品質管理及び品質保証に関わる活動の全体像について、【品質管理技術の「見える化」】の観点から図を用いて分かり易く解説している本を紹介します。


本書の「まえがき」で筆者の福丸 典芳 氏は、昨今のリコール件数の増加や製品・サービスの品質不良に伴う事故が多発していることについて、1990年代のバブル崩壊後に企業は生き残りのため品質からコスト中心の経営に移行したため、それまでのTQCを採用しなくなり、社員に対する品質教育も行われなくなったことがボデーブローのように効いてきていると分析した上で、本書について以下のように述べています。


私たちは、顧客の製品・サービスに対するニーズ・期待を満たすために品質保証活動を行っている。

その基本となるのが、品質をどのような考え方、どのような方法で効果的、かつ効率的に作り込むのかに関するプロセスを構築し、維持し、改善することである。

このために、企業環境をしっかり分析し、この結果を企業のマネジメントシステムにインプットし、これを改善および革新することで、企業の目標を達成することが可能となる。

このためには、供給者・パートナーを含む企業内のすべての人々が、品質に関する知識を正しく理解し、これを実践することが必要となる。

(略)

今からでも遅くはないので、品質管理や品質保証の活動の全体像を理解するために本書の活用を図ってほしい。

この本の特徴は、品質管理技術の見える化を図るため、図による解説を行うことで、理解を深めることができるよう工夫している

また、企業内での教育・訓練でもわかりやすく使用できるようにしている。


<<ポイント>>


品質管理品質保証に関わる品質管理技術について図で見える化を図った総合的な解説書。


本書では、


品質の基本概念から、品質管理の実践のための原則、プロセス管理、


企画・設計・開発プロセス、生産プロセス、販売・顧客サポートプロセス、


管理改善のための管理技術、品質マネジメントシステムと組織、


標準化、人材開発、品質マネジメントシステム、TQMなど全社的品質管理活動、


さらに他のマネジメントシステムといった事項について


体系的に見える化解説をしています。


本書:「品質管理技術の見える化―トレーニングツール」です。


本書は、筆者:福丸 典芳氏にて、2009年9月に日科技連出版社より発行されています。



<<本書のエッセンスの一部>>


本書は、13章から構成されています。


全体的に見える化のタイトルの意図とも合致して、沢山のイラスト、概念図、各種グラフなどの図表が挿入され、見てわかるという入門者にもやさしい解説となっています。


全体を通して、ISOやJISとの連動について配慮され、途中に【ISOでは】【JISでは】等が区切り線を交えて挿入され、ISO 9000ISO 9001JIS Q 9005などに基づくキーワード・用語等が解説されています。


また項目毎にポイントとして枠囲みでその項目の要点が箇条書きでまとめてあります。


本書を自習書として活用する時にも後からポイントでレビューするなどに活用でき、理解に役立つ構成となっています。


それでは、ざっとした概要を章を追って紹介します。


第1章では、「品質の基本概念
と題して、品質の用語についてISOの関連用語の定義など交えての考察からはじまります。


当たり前品質と魅力的品質、品質管理の意義について解説しています。


第2章では、「品質管理を実践するための原則
と題して、品質第1、顧客志向、プロセス重視などの概念から重点志向、事実に基づく管理、管理のPDCAサイクルの考え方、ばらつきの管理、変化点管理、見える化などの基礎概念を解説しています。


また品質マネジメントの8原則、JIS Q 9005:「質マネジメントシステム-持続可能な成長の指針」の12原則のぞれぞれについてそのようなものかを解説しています。


第3章では、「プロセス管理
と題して、ISO9001の4.1項:「一般要求事項」及びJISQ9005の6.6.1項「一般」のプロセス等のの運営管理の解説にはじまり、次いでプロセスの設計方法について品質機能展開、JISQ 9025:「マネジメントシステムにパフォーマンス改善-品質機能展開の指針」の業務品質展開に沿って購買プロセスの事例表を交えプロセス設計の手順(13ステップ)とその利点などを解説しています。


またプロセスアプローチの概念について解説しています。


第4章では、「品質保証と製品・サービスの規格
と題して、品質保証についてのISO9000の定義などからJISQ9025での品質保証体系図の定義とそれをどのように活用するかを解説しています。


また「マーケティング」について日本マーケティング協会による定義を確認し、マーケティングのプロセスにおいて確立すべき要素とそれに関するステップなどを解説しています。


次いで研究開発プロセスについてJISQ9005の技術戦略の規定など交えてどのようなプロセスを含むか等を解説し、製品・サービス企画、製品・サービスの設計開発のプロセスにおいて設計・開発計画の策定、設計の実施、設計・開発のレビュー、設計・開発の検証、設計・開発の妥当性確認、設計・開発の変更管理、更には、コンカレントエンジニアリング、信頼性設計、故障率、FTA・FMEAの手法などについていずれも事例など交えながら解説しています。


そして、生産工程設計プロセスについて、生産の工程設計で行うべきこと、さらに標準仕様の確立について、その目的を確認し、とくに「QC工程表」と「作業標準書」について記載すべき事項、帳票例を交えて、作成時に配慮すべき事項、その詳細な作成方法・手順を解説しています。


第5章では、「製品・サービスの生産のプロセス
と題して、購買、製造・サービス提供、検査・試験、保存・輸送といった製品・サービスの生産に関わるプロセスを取り上げ解説しています。


購買プロセスについては、供給者との互恵関係の概念にはじまり、供給者の能力評価・選定(アウトソースするプロセスの管理、二者監査)、供給者の力量の改善、供給者の提案・報償制度、購買要求事項の設定、購買製品・サービスの検証といったプロセスの要領とポイントを解説しています。


また製造・サービス提供プロセスでは、新製品・サービスの製造に関する特別な管理体制で対処する初期流動管理、継続的な製品・サービスの製造に関する工程管理(管理図、グラフ、工程能力管理指数、IE手法(方法研究、作業測定)の解説)、製造設備の保全に関する設備管理(インフラストラクチャーの計画・運営管理、予防保全の重視の解説)、製造や検査のための測定機の計測器管理(ISO 9001の7.6項に関わる解説)、業者の安全管理(ハインリッヒの法則とヒヤリハットなど)、さらに作業環境管理(ISO9000の定義と作業環境の考慮事項など解説)を取り上げ解説しています。


製品の検査・試験では、「検査方式の設定」(中間検査、最終検査、出荷検査などの検査、検査のISO9000の定義、製造段階の検査の分類(全数検査、抜取検査、抜取数を決めた検査)と検査の種類(計数値、計量値)に関わる標準型抜取検査の概要(OC曲線など)、調整形抜取検査(ゆるい検査、なみ検査、きつい検査、検査停止)と検査標準の作成、サンプリングの考え方など)、さらに「測定方法の設定」、及び「検査員の力量」といった事項を取り上げ解説しています。


さらに製品の保存に関わる取り扱い、梱包・包装、保管、在庫管理、輸送といった事項を解説しています。


第6章では、「製品・サービスの販売・顧客サポートのプロセス
と題して、販売・顧客サポートのプロセスを取り上げそれに関わる品質管理技術の見える化技術を解説しています。


販売プロセスについては、顧客との良好な関係を築くための顧客開拓、売上高管理、受注処理、資金回収、顧客情報管理といった販売部門の機能との関係の全体像を解説しています。


次いで、顧客サポートに関しては、顧客サポートの仕組み、苦情・クレーム処置、(LCAなど製品のライフサイクル、環境影響評価法)といった製品の環境影響、PL(製造物責任、PLP(PL予防)とPLD(PL防御)の取り組み)、製品安全に関わる法令・規制要求事項(PSマーク、PSCマーク、SGマーク、ISO9001の7.3.3項d)の要求事項)などを解説しています。


第7章では、「管理・改善のための管理技術
と題して、PDCAとSDCAサイクル、是正処置(再発防止)、予防処置(未然防止)、問題解決形QCストーリー、課題達成形QCストーリー、方針管理、日常管理といった管理・改善に関わる管理技術を取り上げ解説しています。


方針管理の継続的改善に関わるPDCA及び日常管理の考え方としてのSDCAについて解説し、ISO9000での是正処置の定義から8.5.2項の要求事項の解説、是正処置の効果的な実施手順を解説し、次いで予防処置についてISO9000の定義及び8.5.3項の要求事項の解説、予防処置の効果的な実施手順をリスク分析及び見える化の観点から解説しています。


また問題解決形QCストーリーについて原因追求のための手順と各ステップの着目点、そして課題達成形QCストーリーについての進め方の手順と各ステップの着目点について解説しています。


そして方針管理についてJISQ9023の「方針によるマネジメント」の方針管理のステップ(方針の展開と実施計画の策定の要素、方針の実施状況の確認と処置、方針の実施状況のレビュー及び次期への反映)を解説し、さらに方針管理の推進方法についても詳解しています。


また日常管理については、日常管理の基本のSDCAのサイクルにはじまり、結果系としての管理項目、原因系としての点検項目についての定義と設定の方法、方針管理と日常管理の関係などを解説しています


第8章では、「品質マネジメントシステムの評価方法と改善活動の組織体制
と題して、内部監査、自己評価、トップ診断、改善・革新体制といったQMSに関わる評価方法及び改善活動と組織体制について解説しています。


内部監査について、ISO9000の定義からはじまり、組織の内部監査に対する定期がISO9001の要求事項に限らず品質を中心とした経営活動も定義していると経営にインパクトある内部監査に結びつくとし、内部監査の効果的なステップについて解説しています。


そしてISO9004,JISQ9006に基づく自己評価の仕組みを解説し、自己評価の体系と各種の活用の方法と自己評価のステップについて自己診断シートの事例を交え解説しています。

またトップマネジメント自身が現場で行うトップ診断についてトップ診断の意義とその手順を解説し、さらに方針管理、日常管理、内部監査、自己評価、トップ診断を通じてマネジメントシステムの改善・革新すべき能力が明らかになった場合の革新・改善体制についてプロジェクト活動、小集団活動、5S活動、提案活動についての進め方と留意すべき点などを交えて解説しています。


第9章では、「標準化
と題して、ISO、JISなどに関わる標準の仕組みと文書管理などの管理方法について解説しています。


ISO/IEC Guide2(JISZ8002)の標準の定義からはじまり、ISO規格、JIS規格についての仕組み、規格の種類、文書化の価値、標準化計画の策定のステップなど解説しています。


また文書管理についてISO9001の4.2.3項の要求事項の意図している点など中心に解説しています。


第10章では、「人材開発
と題して、企業にとって最も重要な経営資源である人的資源について解説しています。


ISO9000の力量の定義の解説にはじまり、6.2.2項の要求事項にまつわる解説に続き、人材開発プロセスについて解説しています。


第11章では、「品質マネジメントシステム
と題して、ISO9001による第三者認証制度とISO9000ファミリー規格の概要について解説しています。


ISO9001による第三者認証制度については、その仕組みと他のGMP、HACCP、ISO22000、ISO/TS16949、TL9000、要員認証制度、製品認証制度、JISマーク認証制度について解説しています。


ISO9000ファミリー規格に関して、全体を概観し、ISO9000:2005(JISQ9000:2006)、ISO9001:2008(JISQ9001:2008)、ISO9004:2009(JISQ9004:2009)、ISO19011:2002(JISQ19011:2003)の概要について解説しています。


またJISQ9005およびJISQ9006の基本的事項についてISO9001、9004との関係を含めて解説しています。


第12章では、「全社的品質管理活動
と題して、品質管理、TQC、TQMとの経緯を概観するとともにTQMの考え方について解説しています。


全社的品質管理について、品質管理活動の推移を考察し、TQMについてのデミング賞での定義と解説を紹介し、TQMの考え方(フィロソフィー、コア・マネジメントシステム、手法、運用技術)について詳解しています。


また品質管理に関する表彰制度について、デミング賞、日本品質奨励賞、MB賞、EQ賞、日本経営品質賞の概要を解説しています。


第13章では、「他のマネジメントシステム
と題して、品質以外の環境などのマネジメントシステムの概要について解説しています。


ISO14001、ISO13485、ISO22000、ISO/TS16949、ISO/IEC27001、JISQ9100、JISQ2001、JISQ15001、その他OHSAS18001(18002)、TL9000、ISO26000に関わる動向などを取り上げ解説しています


<<本書で何が学べるか?>>


本書では、品質管理品質保証に関係する活動の全体像について品質管理技術見える化の観点から図による解説で分かり易く解説しています。


<<まとめ>>


本書は、これから品質管理を勉強される方にとっても、また現在の品質管理技術を更に深めたいニーズを持っておられる関係者にもおすすめの一冊です。


なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 品質の基本概念
第2章 品質管理を実践するための原則
第3章 プロセス管理
第4章 品質保証と製品・サービスの規格
第5章 製品・サービスの生産のプロセス
第6章 製品・サービスの販売・顧客サポートのプロセス
第7章 管理・改善のための管理技術
第8章 品質マネジメントシステムの評価方法と改善活動の組織体制
第9章 標準化
第10章 人材開発
第11章 品質マネジメントシステム
第12章 全社的品質管理活動
第13章 他のマネジメントシステム


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