、システムの機能のばらつきを効率的に評価し、システムの技術を最適化するといった田口玄一博士らによって提唱され体系化された技法。
タグチメソッドとも呼ばれています。
品質工学とは、どのようなものかについては、例えば、こちらの品質工学会のホームページなどでも「Learn about QE:品質工学とは?」と題して、品質工学の概要を紹介しています。
本日、紹介するのは、品質工学について親しみやすく説いている啓蒙書です。
本書の「まえがき」で筆者は、品質工学は、難解であるとか、田口玄一博士の話は、難しいといわれる点に関して以下のように述べています。
「確かにSN比の計算やMTシステムの数理は高等な数学や統計学の世界なので難解だ。
しかし、それに惑わされてはならない。
品質工学は、かなりシンプルな理論であるし、その目的や成り立ちを考えるとさらに分かり易い。
(略)
品質工学は、技術者として当然やるべきこと(常識的なこと)を、正確に、合理的に達成するための手法、理論なのである。
(略)
これまでの自分の経験(特に成功体験)や、考え方をベースに理解しようとするから難解なのである。
素直な気持ちで話を聞き、頭の中をまっさらにして論文を読めば、案外簡単に理解できると思う。」
品質工学の重要ポイントについて、品質工学会、関西品質工学会の活動などで議論された多くの事例を交えて『品質工学ってなんやねん?』と親しみやすく解説しています。
<<ポイント>>
品質工学へのとっつきにくさを取り払ってくれる品質工学の啓蒙書。
従来の品質工学の入門書とは、ひと味変わったアプローチよる品質工学の方法論の解説書です。
難しい数理や計算式に惑わされず、品質工学をシンプルに理解するきっかけになるような事例を中心に品質工学とはどのようなものかを説いています。
よし、自分の仕事で品質工学を使って見たいという気にさせてくれます。
品質工学的観点から、“本物の技術者”論を読者に投げかけ、本物の技術者になるための心構えなども説いています。
本書:「品質工学ってなんやねん?」です。
「エピソードから学ぶ品質工学」との副題が付いています。
本書は、関西品質工学研究会の編集(執筆:原 和彦 氏、ならびに芝野 広志 氏)にて、2009年3月に日本規格協会から発行されています。
ハンディな新書版サイズで通勤途上などでも手軽に持ち運べ読むことができます。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
顧客が満足する製品の技術開発を促進する最大の武器
品質工学の重要ポイントを親しみやすく記述
品質工学によって、技術者の仕事に多くの自由
- -----自由な発想
- -----自由な設計
- -----自由な時間
を獲得できる
本書は、大きく、2編(第1編:「Episode 1-32」及び第2編:「これからの技術者と品質工学に期待すること」から構成されています。
また巻末の「おわりに」の後に、「関西品質工学研究会の歩み」として、本書が関西品質工学研究会の15周年記念出版とのことで、これまでの経緯が紹介されています。
全体的に数式は、最小限にして、イラストをはじめ事例等の適切な理解のための多数の図表が挿入され、必ずしも技術者でなくても分かり易い解説となっています。
第1編の「Episode 1-32」では、32の以下のようなエピソードを通じて品質工学の何たるかが解説されています。
「1. 田口先生との出会い」に始まり、「2. 科学(者)と技術(者)」、「3. 品質と機能」、「4. 製品開発と技術開発」、「5. 品質工学と実験計画法」…(略)…「28. 品質工学と曼荼羅」、「29. 品質工学を定義すること」、「30. 品質工学で企業は儲かるのか?―経営者と品質工学―」、「31. 技術者は責任を取らない」、「32. 品質工学をいかに教えるか」といったタイトルが取り上げられています。
ここでは、著者の品質工学との出会いから始まり、著者が品質工学を理解するうえで大いに役立った考え方や研究結果などの事例を振り返りながら紹介するといった展開になっています。
それぞれのエピソードは、3~6ページ程度でまとまった内容になっています。
第2編の「これからの技術者と品質工学に期待すること」では、改めて第2編の冒頭に「はじめに」があるという展開になっています。
第2編では、社会的不祥事の頻発、企業における技術者のあり方、大学の技術者教育などに共通するマネジメント戦略といった様々な社会現象を題材にし、技術者、経営者、大学の教育者等への品質工学からの期待を述べるといった展開になっています。
ここでは、「品質工学への道」、「品質工学の普及を妨げているものは何か」、「リコールゼロに挑戦する品質工学」、「品質工学(タグチメソッド)が戦略といわれる理由」、「市場クレームの94%は設計責任である」…(略)…「消費者の欲しいのは“モノの品質”ではなく,“モノの働き”」、「“信頼性(ロバスト設計)”と“安全設計”は両立する」、…(略)…「学校教育への期待」、「経営者やマネージャーの品質工学」といったテーマを品質工学的観点から取り上げ解説しています。
この中で「“ほんまもんの技術者”とは何か」(-技術者はサラリーマンではない−)
として、以下の8項目からなる『”ほんまもん”の技術者の心構え』について考察しています。
- 技術者は科学者ではない
- “あるべき姿”を考える技術者であれ
- システム設計や“評価技術”に強い技術者であれ
- “ノイズに強い”技術者であれ
- “やり直しをせず”に成果を出す技術者であれ
- “試作レス・試験レス”の技術者であれ
- “コストに強い”技術者であれ
- “胆識”を持った技術者であれ
確かにとうなづき、強く共感を覚える品質工学的に合理的と感じる技術者像が論じされています。
本書を読み通すことでタグチイズムや品質工学への親しみは確実に増すことができると思います。
<<品質工学の関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『品質工学』に関する本がありますのでご参照下さい。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、著者の品質工学との出会いから始まり、著者が品質工学を理解するうえで大いに役立った考え方や研究結果を、32のエピソードにまとめて説いています。
さらに品質工学の本質あるいは技術者のあるべき姿について、様々な社会現象を題材にして取り上げ解説しています。
親しみ深く読み進めるなかで品質工学の基本的な考え方や手法の概要が学べるといった趣になっています。
<<まとめ>>
本書は、技術者の皆さんには、是非とも読んで頂きたい一冊です。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1編 Episode 1-32
1. 田口先生との出会い
2. 科学(者)と技術(者)
3. 品質と機能
(略)
30. 品質工学で企業は儲かるのか?―経営者と品質工学―
31. 技術者は責任を取らない
32. 品質工学をいかに教えるか
第2編 これからの技術者と品質工学に期待すること
はじめに 今,なぜ品質工学か
品質工学への道
品質工学の普及を妨げているものは何か
(略)
学校教育への期待
経営者やマネージャーの品質工学
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- 2009年03月26日
- 品質工学(タグチメソッド)ほか
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