『ロングテール』と言う言葉を世に知らしめ、
『ロングテール──「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』を世界的ベストセラーとしたワイアード誌編集長の著者:クリス・アンダーソン氏のキャリアをたどると
物理学の学位を得て、量子力学と科学ジャーナリズムを学び、世界的科学雑誌である『ネイチャー』誌と『サイエンス』誌を経て、『エコノミスト』誌の編集者から現職に至った人物。
こちらが、WPで作成していると思われるクリス・アンダーソン氏の『ロングテール・コム』のブログサイト。
上記のブログの更新とかは、月に1回程度ですが、twitterでは、Chris Anderson氏は、10時間毎程度につぶやいているようです。
筆者が取り上げているテーマが『フリー』。
『free』には色々の意味がありますが、『costing nothing』すなわちタダということのフリー。
本書の発売の際も原書(『FREE:The Future of a radical price』)について、米国での7月の刊行時には、「freemium」(フリーミアム)戦略として、デジタル形式で無料公開した際に2週間でダウンロード数が30万件を記録し、「NewYork Times」紙のベストセラーにランクインしているというもの。
また本書の国内での発行にあたってもフリーミアムのサイトが解説され、Twitterでのフリーミアムのつぶやきも開設されています。
プロローグで筆者は、「無料(フリー)のパラドックス」と読んでいますが、逆説的な言い方ながら、料金をとらないことで大金を稼いでいる人たちがいる。
例えば、Googleが展開しているビジネスなどがフリーの旗手として取り上げられています。
そこでは、多くのものがタダで、無料か無料同然のものから一国規模の経済ができているとし、その無料(フリー)はどのようにして起こり、どこに行こうとしているかが本書で中核をなす疑問:すなわちテーマとしています。
<<ポイント>>
『ロングテール』の著者が描く『儲けること』に及ぼす21世紀のインターネット経済モデル:フリーの世界がもたらすインパクトを論じている本。
本書で筆者は、サイエンティストの眼で、無料(フリー)のパラドックスの世界を分析し、
フリーのビジネスモデルは、以下の4種類であるとし、
- 直接的内部相互補助(製造者が無料で消費者の気を引き、結果的には、お金を払って他のものを買って貰うモデル)
- 三者間市場(コンテンツ、サービス、ソフトウェアを無料にし、広告主が消費者に自分の製品を購入して貰うためにその金を払うというメディア等のモデル)
- フリーミアム(製造者が基本製品は、多くの消費者に無料で提供するが、有料のプレミアム版を限定消費者に提供するモデル)
- 非貨幣市場(製造者が消費者に注目や評判を売るために無料で提供するWikipediaなどのモデル)
この3番目のモデルが本書のメインテーマで、『フリーミアム』に関して本書の中でも以下のように述べています。
『フリーミアム』とは、「フリー(無料)」+「プレミアム(割増料金)」の造語で、基本サービスを無料で提供することで顧客を広く集め、その何割かに有料で高機能のプレミアム版に移行してもらうビジネスモデルです。
またこの4番目のお金儲けには関係のないモデルは、筆者は、ビジネスモデルとしては評価していないようです。
無料(フリー)はどのようにして起こってきたかという無料の世界を概観し、デジタル世界のフリーの特質から無料経済とフリーの世界がどこに行こうとしているかを実証的に論じています。
本書:「FREE フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」です。
本書は、著者:Chris Anderson(クリス・アンダーソン)による原著:「THE FUTURE OF A RADICAL PRICE」について、小林弘人氏の監修ならびに高橋則明氏の翻訳にて、2009年11月に日本放送出版協会より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
いま、注目のフリーミアムとは?
あなたがどの業界にいようとも、
<無料>との競争が待っている。
本書は、350ページの読み応えのあるボリュームに仕上がっています。
プロローグに続く16章から構成されていますが、「無料とは何か?」と無料ビジネスの歴史を辿り分析をし、「フリーなるもの」の定義を確認しているパートにはじまり、
半導体のパーツに適用される技術の進歩に伴うコスト低減化のムーアの法則からグーグルが展開しているようなビジネスモデルの経済モデルについて詳細に分析・考察している「デジタル世界のフリー」のパート、
さらに「無料経済とフリーの世界」のもたらすインパクトについて展望しているパートに分かれています。
本書の感想ということで
少し脱線するかも知れませんが、熱力学の第二法則というのがあります。
これは、エネルギーの移動は、エントロピーの増大する:不規則性が増大する方向に流れるというものです。
これに関して「マクスウェルの魔」という有名な思考実験があります。
例えば、温度の高いものと低いものを接触させると温度の高い方から低い方へ熱が移動するというエネルギーの輸送現象を表現したものになります、
自己流の解釈からいくとミクロのレベルでの小さな確率と大きな確率とを平均化するとマクロには、大きな確率の方に動くという当たり前の自然現象を説明している法則です。
その昔、量子力学の波動方程式で知られるシュレディンガーがこのエントロピーについて、生物の営みは、負のエントロピーを生み出す活動と言っていました。
エントロピーの増大の法則とは異なって、社会の動きのようなものは、技術活動に伴って、規則性が整った情報が整理された世界へ向かうとも考えることができます。
さて、松下幸之助さんの考えた生産者の使命としての「水道哲学」というのもありますが、技術の進歩に伴うムーアの法則の世界を外挿していくと究極のところ限りなくコストゼロの世界に向かうのかと思われます。
本書を読み進めると筆者の説いている「フリー」も『<無料>からお金を生み出す新戦略』との副題が付いていますが、デジタル世界の【物理法則】のような感覚に聞こえてきます。
確かにソフトウェアとか情報のビジネスについて考察してみるとそれが消費者のニーズにマッチして売れるものであれば、開発原価を越えて売れていくとあるポイントから先では、限りなく利益を増加させるものになり、無料にしても良いというような性質を持っています。
本書では、デジタルの経済の世界では、95パーセントをタダにしてもビジネスが可能とし、ならば、先においてフリー化との競争の道が不可避で待っているならば、早くからそれをマーケティング等に有効に取り入れるべきではないかといった思考を説いています。
なお巻末の付録になりますが、以下の【無料のルール─潤沢さに根ざした思考法の10原則】というのを取り上げていますので以下に紹介します。
- デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
- アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
- フリーは止まらない
- フリーからもお金儲けはできる
- 市場を再評価する
- ゼロにする
- 遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
- ムダを受け入れよう
- フリーは別のものの価値を高める
- 稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、デジタル世界のフリー戦略のもたらすビジネスへのインパクトについて、あなたがどの業界にいようとも、〈無料(フリー)〉との競争が待っているとして、物理学の法則の検証の実験を見るように沢山の事例を取り上げて帰納的に考察しています。
<<まとめ>>
起業家を目指す人、経営者、ビジネスパースンで、自社・自身が関与し、志向しているビジネスモデルの将来を客観視するのに、本書は、格好の一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
プロローグ
第1章 フリーの誕生
【無料とは何か?】
第2章 「フリー」入門
─ 非常に誤解されている言葉の早わかり講座
第3章 フリーの歴史
─ ゼロ、ランチ、資本主義の敵
第4章 フリーの心理学
─ 気分はいいけど、よすぎないか?
【デジタル世界のフリー】
第5章 安すぎて気にならない
─ ウェブの教訓=毎年価格が半分になるものは、かならず無料になる
第6章 「情報はフリーになりたがる」
─ デジタル時代を定義づけた言葉の歴史
第7章 フリーと競争する
─ その方法を学ぶのにマイクロソフトは数十年かかったのに、ヤフーは数ヶ月ですんだ
第8章 非収益化
─ グーグルと二一世紀型経済モデルの誕生
第9章 新しいメディアのビジネスモデル
─ 無料メディア自体は新しくない。そのモデルがオンライン上のあらゆるものへと拡大していることが新しいのだ
第10章 無料経済はどのくらいの規模なのか?
─ 小さなものではない
【無料経済とフリーの世界】
第11章 ゼロの経済学
─ 一世紀前に一蹴された理論がデジタル経済の法則になったわけ
第12章 非貨幣経済
─ 金銭が支配しない場所では、何が支配するのか
第13章 (ときには)ムダもいい
─ 潤沢さの持つ可能性をとことんまで追究するためには、コントロールしないことだ
第14章 フリー・ワールド
─ 中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何が学べるだろうか?
第15章 潤沢さを想像する
─ SFや宗教から、〈ポスト稀少〉社会を考える
第16章 「お金を払わなければ価値のあるものは手に入らない」
─ その他、フリーに対する疑念あれこれ
結び ─ 経済危機とフリー
巻末付録(1):無料のルール─潤沢さに根ざした思考法の10原則
巻末付録(2):フリーミアムの戦術
巻末付録(3):フリーを利用した50のビジネスモデル
なおこちらがベストセラーとなった同じ筆者による「ロングテール」の本。
ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
![]()
1785円
1.この本の内容の私なりの要約 今までは、テクノロジーの限界があり、どうしてもヒット商品しか市場に出回らなかったが、パソコンやインターネットなどのテクノロジーが進歩したことにより、ヒット商品のみならず、ニッチ(少数にしか受けない物の意か)商品も供給でき、かつ消費者もその利益を享受できるよ |
ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)
![]()
1470円
「ロングテール」という言葉を世に広めた、米ワイヤード誌編集長の著作。の改訂版。 「ロングテール」の紹介については第1章で済む。 あとはいろんな事例だ。 分厚い本であるのに、すぐに退屈になってしまう。 (どうして英語の本ってこうダラ |
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