脳機能学者としての脳と心に関わる研究成果を活かし、「洗脳」、「自己実現法」などに関する多くの書籍を驚くべきスピードで相次いで発行している苫米地 英人氏が、初の新書を発行しています。
苫米地氏の今回のテーマは、自らも次世代映像メディアと見込まれる「キーホールTV」の開発・提供、メディアと政治をウオッチする雑誌の『サイゾー』を発行したり、TV局との関わり深く活動していますが、それらの経験をベースにメディアの視聴者への影響について脳科学の観点から論じたもの。
「テレビという「洗脳装置」」と題した本書の『はじめに』で、『プロダクト・プレースメント』と呼ばれる広告手法:(番組内でさりげなくスポンサーの商品を映し出し視聴者には宣伝広告だと気付かせずに商品の性能や特徴をアピールする)広告手法が増えてきているとし、テレビによる洗脳について以下のように述べています。
「おそらく番組の制作者もスポンサーもそこまで意図していないと思いますが、脳科学的な観点から考えれば、プロダクト・プレイスメントという広告手法は「洗脳そのもの」といっても過言ではないでしょう。
現代の日本人は、受けても送り手も気付いていない、こうした「テレビによる洗脳」にこどものことからずっとさらされ続けています。(略)
本書は、そうした私自身の経験をもとに、「メディアと脳」という視点から、どうすればメディアの「洗脳」から解放され、自分自身の人生を取り戻すことができるのか、できるかぎりわかりやすく説明することを心がけてまとめました。(略)
他人という「ドリームキラー」の洗脳から脱して、本来の自分の目標に邁進する人が、本書をきっかけに一人でもふえることを願います。」
<<ポイント>>
脳機能学者の苫米地 英人氏が洗脳メディアの危険性と他人に影響されない本来の自分の生き方を説く本。
本書では、
テレビによる洗脳影響がどのようなものかについて、
あなたは知らない間に毒されていませんか
と説き、
自分の真のゴールに向けての生き方について自己イメージ・心を論じ、
洗脳された価値観の世界から離脱し、真に自立した生き方をすることを説いています。
本書:「テレビは見てはいけない」です。
「脱・奴隷の生き方」との副題が付いています。
本書は、著者:苫米地 英人氏にて、2009年9月にPHP研究所より「PHP新書」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯ならびに表紙カバーの裏面には、以下のように書かれています。
あなたの脳は 知らぬ間に 毒されている!
脳機能学者が教える「だまされない生き方」
いま明かされる洗脳メディアの恐怖
- 視覚情報は最強の洗脳媒体
- テレビによく出る政治家が当選するのはなぜか
- 日本のテレビは3秒遅れで放送される
- メディアは株式上場してはいけない
- 英語力がメディアによる「洗脳」から身を守る
- 自殺者増加の一端はテレビが担っている
- 視聴率真っ赤なウソ
- 「空気を読め」は差別のシステム etc
日本人はなぜテレビに洗脳されるのか。CMに映し出される魅力的な商品、芸能人が着ている華麗なファッション、著名人が住んでいる高級マンション、有名店の豪勢な料理……それらはホントにあなたが欲しいモノですか? 幸福な生き方ですか?
「空気を読め」と画一的な価値観を強制してくる最強の洗脳装置を前に、知らぬ間に自分の心が書き換えられる原理とは。だれもが放送局になれる「キーホールTV」の開発・運営にも携わる著者が、日本のマスメディアの危険性と裏事情に鋭く斬り込む。奴隷解放の人生指南。
本書は、3章から構成されています。
印象的に感じた箇所など少し紹介します。
重要なのは、このホメオスタシスが脳の進化により外部の環境変化に対応するだけではなく、意識の内部変化にも対応することになっている。(略)
人間は、カレーを食べれば「辛い!」と思ったり、恋人と楽しい時間を過ごしてるときは「幸せだなあ」と感じるというように、つねに意識の中で「表現」しています。これを心の内部の表現という意味で「内部表現」と言います。(略)
洗脳という行為をひと言で説明するなら、人間の内部表現を書き換えることによって「ホメオスタシスの状態を変える」こと。(略)
テレビは、私たちの心の中に、臨場感を感じる空間をつくりだします。そしてその空間に映像と音声を介して絶え間なく情報を書き込んでいく。その情報が私たちの内部表現に変化をもたらし、自分が感じている空間の認識を変えさせて、結果的に自分自身をも変化させてしまう。
だからこそテレビが最高の洗脳装置なのです。
安易な英語礼賛を支持しようというのではありません。しかし、日本人もこれからますます英語とつきあわざるをえなくなります。それを感じさせたのもインターネットの普及です。共通言語としての英語は、絶対的なコミュニケーションツールとなりつつあります。(略)
そして日本人が国外のニュース興味がないことの大きな原因は、英語を知らないことです。私は毎日国外のニュースに目を通していますが、日本のメディアではほとんど報じられていないことをそこでたくさん知ります。(略)
これからますます国際化が進むなかで、英語の力は必須となっていくでしょう。私は、日本の国会議員には、TOEFL(インターネットを通じた次世代TOEFL)で100点以上の努力義務を課すべきだと考えています。
心理学用語に「スコトーマ」という概念があります。「スコトーマ」とは「心理学盲点」という意味です。(略)
もし人間が自分が存在する世界をすべて認識でしたら脳がパンクしてしまいます。視覚で言えば眼球の網膜に映って、視神経を通じて脳へ送り込まれた映像情報のうち、ほんのごく一部しか脳は解釈していない。眼球が見たすべての映像を解釈することになったら、脳はあっという間にオーバーヒートしてしまうのです。
だから人間は、自分にとっての重要性を基準に世界を分類し、重要度が高いものしか見えないようにできているのです。自分の安住するコンフォートゾーンから外れたとことにあるものは、重要度が低いために見えなくなっている。
コンフォートゾーンをズラす意味はそこにあります。コンフォートゾーンをズラすことで今まで見えなかったスコトーマを見ることができるのです。
ほんの一端を紹介しましたが、メディアを通して画一的な価値観=空気を読むことを知らず知らずに強制されることについて苫米地氏自身が関わっている活動(少しPR臭がありますが)、メディアの裏事情、社会的な多数の事例を交えて、洗脳装置にだまされるなと舌鋒鋭く、脳科学者というよりは、外科医のように斬っています。
そういえば、その昔、毒舌の社会評論家として有名なジャーナリスト兼ノンフィクション作家の故大宅壮一氏によるテレビの「一億総白痴化」論というのがありましたが、ふと思い出しました。
<<まとめ>>
本書では、興味深い話題満載でマスコミ・メディアに流されない生き方を説いており、苫米地ワールドが堪能できる一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 テレビは見てはいけない
視覚情報は最強の洗脳媒体
テレビはつくり手と受け手がともに「進化」してできた
脳の中の「臨場感空間」
(略)
視聴率の真っ赤なウソ
テレビは見るものからつくるものへ
第2章 脱・奴隷の生き方
敵のパットを「入れ」と願ったタイガー・ウッズ
無意識が「理想の自分」を追いかける
犯罪者は子どものころから自己評価が低い
(略)
ネクタイは「スコトーマ」の象徴
それは、ほんとうにあなたがやりたいことですか
第3章 日本人はなぜお金にだまされやすいのか
麻原がイケメンに見えていたオウム信者
物理世界も目に映った情報にすぎない
臨場感を感じる三つの要素
(略)
詐欺と化した資本主義
お金で買えないものはある。
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