ビジネスの基本であるマーケティングの知識を厳選してわかりやすく解説している本書の冒頭の『不思議なマーケティング-「厳しい時代」の怪現象』と題した「はじめに」で筆者の野口 智雄 教授は、以下のような論を展開しています。
「100年に一度の津波」と呼ばれる大不況の厳しい環境下で、数少ない処方箋の一つと考えられているのが低価格戦略で、確かにこれは消費者の財布のヒモが堅い不況下で致し方のない取組とも言える。
しかしながら、任天堂の「WiiFit」のように低価格に走ることなく大ヒットを飛ばした製品もある。
また東京ディズニーリゾート、日本マクドナルド、ファーストリテイリング(ユニクロ)など過去最高レベルの業績を上げたところもある。
さらに米国の三大自動車メーカーの凋落を尻目に、フェラーリやロールス・ロイスといった超高級車が売れるといった不思議な現象が起きていることに着目した上で、『マーケティング』に関して以下のように述べています。
「今のような厳しい時代にも、市場のニーズをきちんとつかみ、それを製品、サービスという形で具現化し、的確なプロモーション活動や周到なチャネル構築を行っているところは繁栄しているのです。
しっかりとした『マーケティング』に取り組んでいるところは負けていないのです。
筆者は本書において、この厳しい市場環境の下で組織が存続し、勝ち残っていくためには、マーケティングに関してどのようなマインドをもち、どのような取り組みを行えば良いのかを明らかにしたつもりです。
無論、本書は入門書であり、重箱の隅をつつくようなテクニカルな細かな議論はしていません。
ですが、マーケティングの基本として押さえておくべき要所は網羅的に解説したつもりです。」
<<ポイント>>
実践的マーケティングの基本の考え方や方法を説くマーケティングの入門書。
「そもそもマーケティングとは」といった「マーケティング・マインドを身につける」ための基本から説き起こし、
- 「マーケットをつかむ方法」
- 「製品を魅力的に見せる戦略」
- 「価格をどのように決定するか」
- 「効果的なプロモーションの方法」
- 「顧客のアクセスを最適にするチャネル戦略」
といったマーケティングの流れについて、「4P」「SWOT分析」「ポジショニング」「チャネル戦略」……といったキーワードの解説も交え、「使える」マーケティング知識を厳選してわかりやすく説いています。
本書:「一冊でわかる!マーケティング」です。
「今さら人に聞けない「商品が売れる仕組み」とは?」との副題が付いています。
本書は、著者:野口 智雄 教授にて、2009年6月に PHP研究所 より、同社の「PHPビジネス新書」の一冊として発行されています。

<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯ならびに表紙カバーの折り返し部には、以下のように書かれています。
「売れない!」の解決策は、意外と基本的なことだったりする
そろそろ身につけておきたい、マーケティングの基礎知識
- 「4P」
- 「SWOT分析」
- 「ポジショニング」
- 「チャネル戦略」
―――あなたはいくつ「きちんと」答えられますか?
本書を読んで「知識武装」を!
本書は、6章から構成されています。
各章の終わりに「コラム」欄があり、その章に関連した身近な「ある歯科医院での苦い思い出-マーケットインの重要性」といったトピックスが取り上げられています。
章を追って概要を紹介します。
第1章では、「マーケティング・マインドを身につける」
と題して、マーケティングとはどのようなものでセリング(販売活動)との違いはどのような点にあるか「T型フォード」のライフサイクルの事例をもとに説くというところからはじまっています。
そして、マーケティングコンセプトは変化するとして、10項目の誤ったマーケティング志向コンセプトの質問を上げ解説しています。
またニーズ、ウオンツ、シーズの見つけ出すこと、顧客志向、顧客満足がなぜ重要か、一般的な6ステップよりなるマーケティング計画など解説しています。
さらに4つのP(製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、プロモーション戦略(Promotion)、チャネル戦略(Place))の組み合わせのマーケティングミックスに関わるマーケティング戦略について高機能肌着の例をもとにどのようなものかを解説しています。
第2章では、「マーケットをつかむ方法」
と題して、大不況の中でも環境の変化に創造的に対応している会社は巨額の利益を上げていると説き、どんな環境に置かれているかを把握するためのSWOT分析で外部環境から「機会(Opportunities)」、「脅威(Threats)」を抽出し、内部環境から「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」を明確にする方法を解説しています。
また市場を区分してターゲットを絞り込むマーケット・セグメンテーション、ターゲットモデルの代表的人物像を具体的にイメージするためのターゲット顧客のプロファイリング、自社の製品・サービスの位置を知るポジショニングの方法などを事例を上げて解説しています。
さらに一次データと二次データを活用してのマーケットの把握、アメリカでのカップ麺のビジネスの際の事例を挙げてマーケティング・リサーチの方法、マーケットリサーチのための「1.状況分析と問題の明確化」から「6.報告と追跡」までの6つのステップでの進め方といった内容を解説しています。
第3章では、「製品を魅力的に見せる戦略」
と題して、マーケティング活動の基本になる製品の特性についてモノのよさ以外にも不可欠な要素があるとの解説からはじまっています。
次に消費者にとって魅力的な商品を作り出すための「1.アイデアの収集と開発」から「6.市場導入」に至る6つのステップについて解説しています。
そして製品の差別化の切り口、計画的陳腐化による買い換え促進、製品ラインと製品ミックスの考え方、製品のライフサイクルの4つの段階(導入期、成長期、成熟期、衰退期)に見合ったとるべき戦略、ブランドの確立・強化に関わるブランド・マネジメントの考え方、ブランド・エクイティ(ブランドの資産価値)を高める方法といった事項について事例を交えて解説しています。
第4章では、「価格をどのように決定するか」
と題して、価格決定の「コスト」、「需要」、「競争」との関わりの解説にはじまります。
そして心理的価格設定法に基づく価格決定法、新製品において対照的な「高い価格」と「市場浸透価格」の設定の二つの価格戦略、顧客の購買を促すために同一製品でも異なる価格をつけて売る幾つかの区別的価格設定の方法、価格補完政策としての「リベート」の種類とその内容等について解説しています。
第5章では、「効果的なプロモーションの方法」
と題して、販売促進のための広告、パブリシティ、セールスプロモーション、人的販売などさまざまなプロモーション活動について仮想の商品を販売する事例を取り上げ解説しています。
またプッシュ戦略とプル戦略の違い、消費者とのコミュニケーション・プロセス、広告クリエーターがつくり出す広告クリエイティブの各種方法、比較広告の方法とそのパターン、パブリシティの種類、ブログや口コミの活用、「オマケ」など用いてのセールス・プロモーションの方法、訪問販売時のパーソナル・セリングの主要なものといった事項について事例を交えて、解説しています。
第6章では、「顧客のアクセスを最適にするチャネル戦略」
と題して、販売チャネルについて組織が最適のチャネルを構築する上で考慮しなければならない要素(製品の単価、製品の技術、販売能力、…他)についての解説からはじまります。
そして開放的、選択的、特約の3パターンのチャネル政策とそのメリットとデメリット論じ、チャネル構築のプロセスで特に留意すべきターゲットの顧客の明確化といったポイントを解説しています。
また「系列化」により流通業者をコントロールする垂直的流通システムについての主なタイプに関して論じています。
また中間流通業者である卸売業者が介入した方がなぜ価格が安くなるかといった提起と併せて、卸売業者が果たす重要な機能とマーガレット・ホールの「取引総数最小化の原理」と「不確実性プールの原理」について解説しています。
さらにSCMによる市場の不確実性への対処の方法とVMI(Vendor-Managed Inventory)、各組織や全供給プロセスを「価値連鎖」と考えるバリュー・チェーンの構築の考え方のチャネルへの適用といった事項について解説しています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、ビジネスパースンが押さえておくべきマーケティングの基本について多数の事例解説を交えて分かり易く説いています。
<<まとめ>>
本書は、マーケティングについてこれから学ぼうとする人や、今一度、マーケティングの基本を押さえておきたいとのニーズを持つビジネスパースンにお薦めの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 マーケティング・マインドを身につける
第2章 マーケットをつかむ方法
第3章 製品を魅力的に見せる戦略
第4章 価格をどのように決定するか
第5章 効果的なプロモーションの方法
第6章 顧客のアクセスを最適にするチャネル戦略
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