内部監査は、ISOマネジメントシステムの活動の中でも組織のマネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性などをチェックし、改善していく観点において極めて重要な位置づけになります。
ISO9001:2008(JISQ9001:2008)規格の8.2.2項:「内部監査」でも、『品質マネジメントシステムが,個別製品の実現の計画に適合しているか、この規格の要求事項に適合しているか、及び組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項に適合しているか。』といった点が満たされているかを明確にすることが内部監査の目的と規定されています。
しかしこの内部監査が形式的なものに陥ると確実に組織のQMSの形骸化へと進んでしまいます。
本書の「まえがき」の冒頭でもJAB(日本適合性認定協会)のアンケート結果で半数以上の企業が『自社の内部監査は目的を果たしていない』と考えているとしています。
上記の「まえがき」で筆者は、ISO9001における内部監査の役割についてTQM活動との関連も含めて以下のように述べています。
内部監査は問題の発見と改善後の維持に活用し、発見された問題をTQMの考え方と手法で解決していくことが、品質マネジメントシステムを継続的に運用、改善するために大変効果的である。すなわち、内部監査でISO9001とTQMを融合させることでもある。
本書は、『内部監査の実際』のシリーズのISO9001:2008版改正に対応した第3版になりますが、2001年9月に発行のISO9001:2000の発行後から今日に至るまでの間に蓄積された内部監査技術情報等を参考に、以下のようなストーリーにてその内容を見直したものとなっています。
- 内部監査とは
- TQMの監査との違い
- 監査のやり方
- 内部監査のために知っておくべき管理技術
- 内部監査の活用の視点
- 内部監査の指摘事項についての再発防止策の考え方
- これからの監査についての考え方
<<ポイント>>
ISO9001内部監査についての解説の定番書で、規格の2008年版改訂を反映し構成・内容を見直した第3版。
本書は、内部監査とはどのようなものかからはじまり、指摘事項の原因究明と対策はどのように考えたらよいかなど、組織に役立つ内部監査のノウハウを実務的に解説しています。
とくにISO9001に関わる組織のQMSに必要なプロセス等についての問題の発見から改善・維持改善までの活動に役立ち、内部監査の本来の目的が理解できると評価されてきた本です。
本書:「ISO 9001:2008 内部監査の実際」です。
本書は、著者:上月 宏司 氏にて、2009年3月に日本規格協会より発行されています。同社の『内部監査の実際』シリーズの第3版で「Management System ISO SERIES」の一冊になります。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
組織に役立つ内部監査のノウハウを惜しみなく伝授!
ISO 9001内部監査員の定番書,
改訂版発行!
- 2008年版 ISO 9001を反映
- 構成・内容を見直して一層の使いやすさを追求
- 実例を充実
内部監査の形骸化に歯止めをかける
本書は、7章から構成されています。
全体的にフロー図や概念図、またチェックシート、チェックリスト、不適合の指摘の仕方の事例、様式例といった多数の図表を交えて分かり易い解説となっています。
各章のざっとした概要を紹介します。
第1章では、「内部監査とはどのようなものか」
と題して、内部監査の意義を理解する上で基本的な「内部監査がなぜ必要か?」、「内部監査とはどのようなものか」、「内部監査ではどんなことをするか」、「内部監査を行うために何を準備しておくべきか」といった内部監査のABC部分について分かり易く解説しています。
第2章では、「TQMの中での監査の種類と内部監査との関連はあるのか」
と題して、ISO9001の規格で要求されている内部監査についてTQMの中でも実施されてきた方針管理に関わるトップ診断を中心にその目的、手順、役割等を解説しています。
またその他の(PLP監査、製品品質監査、量産立上がり監査、工程監査、標準化監査、特別監査)は、どのようなことを実施するかの概要を解説しています。
さらにISO9001の内部監査とTQMでの監査とは何が違うのかを整理した上で、内部監査とTQMの監査を対比し、両者の融合がどのように役立つかについて説いています。
第3章では、「上手な内部監査のやり方」
と題して、ISO9001の8.2.2項を考慮した内部監査の7つのステップ(1.事前準備→2.監査作業の実施→…(略)…→7.是正処置の実施、8.フォローアップの実施)に沿って、ISO19011の指針に基づき、具体的にどのように監査を進めるかを解説しています。
とくに事前準備で行うべきこと/監査の具体的な進め方/監査後打合せにおいて実施すべきこと/監査報告書に記載するべき内容/プロセスの改善の観点からの被監査部門での監査報告書の検討/フォローアップによる再発防止の確認といったポイント(『組織内で監査を計画し、客観的証拠である業務遂行上の規範(規格、手順書、作業各種ルール。帳票など)及び実作業を調査して、QMSが適正に機能しているかを調査する手順』など)について具体的な事例を交えて分かり易く解説しています。
第4章では、「監査技術を身につけるために知っているとよいこと」
と題して、まず「監査基準であるISO 9001とはどのような内容か」について、ISO9001の制定・改正の経緯から、ISO9001に基づくQMSにおける品質管理、品質保証との関連、ISO9001に基づくQMSとTQMにおける品質保証体制の違いなどを説き、さらにISO9001の基本思想と2008年版における主要な変更ポイントについて解説しています。
次いで、「品質マニュアルは何のために作成するか」として、品質マニュアルの定義からその監査基準としての位置づけやその内容について解説しています。
また審査登録制度の概要を説明しています。
内部監査の積極的活用の観点からISO9001とTQMとの融合化、審査登録機関の審査と内部監査との違い、内部監査で知っていると有効な管理技術として「方針管理」、「日常管理」、「計測管理」、「5S」を取り上げ、内部監査への適用について解説しています。
第5章では、「内部監査をどのように活用するか」
と題して、内部監査の活用について、『ISO9001に基づくQMSの導入から審査登録まで』にすべき活動の概要と、とくに導入準備段階で行う内部監査のポイントについて取り上げ、現状把握のために行う内部監査の方法について事例を挙げてその要領や留意ポイント等を解説しています。
第6章では、「プロセス改善につながる是正処置はどうしたらよいか」
と題して、内部監査の具体例に基づいて、指摘内容の是正の仕方とその徹底をどのようにすべきかを解説しています。
不適合の事例を「1.「意図」に不適合」、「2.「実施状況」で不適合」、「3.「有効性」で不適合」の3つに区分し解説しています。
また観察事項について「原因が現象として現れたプロセスだけに焦点を合わせた指摘だとマネジメントシステムの奥に潜んでいる問題まで踏み込めないときに、被監査側にさらに踏み込んで調査をしてプロセス改善につなげて欲しい場合と考えるとよい」として例を挙げて解説しています。
さらに「内部監査での是正処置とはどのようなことをするのか」/「品質マネジメントシステムがより確実になったかの評価の仕方」/「是正処置の事例」/「是正処置の日常業務への定着はどのように行うか」といった事項についてプロセス改善につながる是正処置の考え方について事例を交えて解説しています。
第7章では、「これからの内部監査について考えよう」
と題して、TQMとの融合も考慮したこれからの内部監査について考察しています。
TQMとはどのようなものかとの確認にはじまり、ISO 9001に対してTQMの活用の仕方や今後の内部監査等に関して、ISO9001とTQMとの融合の接点としての内部監査のあり方など提示しています。
<<ISO 9001:2008の関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『ISO 9001:2008』に関する本がありますのでご参照下さい。
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ISO9001:2008(JIS Q9001:2008)要求事項の解説
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ISO9001新旧規格の対照と解説
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対訳ISO9001:2008(JIS Q9001:2008) 品質マネジメントの国際規格
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新ISO9001わかりやすい解釈
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2008年版対応 ISO9001規格のここがわからない
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ISO9000入門 改訂版―2008年改正対応
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2008年改正対応 ISO 9001本審査問答集
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審査員が教えるISO9001実践導入マニュアル
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、内部監査とはどのようなものかからはじまり内部監査の基本について解説し、ISO9001の有効性を継続的に改善していく観点からのISO9001とTQMとの融合化といった内容を交えながら内部監査により見いだされた指摘事項の原因究明と対策はどのように考えたらよいかなど、組織に役立つ内部監査のノウハウを分かり易く解説しています。
<<まとめ>>
本書は、「ISO9001内部監査員の定番書」として築いてきた評判に違わず、分かり易い内部監査の解説書となっています。
最新の情報を反映して構成・内容を見直されており、とくに組織に役立つ内部監査のための考え方等のノウハウについて具体的に説いています。
本書は、組織の内部監査が形式的であったり、マンネリ化しているのではとの問題を感じている組織の内部監査員をはじめ、改善効果を着実なものとしたいと考えているQMSの関係者には、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1章 内部監査とはどのようなものか
第2章 TQMの中での監査の種類と内部監査との関連はあるのか
第3章 上手な内部監査のやり方
第4章 監査技術を身につけるために知っているとよいこと
第5章 内部監査をどのように活用するか
第6章 プロセス改善につながる是正処置はどうしたらよいか
第7章 これからの内部監査について考えよう
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