ベストセラーとなった筆者:石浦 章一教授の前著の「いつまでも「老いない脳」をつくる10の生活習慣」(「ISOの本棚」でも紹介)では、今のあなたの生活で何歳まで生きられるかといった「ネイチャー」に掲載されたチェックテストなど紹介し、設問の中味など解説した上で、脳も体も健康で長生きできるかどうかは、10の生活習慣で決まると述べ、以下の10の生活習慣とそのすすめについて解説していました。
- 週に2~3回以上、1回30分以上運動をする
- 食生活のバランスに気をつけ、食べ過ぎない
- ストレスをうまく受け流す
- 人とのコミュニケーションのある生活
- 好奇心をもって、新たなことに挑戦する
- 学習習慣を続ければ記憶力は保たれる
- 目標を持つ
- 自分に報酬を与える
- 本を読む習慣を維持する
- 意識的に段取りをする
さて、「いつまでも「老いない脳」をつくる10の生活習慣」の続編の位置づけとなる本書では、『脳をうまく活発に働かせる』ことがテーマになっています。
脳が喜ぶように勉強や仕事ができるようになれば、楽しく勉強や仕事に取り組むことができるはずで、勉強や仕事の能率があがり効果が上がるだろうとの考え方に立って、どのような生活習慣を重ねていくと『脳をうまく働かせる』ことに結びつくかについて筆者の経験と専門の分子認知科学関連の知見などをベースに興味深くそのための生活習慣のすすめを説いています。
<<ポイント>>
脳をうまく活発に働かせるための生活習慣について説く本。
生まれつき備わった能力の違いといったこと以上に、人の能力は後天的なもので日頃の生活習慣の影響が大きいと説いています。
「頭がいい人」「仕事ができる人」というのは、日々の積み重ねによって脳の働きを変え、さらに能力:「脳力」(脳の持つ総合的なパワー)を向上させているとし、
脳の働きにかなった勉強法・仕事術はどのようにしてつくりあげていくか、
また脳が喜ぶ生活習慣とはどのようなもので、
「喜んで働く脳」をどのようにつくるか、
さらに年代別の学習法について、どのような着眼点で進めたらよいか等を説いています。
本書:「「脳をうまく働かせる人」の習慣力 」です。
本書は、著者:石浦 章一 教授にて、2009年7月にワックより、「WAC BUNKO」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯ならびに表紙カバーの折り返し部には、以下のように書かれています。
「脳力」は生まれつきよりも環境が大きい!
ほめると、脳は活性化する!
目標を設定すれば、脳はやる気になる!
これで、仕事や勉強で大きな差がつく
誰でもできる「脳力」革命!
- 習慣力を活用して集中力をつける
- 練習を繰り返すことで脳は効率よく働く
- 知能が高い人の脳の働き方、低い人の脳の働き方
- 朝型・夜型は関係なく、規則的な生活で脳が働く
- プレッシャーを活用して脳力を伸ばす
- 幅広い読書が脳の底力になる
習慣が脳を変え、「能力」を高める!
勉強でも仕事でも何でもそうですがまずは嫌いにならない。できれば好きになることが大事なのです。「下手の横好き」などといわれますが、下手であってもそれを続けていけば、明らからに脳は変わって、それなりに上手になるのです。
本書は、『脳の働きにかなった勉強法・仕事術』をテーマとした基礎編の第1部(第1章~第6章)と『脳が喜ぶ生活習慣』をテーマとした応用編の第2部(第7章~第9章)とから構成されています。
章を追って概要と印象的な箇所をピックアップして紹介します。
第1章では、「ほめればほめるほど、脳のなかの「報酬回路」を刺激する」
と題して、勉強や仕事に上達するためには習慣化が大事で、習慣づけのためにはそれをやることが好きになることで、好きになる早道は人からほめられることと説いています。
ほめられるとドーパミン神経(「報酬回路」)が刺激され、この回路にドーパミンが流れ快感を感じることでそれを繰り返してやるようになる。
ほめるのには結果ではなくプロセス、努力をほめることが大切とし、自分でそれをやり一区切りついたところで何か自分に褒美を与えるというのも重要と説いています。
第2章では、「意欲を持てばドーパミンが働く」
と題して、好き嫌いに関わっている脳は、大脳辺縁系の扁桃体が関わっているという話題にはじまり、ネズミでのドーパミンに関する実験例を紹介し、意欲を持てばドーパミンが働くとの生理現象との関わりを科学的に解説しています。
適量のドーパミンとの観点から「意欲的に何かをする」→「ドーパミンの働きが適度に活性化する」→「さらなる意欲がわいてくる」といった循環をつくるというように考えるのがよいだろうとしています。
第3章では、「脳内物質がやる気をつくる?」
と題して、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの脳内物質とやる気との関連についてうつ病などとの関わりを解説し、運動や学習など日常の行動の範囲内で脳内物質を健康なレベルに維持することが大切と説いています。
好奇心の強さについてドーパミンとその受容体(レセプター)の一つであるD4との関係についての興味深い話題を紹介し、また、生まれつきの性格傾向と脳内物質との関係について以下のような関係があること等を解説しています。
- 「好奇心」:ドーパミン
- 「神経質」:セロトニン
- 「人柄が温かい」:ノルアドレナリン
結論的には、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3つの脳内物質は密接に関連し、「やる気」については、ドーパミンだけでなく、上記の3物質が密接に関わっていると考えられるとしています。
第4章では、「集中力がつく脳の喜ばせ方」
と題して、集中力とはどういうものかと脳科学の観点から集中力に焦点をあて、ドーパミンなど脳内物質との関わり、やる気を起こし持続させるための習慣とはどのようなものかなどについて言及しています。
将来の見返り(報酬)を考える、繰り返し習慣化すること、コーヒー・昼寝・甘いものの効用など脳が集中できる環境づくりなど説いています。
第5章では、「記憶力を高める脳活用法」
と題して、頭がいいことの要素の一つになる記憶力について記憶力を高め、記憶力の良い状態を維持するための心がけなどを説いています。
「何かを覚える能力」「その記憶を保持する能力」「必要に応じてその記憶を引き出す能力」が記憶力の要素とし、記憶力の測り方、海馬の「エピソードや知識を短期間、一時的に記憶しておいて、それを大脳皮質の長期的な記憶に移していく」との働きなどを解説し、記憶がしっかりと定着されるためには睡眠が重要であるとしています。
脳のつながりが良くなると記憶力が高まる、グルタミン酸等の神経伝達物質の働き、女性ホルモンのエストロゲンの働き、タバコの影響、暗記などに対する繰り返しの効果などを解説しています。
第6章では、「脳をうまく働かせる人が頭がいい」
と題して、IQの高い人低い人の脳の使い方の違いにはじまり、練習を繰り返すことで「脳力」はパワーアップできるとし、生まれつきよりも環境が大きいと説いています。
生まれつきの頭の良さ、勉強や仕事の能率を上げることなど遺伝子の関わりなどを論じ、育ってくる環境のなかでどのような使い方をしてきたかの影響が問題としています。
第7章では、「脳が十分に働くための生活」
と題して、脳が生き生きと十分に働く生活習慣の要件について考察しています。
この章からが、第2部の実践編となります。
朝型・夜型について脳への影響では関係はなく、規則的な生活をおくることが脳が働く要件とし、徹夜は脳の働きを悪くする、睡眠時間は7.5時間が理想、身体を使えば脳にも良い影響を及ぼすと説いています。
定期的な週2、3回の運動と、ウオーキングの効用、炭水化物も含めバランスの取れた食事、腹八分目、料理をきちんとつくることの効用、ストレスとそれに対する解消法の楽しみを持つことなど説いています。
第8章では、「「喜んで働く脳」のつくり方」
と題して、「喜んで働く脳」をつくるための考え方を説いています。
苦手、嫌だとの思いこみを変えること、復習の習慣、脳を働きやすくするには好きなこと得意なことから着手するといったこと、プレッシャーをうまく活用する、目標と締め切りを設定すること、読書週間、読書内容についての話合い、自分独自の楽しみを見つけるなど柔軟でタフな脳の使い方など説いています。
第9章では、「年代別、脳が喜ぶ学習法」
と題して、二十代の勉強法(5項目)、三十代の勉強法(3項目)、四十代、五十代、定年退職後といった年代別に脳が喜ぶ学習法のツボを説いています。
最後に以下の10のポイントを喜んで働く脳のための習慣術としてまとめています。ぶれない習慣術がまとめられています。
- 規則的な生活をする
- 7~8時間の睡眠
- 週に2、3回の運動
- 食事のコントロール
- ストレスをうまく受け流す
- 「嫌だ」「苦手だ」の思いこみを変えるためには、時間を決めて復習する習慣とする
- 勉強、仕事は好きなことからはじめる
- 少し上の目標を目指し、自分に適度のプレッシャーを与える
- 目標をきちんと設定する
- 読書をする、そしてその内容を人に話したり、ポイントをメモしたりする
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、脳力を向上させるための有効な習慣について脳科学のサイエンスの知見を交えて分かり易く説いています。
オーソドックスにまた極めて説得力に富んだ展開となっています。
<<まとめ>>
能率的で効果的な仕事術や学習法に関心がある人は、本書を是非、読んで下さい。
なお本書の目次は、以下の内容です。
プロローグ 勉強、仕事で脳が喜ぶ習慣をつける
第1部 基礎編 脳の働きにかなった勉強法・仕事術
第1章 ほめればほめるほど、脳のなかの「報酬回路」を刺激する
第2章 意欲を持てばドーパミンが働く
第3章 脳内物質がやる気をつくる?
第4章 集中力がつく脳の喜ばせ方
第5章 記憶力を高める脳活用法
第6章 脳をうまく働かせる人が頭がいい
第2部 実践編 脳が喜ぶ生活習慣
第7章 脳が十分に働くための生活
第8章 「喜んで働く脳」のつくり方
第9章 年代別、脳が喜ぶ学習法
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- 2009年07月31日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ | 脳科学
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