ISO(国際標準化機構)が発行しているハンドブックシリーズの一冊で、
『複数のISOのマネジメントシステム規格、またはそれ以外のマネジメントシステム規格の要求事項を組織のマネジメントシステムに統合化していく方法を解説している手引き書』の翻訳版になります。
架空のJim the Bakerという町の小さなパン屋さんを舞台に、地域企業が世界規模のグローバルチェーン店を展開するまでに成長していく過程での、マネジメントシステム進化と統合化を実現していくステップを具体的にわかりやすく解説している本で、ISOでもベストセラーとなっている本の翻訳書です。
本書の監訳者の吉澤 正 先生が本書の冒頭の「監訳にあたって」で本書の特徴について以下のように要約されています。
- よく構造化されている
- 各種の業種から実際の事例が要点毎に説明されている
- パン屋さんの発展過程とマネジメントシステムの関係が楽しく説明されている
- 組織の現在の経営管理の仕組みを分析し、規格の要求事項とのギャップの分析を重視する
- そして、プロセスアプローチに基礎をおいたシステムアプローチが用いられている
<<ポイント>>
ISO 9001、ISO 14001といった複数のISOマネジメントシステム規格、又はISO以外のOHSAS 18001などのマネジメントシステム規格の要求事項を、組織のマネジメントシステムに統合化する方法を解説している手引き書。
実際に今日、ISO 9001、ISO 14001、OHSAS 18001 などの複数のマネジメントシステムに取り組んでいるもののしっくりいっていないと感じておられるとすれば、本書には、統合化アプローチの課題を解決するための役立つヒントが多く示されています。
本書では、各章のテーマや課題ごとに、実際の企業の成功例を 【要点事例】として紹介しており、実践のステップを分かり易く説いています。
本書:「ISOがすすめるマネジメントシステム規格の統合的な利用」です。
本書は、ISOの編著による原著:「The integrated use of management system standards」についての吉澤 正 先生の監訳にて、2009年4月に日本規格協会 より発行されています。
原著では、事例の詳細を収めたCD-ROMが添付されていたとのことですが、本書では、そのままでは使い勝手が余り良くないとのことからISOの許可のもと、本書ではその添付していないとのことです。
ISOがすすめるとの表題になっていますが、決してISOが統合化を薦めている、あるいは、そのような統合化の規格を作るというようなことではありません。
複数のマネジメントシステム規格の要求事項を組織のマネジメントシステムに統合化する手法の解説書です。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の「序文」で本書で意図している点について以下のように述べています。
本書では、既に統合化アプローチを利用している組織の経験に基づき、さまざまな方法論、ツール、そして実践を整理して提示する。
本書は、さまざまな現場での実例に基づく事例研究をとりあげて、経済環境の極めて異なる多種多様な業界で、規模や成熟度の異なる組織が、どのようにして複数のマネジメントシステム規格の要求事項の適用を統合することに着手しているかを明らかにする。
また統合化の利点について以下のような点をあげています。
- 重複の除去
- 一貫性の確立
- プロセス及びリソースの最適化
- 評価の整理統合
- 維持の削減
- 意志決定の改善
本書は、3つの章から構成されています。
章の下位のそれぞれ節で取り上げられている各テーマは、(「テーマを明確にする質問」→「テーマの概説」→「テーマへの取組み」→『Jim the Baker』→『要点事例』→『実践』)との共通したいわば構造化された形式に沿って取り上げられています。
すなわち、最初に「テーマを明確にする質問」ではじまり、次いで「テーマの概説」では、そのテーマがどのように組織に影響を及ぼし、理解し、実践すべき重要なポイントはどこかといった点について概観しています。
そして、「テーマへの取組み」の中で具体的なアプローチや方法、さらにはツールなどが解説されています。
次いでパン屋さんのJim the Bakerのテーマに関連する取組についての写真、概念図やフロー図等を交えての分かり易い解説が枠囲みにて挿入されています。
さらに『要点事例』において各種の業種の組織がそのテーマについてどのように取り組んだかといった成功事例が紹介されています。
そして、最後に、読者の組織においての適用を促し、支援するためのポイントが『実践』において、まとめられるという構成になっています。
第1章では、「マネジメントシステム」
と題して、組織のマネジメントシステムの構成要素ならびにマネジメントシステムの構成要素の関係性の理解のために基本概念が解説されています。
まず基礎概念をしっかりと理解した上で対処するとの観点から解説されています。
ここでは、組織のマネジメントシステムの構成要素について、「目的及び目標」、「製品,市場,及び顧客」、…(略)…、「プロセス」といったテーマが、マネジメントシステムの構成要素の関係性の理解については、「システムアプローチの理解」、「システムアプローチの確立」が取り上げられ解説されています。
第2章では、「マネジメントシステム規格」
と題して、規格の特定の要求を満たすための能力を組織に提供する(品質、環境、労働安全衛生といった)マネジメントシステム規格の内容と、組織の既存のマネジメントシステムとの関係について解説しています。
いつ、どのマネジメントシステム規格を必要とするかといったマネジメントシステム規格の用途及びニーズについて、そして、なぜマネジメントシステム規格が必要かといった目的及び目標、さらにマネジメントシステム規格の内容について解説されています。
さらにマネジメントシステム規格の要求事項と組織のマネジメントシステムの関係、規格要求事項の組織によるとらえ方及び利用、要求事項の実施といったマネジメントシステム規格の要求事項の適用をテーマに解説しています。
第3章では、「マネジメントシステム規格の要求事項の統合」
と題して、マネジメントシステム規格の統合化の方法とその事例についてプロジェクトアプローチの7つのステップに基づく手順に沿って解説しています。
またマネジメントシステム規格の要求事項と組織のマネジメントシステムを結合においては、構造化、マッピングといった方法について解説しています。
組織のマネジメントシステムへマネジメントシステム規格の要求事項を組み入れる取組みについては、ギャップ分析に基づく手順が取り上げられています。
とくに複数のマネジメントシステム規格の要求事項の統合化を実施する際に組織にとって参考になる事例を多数取り上げてその価値と利点を取り上げると共にその過程で発生する課題や困難についてもどのように克服するかといった点も解説しています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、ISO 9001、ISO 14001といった複数のISOマネジメントシステム規格、又はISO以外のOHSAS 18001などのマネジメントシステム規格の要求事項を、組織のマネジメントシステムに統合化する方法を多数の事例を交えて解説しています。
また架空のJim the Bakerという町の小さなパン屋さんを舞台に、地域企業が世界規模のグローバルチェーン店を展開するまでに成長していく過程での、マネジメントシステム進化と統合化を実現していくステップを具体的にわかりやすく解説しています。
ISO 9001、ISO 14001、OHSAS 18001といった複数のマネジメントシステムについてその複雑さや関係経費の増加といった課題に悩んでいる組織にとっては、本書には、その解決策となる方向が提供されています。
また本書は、マネジメントシステム規格についての啓蒙、学習書としても幅広く活用できるように思います。
<<まとめ>>
本書は、必ずしもマネジメントシステムの統合化というニーズを抱えているかいないかに関わらず、組織のトップマネジメントからマネジャーやスタッフからISOのマネジメント規格に関わるコンサルタント等の関係者には、是非、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1章 マネジメントシステム
1.1 組織のマネジメントシステムの構成要素
1.2 マネジメントシステム構成要素の関係性の理解
第2章 マネジメントシステム規格
2.1 マネジメントシステム規格の適用
2.2 マネジメントシステム規格の要求事項の適用
第3章 マネジメントシステム規格の要求事項の統合
3.1 統合を始めよう
3.2 統合の範囲を決定しよう
3.3 統合を計画しよう
3.4 MSSの要求事項と組織のマネジメントシステムを結合しよう
3.5 組織のMSへMSSの要求事項を組み入れよう
3.6 統合を維持し向上させよう
3.7 組織で学んだ教訓を応用しよう
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- 2009年05月12日
- 統合マネジメントシステム
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