ISO9001で規定されている内部監査は、品質マネジメントシステム(QMS)の適合性、有効性等を検証する目的で行われます。
しかし、ISO9001の運営管理に関係して組織の管理責任者が抱える悩みのなかで組織の業種・規模の如何を問わず、一番多いのが内部監査に関する悩みとのこと。
内部監査で見いだされた不適合についての再発防止としてしっかりと実施されるべき是正処置がうまく機能しないためにQMSの継続的改善の活動が進まないといった問題。
継続的改善の仕組みが機能しないとQMSの根幹が損なわれてしまう問題へと波及し、経営にも悪影響を与えてしまうことが懸念されます。
内部監査にまつわる問題としては、内部監査が形骸化し、単なるセレモニー化してしまっているといった問題があります。
また、内部監査員が重要な要求事項が満たされていない事態を検出できなかったり、不適合に対する指摘があいまいなため是正処置の焦点がぼけてしまうといった内部監査員の力量に関わる種類の問題があります。
さらには、指摘事項に対する被監査部門の処置が適切な再発防止策に結びついていないといった問題もあります。
効果が上がる内部監査を行うための内部監査のノウハウについて、中小企業での不適合報告書・35実例を取り上げて専門家が添削・解説している本を紹介します。
ISO 9001:2000に関して内部監査のノウハウを解説した前著:「(こうすれば効果があがる)ISO9001内部監査指摘ノウハウ集」(2007年1月発行:「ISOの本棚」でも紹介))のISO 9001:2008の改正に対応した第二版になります。
ISO 9001:2008の改正に対応して、より適切な事例の内容と解説が改めて収録された改訂版になります。
<<ポイント>>
不適合報告書の事例を中心に実践的に内部監査ノウハウを伝授している本。
なぜ内部監査の効果を上げることが必要かなど内部監査の機能を再確認すると共に有効な内部監査のためのアドバイスから始まっています。
また専門家が真のQMS改善につながる35の是正処置事例を解説し、是正処置事例から発見された組織の弱点とその解決法などを説いています。
またトップ/管理責任者/内部監査員/被監査部門/推進事務局・推進スタッフのそれぞれの立場において抱えている内部監査実施上の悩みを取り上げ、Q&A形式で解決策について解説しています。
本書:「(こうすれば効果が上がる)ISO9001内部監査指摘ノウハウ集〈2008年改正対応〉」です。
本書は、ISO9001内部監査指摘ノウハウ集編集委員会(福丸 典芳 委員長、小谷 博信 委員、斉藤 忠 委員、櫻井 耕一 委員、西野 武彦 委員、本居 哲也 委員)による編集にて、2009年3月に日本規格協会より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
中小企業事例による
内部監査員への応援本!
本書は、第0章から第4章までの5つの章から構成されています。
ざっと紹介します。
第0章では、「品質マネジメントシステムの内部監査の視点」
と題して、ISO 9001:2008の序文を引用し、QMSがどのような考え方でつくられているかについて解説しています。またISO 9000(JIS Q 9000)の品質マネジメントの8原則を解説し、QMSにおける内部監査の位置づけがどのようなものかを説いています。
第1章では、「内部監査の効果を上げる意義と必要性」
と題して、最初にISO9001規格との向き合い方、使い方について解説しています。
ISOの導入前から仕事はしていたし、マネジメントシステムも存在していたとして、自組織を見定めることの重要性、社会、ライバル企業・顧客の変革を把握すること、自組織にマッチしたQMSを推進することの必要性と、ツールとしてのISO 9001の活用の視点、QMSの継続的改善に重要な観点などを解説しています。
また内部監査の機能とその活用について解説しています。
QMSにおける内部監査の目的、内部監査の機能、内部監査の効果的活用のためのポイントなど解説し、内部監査の実際の事例として、以下の3点の問題を取り上げ、どのように解消すべきかを説いています。
- 内部監査で何を指摘してよいかわからない
- 是正処置を行ったはずなのに同じ問題が再発する
- 経営課題、品質目標が前年度未達なのに毎回同じ問題が指摘されるが直らない
第2章では、「真のQMS改善につながる是正処置事例の解説」
と題して、中小企業の「不適合報告書」の35の是正処置事例を取り上げて、『事例の背景』、『解説』としてその不適合報告書の内容についてポイントを掘り下げ、どこが課題でどのように改善すべきかについて専門家が添削・解説しています。
左右の見開きの2ページで左側のページに「不適合報告書」が、そして右側のページが『事例の背景』、『解説』と対比して掲載してあります。
以下の事例が取り上げています。
- 事例1 (4.品質マネジメントシステム,7.製品実現)
- 事例2 (4.品質マネジメントシステム)
- 事例3 (4.品質マネジメントシステム)
- 事例4 (7.製品実現)
- 事例5 (5.経営者の責任,8.測定,分析及び改善)
- 事例6~9 (4.品質マネジメントシステム)
- 事例10 (4.品質マネジメントシステム,6.資源の運用管理)
- 事例11 (5.経営者の責任)
- 事例12 (6.資源の運用管理)
- 事例13 (6.資源の運用管理)
- 事例14 (6.資源の運用管理,7.製品実現)
- 事例15 (6.資源の運用管理,7.製品実現)
- 事例16 (6.資源の運用管理)
- 事例17~20 (7.製品実現)
- 事例21 (7.製品実現,8.測定,分析及び改善)
- 事例22~28 (7.製品実現)
- 事例29~35 (8.測定,分析及び改善)
この解説が本書の中核になります。
第3章では、「是正処置事例から発見された組織の弱点とその解決法」
と題して、先の章の是正処置事例で見いだされた共通した課題を取り上げ、その解説方法について解説しています。
「不適合報告書」の記述方法について、とくに監査基準(計画面も)が不明確な点について、不適合報告書の推奨例を挙げて記述の仕方を解説しています。
また効果的に是正処置を実施するための方法について解説しています。
是正処置の定義に確認にはじまり、第2章の事例で見いだされた『原因の追及が弱い』という課題に関して、是正処置の進め方(目的、9ステップからなる手順)を詳細に解説しています。
とくに4つの事例を通して是正処置の進め方を解説しています。
不適合報告書と是正処置に関わる内部監査員の力量などのチェックポイントをまとめています。
さらに内部監査の着眼点について、内部監査員に対してのISO 9001で規定している規格の意図の理解と内部監査の質問事例について解説しています。
各部門でISO9001に関する要求事項をどのように監査するかのポイントと意図と効果を重視した質問事項の例を挙げて解説しています。
第4章では、「内部監査実施上の悩みとその回答(Q&A)」
と題して、トップ/管理責任者/内部監査員/被監査部門/推進事務局・推進スタッフがそれぞれの立場において抱えている内部監査実施上の悩みを取り上げ、その悩みに対するコメントとその解決策について(ではどうすればよいか?)Q&Aで解説しています。
上記のQMSの関係者毎にどのように考えるべきかといった「まとめ」が枠囲みで整理されています。
<<ISO 9001:2008の関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『ISO 9001:2008』に関する本がありますのでご参照下さい。
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ISO9001:2008(JIS Q9001:2008)要求事項の解説
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ISO9001新旧規格の対照と解説
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対訳ISO9001:2008(JIS Q9001:2008) 品質マネジメントの国際規格
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新ISO9001わかりやすい解釈
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2008年版対応 ISO9001規格のここがわからない
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ISO9000入門 改訂版―2008年改正対応
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2008年改正対応 ISO 9001本審査問答集
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ISO9001:2008内部監査の実際
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ISO9001 新・解体新書
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品質監査の進め方とチェックリスト―2008年版対応
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、組織において効果が上がる内部監査を実施していくためのノウハウについて、ISO 9001における内部監査のアウトプットの一つである不適合報告書の多数の具体的事例などをもとに実務的に解説しています。
ISO9001:2008の改訂に対応した内容となっています。
<<まとめ>>
QMSの有効性の継続的改善に観点において、内部監査についての悩みを感じておられる関係者には、本書から有効な解決策のヒントが得られると思います。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第0章 品質マネジメントシステムの内部監査の視点
第1章 内部監査の効果を上げる意義と必要性
第2章 真のQMS改善につながる是正処置事例の解説
第3章 是正処置事例から発見された組織の弱点とその解決法
第4章 内部監査実施上の悩みとその回答(Q&A)
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