JIS Z 8115:2000:規格(「ディペンダビリティ(信頼性)用語」)では、FMEA(Failure Mode and Effects Analysis、または、Fault Mode and Effects Analysis:故障モード・影響解析,または、フォールトモード・影響解析)について以下のように定義されています。
「あるアイテムにおいて、各下位アイテムに存在しうるフォールトモードの調査、ならびにそのほかの下位アイテム及び元のアイテム、更に上位のアイテムの要求機能に対するフォールトモードの影響の決定を含む定性的な信頼性解析手法」(AN-9)
FMEAは、製品設計の段階で、開発製品の故障を未然に防止するという予防処置的な観点から、設計の不完全さや潜在的な欠点を見つけるために構成要素の故障の原因になりそうな故障モードとその上位アイテムへの影響を解析し、事前に手を打っておくための事前解析手法。
実際的には、ワークシートを用いて解析が行われます。
本日は、このFMEAについて導入・実施・レベルアップを説いている分かり易い解説書を紹介します。
「まえがき」で本書で意図した点について筆者は、以下のように述べています。
「一般企業が、FMEAを導入、実施しようとするに際に、どのように進めたらよいか、多くの疑問に応えられるように、考え方、進め方、効果のとらえ方などを詳細に示してあり、、ガイドブックとして役立つことを意図している。」
<<ポイント>>
FMEA(故障モード・影響解析)の導入・実施・レベルアップのための実践的な解説書。
「まえがき」で本書の特徴点について筆者は、以下の3つを強調しています。
-
IEC 60812:2006 「システムの信頼性のための分析技法-故障モードと影響解析の手順」の定義、実施手順、適用基準、利点・欠点についてのコメント等に準拠している。
- 中堅・中小企業でのFMEAの実施の拡大を意識して、学習する項目や範囲を限定的にしている。業種は製造業に焦点を当てている。
- 中堅・中小企業、特に中小企業の社内事情を踏まえた有効な実施法を提示している。
上記のような狙いのもと、本書では、開発製品への適用のみならず、トラブルの発生に悩む現機種の品質向上、重要障害品の解析、職場の懸案事項の処理といったFMEAの適用範囲を拡大して問題解決をはかるツールとしての活用にも多数の紙面を割いた内容となっています。
本書:「中小企業に役立つFMEA実践ガイド」です。
本書は、筆者:大津 亘 氏にて、2009年5月に日本規格協会 より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)
導入・実施・レベルアップのために
- あらゆる規模の組織(大企業、中堅・中小企業)で活用可能
- 豊富な実施例でFMEAの手順を解説
本書は、8章から構成されています。
また章の終わりには、引用文献が紹介されています。
本文では、多数のFMEAワークシートの事例をはじめ、ブロック図、フロー図などの図表を交えた実践的な解説となっています。
ざっと章を追って概要を紹介します。
第1章では、「FMEAとは」
と題して、FMEAが何のためのツールであるかといったFMEAの概要の解説にはじまり、FMEAがどのようにして生まれ、今日まで発展してきたかの歴史をたどと共にFMEAがどのような目的で活用されるか等について総括しています。
第2章では、「FMEAの基本事項」
と題して、FMEAで用いられる用語の定義、FMEAの目的、達成手段、ワークシートの標準的なフレーム、解析対象のシステムの構成、さらには、ブロック図によるシステム構成の表示法との基礎的な内容について解説しています。
第3章では、「FMEA実施の方法」
と題して、8ステップのFMEAの実施手順について詳細解説しています。
そして、故障モードに対して、「影響のきびしさ」と「発生確率」との組み合わせで致命度を評価するFMECA(Failure Mode, Effects,and Criticality Analysis)の実施手順、工程FMEAの実施手順、工程FMECAの実施手順について解説しています。
またFMEAについて2つの実施例、FMECAについての3つの実施例、工程FMEA、工程FMECAについての4つの実施例を取り上げ解説しています。
さらに実施にあたっての有効なポイントについて、故障モード、評価基準、ワークシート、故障モードから発生原因への展開といった諸点について詳解しています。
第4章では、「FMEA実施のマネジメント」(いつやるのか,どれをやるのか,どこをやるのか,誰がやるのか,いつまでやるのか)
と題して、FMEAを実施するために必要なマネジメントにおいて、求められる原則、制度、遵守項目、さらに心得事項等について、実施の時期(いつやるのか)/実施対象機種の選定(どれをやるのか)/実施の対象部位(どこをやるか)/実施の担当(誰がやるのか,いつまでやるのか)について解説しています。
第5章では、「実施のバラエティを学ぶ」
と題して、FMEAの各種のバラエティに富んだ活用について事例集とともに解説しています。
開発設計段階、製造段階から運用段階に至るまでの各段階での適用について解説しています。
またFMEAの基本思想は、「内在欠陥の顧客への迷惑のゼロ化」、「事後の再発防止ではなく事前の未然防止」にあるので、TQMにおける問題解決、改善のための汎用ツールとしての活用、そして、FMEAに用いる実施フォーマットが多種の形式のものがあることについて説明しています。
さらに「ISO/TS 16949:2002のFMEAシートの様式」(実施例1)から「方針FMEA」に至る17の実施例について解説しています。
第6章では、「FMEA、FMECA化で品質保証を強化する」
と題して、FMEA、FMECAを品質保証の手段としてさらに強力に活用する観点からの取組について解説しています。
中堅、中規模の製造業2社の品質保証体系図でのFMEAの組み入れ、QC工程表+工程FMEA、現象・原因データのマトリックス解析によるFME(C)A化、T型マトリックス図による工程FME(C)A化、開発段階の設計トラブルを低減させるT型マトリックス解析とFMEAといった取組について解説しています。
第7章では、「他の手法と併用して実施効果の拡大をはかる」
と題して、FMEAについて他の手法と併用して更に有効な効果を得るための方法を解説しています。
FMEAとの併用活用事例の多いFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、ETA(Event Tree Analysis:事象の木解析)、QFD(Quality Function Development:品質機能展開)の3つのツールを取り上げ、それぞれのツールの概要、実施例、更には、FMEAとの併用事例といった内容で解説しています。
第8章では、「実効性を上げるために」
と題して、本書の全体について総括する内容となっています。
FMEAの効果の見方、とらえ方、FMEAの限界と欠点等をまとめた上で、FMEAの効果を総括し、実効性を上げるための着眼点や、チェックリストを用いての留意事項等を整理し、まとめとしては、FMEAを自社に適したスタイルにカスタマイズし、最適化を行って活用すること意義を強調しています。
とくにFMEAの活用にあたって筆者は、FMEAをテクニックとしての理解だけでなく、そこに込められた顧客第1のTQM思想と共に使用して欲しいと再三にわたり強調しています。
<<FMEAの関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『FMEA』に関する本がありますのでご参照下さい。
<<本書で何が学べるか?>>
本書は、FMEA(故障モード・影響解析)の導入・実施・レベルアップのための実践的な解説書としてFMEAの基礎的な事項から実務的な実施手順、効果的な活用までを多数の実施例を交えて分かり易く解説した優れたガイドブックです。
<<まとめ>>
FMEAの活用に関心がある関係者には、本書は、お薦めの一冊です。
なお本書の主要目次は、以下の内容です。
第1章 FMEAとは
第2章 FMEAの基本事項
第3章 FMEA実施の方法
第4章 FMEA実施のマネジメント
(いつやるのか,どれをやるのか,どこをやるのか,誰がやるのか,いつまでやるのか)
第5章 実施のバラエティを学ぶ
第6章 FMEA、FMECA化で品質保証を強化する
第7章 他の手法と併用して実施効果の拡大をはかる
第8章 実効性を上げるために
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