品質というと往々にして消極的にとらえ、マイナスを原点に戻す活動といった視点で考えられてしまうこともあるが、筆者:濱口哲也教授は、もっとアグレッシブに、2番以下の品質レベルに甘んじている限り、品質保証は、「ディフェンス」であるが、トップに立ち、さらに顧客の要求を満たすレベルにまで品質や機能を向上させれば、それは他者にない強みとなり、「攻めの品質保証」となるとの考えを説いています


本書のテーマである失敗学創造学について以下のように述べています。


「未体験ゾーンに切り込んで行くのであるから大きなリスクが伴う。

そこで必須になるのが”失敗学”の考え方である

チャレンジングなことをするときに、「起こるとしたら、どんな失敗が起こるだろうか」と起こりうる失敗を事前に想定し、未然防止をするのである。

(略)

他を引き離して独走するには、延長線上ではない。

新しいニーズや市場が必要になる。

しかし、それは、顧客も誰も教えてはくれない。

顧客が語るのは、現在の延長戦上の話しに過ぎないのである。

新しい設計解を例示しない限り、新しい要求機能は語れない。

まだ世の中にないニーズを、未体験ゾーンを、素人である顧客が語れるわけがないのである。

 そこで必須になるのが、”創造学”である

先の失敗学と合わせて、創造学を使って論理的に他社分析や思想や発明を行い、戦略を練り、真の顧客ニーズをつくり出す。

延長線上ではない。

そのときも新しいことにチャレンジするのであるから当然”失敗学”は必須である。

リスクマネジメントはいつでも必要なのである。」


<<ポイント>>


品質保証に焦点をあて、失敗学創造学の考え方と手法を解説している本


本書では、


まずリスクマネジメントのために失敗学の解説にはじまり、


失敗学では、失敗の再発を防止するだけでなく、背景や脈略を考え、上位概念に登って知識化すれば未然防止が可能であることを解説しています


また攻めの品質保証のための創造的な発想法の創造学について、


他社分析、発想の創出、発明を行い、戦略を練り、従来の延長線上ではない、真の顧客ニーズや商品コンセプトを作り上げるのに不可欠との位置づけを説いています。


失敗学創造学においても、自分で考え、新しいものを見出し、作り出す技術と説いています。


本書:「失敗学と創造学」です。


守りから攻めの品質保証へ」との副題が付いています。


本書は、著者:濱口 哲也 教授にて、2009年10月に日科技連出版社より発行されています。

<<本書のエッセンスの一部>>


本書の表紙カバーの折り返し部には、本書の推薦の言葉を書かれている畑村洋太郎先生の言葉から抜粋して、以下のように書かれています。


畑村洋太郎氏推薦!

2番以下の品質レベルに甘んじている限り、品質保証は「ディフェンス」である。しかし、トップに立ち、さらに顧客の要求を満たすレベルにまで品質や機能を向上させれば、それは他社にない強みとなり、「攻めの品質保証」になる。

 トップ企業になるためには、他が達成していない未体験ゾーンに踏み込まなければならない。そこで必須となるのが失敗学である。起こり得る失敗を事前に想定し、未然に防止するのである。それは、「まだ起こっていない失敗を発明すること」に等しい。失敗学では、失敗の再発を防止するだけでなく、背景や脈略を考え、上位概念に登って知識化すれば未然防止が可能であることを解説する

 また、他社分析、発想の創出、発明を行い、戦略を練り、従来の延長線上ではない、真の顧客ニーズや商品コンセプトを作り上げるのに不可欠なのが、創造学である

 失敗学創造学が目指すのは、自分で考え、新しいものを見出し、作り出す技術である。いかに上位概念に登り、知識化するのがその鍵となる

 本書では、品質保証に焦点をあて、失敗学創造学の考え方と手法を紹介する


本書は、『リスクマネジメントのための失敗学』と題した9つの章からなる第1部と『創造学−創造的な発想法−』と題した4つの章からなる第2部との2部構成になっています。


簡単に本書の概要を紹介します。


【第1部】『リスクマネジメントのための失敗学』では、


「なぜ失敗は起こるか」といったテーマにはじまり、畑村先生の「失敗学のすすめ」を引用しながら日本人気質とか巧みな展開でマニュアル論を考察し失敗学の本質について論じています。


とくに失敗学の本質について品質管理的な視点から考察しています。


「人のふり見て我がふり直せ」とのことわざを起点に失敗情報をデータベース化したり、根本原因を考察するためのコツを「真の原因」と「上位概念」として事例をあげ、また畑村先生との会話など交えて説いています。


また失敗学を設計論的に考察するとの視点に立って、設計の基本となる概念について「正の設計」、「負の設計」、「フールプルーフ」と「フールセーフ」の考え方など解説しています。


そして再発防止未然防止をテーマに、何らかの事故が発生した場合に、注意喚起やリコール、そして専ら再発防止が行われるのに対して、未然防止は発明と同じ難しさがあり、失敗学のエッセンスである「背景や脈絡を考えるプロセス」が必要なことなどを説いています。


またここでは、練習問題を紹介して「フールプルーフ」と「フールセーフ」の考え方や再発防止と未然防止の考え方について最近話題となった事故例から考察しています。


上位概念に登る方法」の方法論に関して、未然防止の観点から重要な「上位概念」にどのように到達するかの手法について5つ解説するとして、どの職種にも共通する『問答法(なぜなぜ法)』と『カテゴライズ法』について解説しています。


さらに方法論についての論を展開し、製造業か非製造業かを問わず創造的な仕事をする職種に対する筆者の造語の「創造職」についての上位概念に登る手法の「言い換え法」、「破壊機械法」、「仮定法」について『過去のトラブル事例書』の事例をもとに解説しています。


「創造職」に対する「運用職」:(「事務仕事や製造装置の管理運用といった確立されているシステムやカラクリの維持・管理・運用する業務に携わる職種」との筆者の造語)をターゲットに「運用職」の上位概念に登る手法のカテゴリー区分した「ヒューマンエラー防止策」、ヒューマンエラー防止のための「理解とコミュニケーション」、「フローチャートとカラクリ図」との違いといった論を交えて『過去のトラブル事例書』の事例をあげ、人間行動に伴う予防処置としての失敗学について論じています。


また「信頼性設計」とは何かを考察し、負荷-寿命曲線などの概念と加速試験を含む信頼性設計手法を解説し、特に「上位概念に登るため」と「範囲を明確にするため」の破壊試験の考え方の重要性を説いています。


そして未然防止のための失敗学のロジックを基礎とした「攻めの品質保証」のススメを
説いています。


【第2部】『創造学−創造的な発想法−』では、


創造学の必要について、『発想や発明をするときの頭の使い方の一般法則』を提案するものといった解説にはじまり、創造学は、発明、問題解決、品質向上、…、ソリューションビジネスの探索といった発想を必要とするところで幅広く応用できると説いています。


また要求機能思考展開図に関して、要求機能を考えることの重要性から思考展開図を使っての考え方の展開について、上位概念から下位概念への方向へと考える方法や要求機能から機構を発想する方法などTRIZから筆者が抽出した7つの原理といった内容について事例を交えて解説しています。


そして、下位概念から上位概念に登る創造手法として、思考展開図を用いてなぜなぜの深掘りをしていくリバースエンジニアリングのススメを説いています。


思考展開図でのへの土俵ずらしといった興味深い方法や二律背反を克服し上位概念に登る弁証法的アプローチなど論じています。


上位概念に相当するのが、創造学では『要求機能』であり、失敗学では『失敗知識』と失敗学と創造学を類似性について抽象化してまとめています。


実に含蓄の深い考察と思います。


さらに設計支援法のQFD(品質機能展開)とTRIZ(発明問題解決法)を統合して、次世代の設計支援・発明ツールを開発しようと動きを取り上げ、製品を設計しようとするときに設計者が通る思考プロセスにあてはめ解説しています。


本書の「おわりに」でインターネットで答えをコピペするといった検索能力だけで勝負するといった学生等の風潮について論じた上で、知識について以下のように考察しています。


知識というのは、入力だけでは意味がない。次の6段活用が必須である。

  • 知識の入力:重要で一生努力を続ける必要がある
  • 知識の総動員:課題に遭遇した際、自分の持っている知識に総動員をかける
  • 知識の獲得:それでも足りないと気づき、意識的に不足部分を獲得しに行く
  • 知識の出力:一通りの知識を準備できたら、課題に向かって全力で勝負する

ここで失敗体験や成功体験を得て、

  • 知識の定着:出力してみて初めて頭の中に定着する
  • 知識の応用:連想ゲームを使って、初めてのことでも勝負できるようになる

失敗学創造学も、その最大の主張は、”自分で考えよう”ということである。

社員ひとりひとりが自分で考える癖をつけたとき、最強の組織ができあがる
。」


<<本書で何が学べるか?>>


本書では、品質保証に焦点をあて、失敗学と創造学の考え方と手法を紹介しています。


単なる手法の解説ではなく、それを超える失敗学と創造学を活かすための考え方が明快で含蓄深く説かれています。


本書は、考えながら繰り返し読めば読むほど味わいがでてくる本です。


<<まとめ>>


本書は、設計、研究開発技術者から品質管理、品質保証といった職種の方だけでなく、マネジメントに携わる立場の方にも是非、読んで頂きたい一冊です。


なお本書の目次は以下の内容です。
第1部 リスクマネジメントのための失敗学
第1章 なぜ失敗は起こるか
第2章 失敗学のエッセンス
第3章 設計論的アプローチ
第4章 再発防止と未然防止
第5章 上位概念に登る方法
第6章 創造職の未然防止
第7章 運用職の未然防止
第8章 信頼性設計
第9章 攻めの品質保証
第2部 創造学−創造的な発想法−
第10章 創造学の必要性
第11章 要求機能と思考展開図
第12章 競合他社に差をつける逆演算発想法
第14章 設計と設計支援法について


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