2010チリ地震の津波報道に少し押し流されましたが、印象深い沢山のドラマと感動を残してバンクーバーのオリンピックもいよいよ終わります。
スピードスケートの団体追い向き(パシュート)の女子決勝では、穂積、小平、田畑選手が頑張りましたが、最後の最後にドイツに2/100秒差で追い抜かれ惜しくも2位となりました。
2/100秒差ということで、ご当人達は悔しいでしょうが、価値ある銀メダルです。
価値ある銀メダルと言えば、何といってもこのオリンピックのハイライトは、女子フィギュアで、3回転半ジャンプをすべて成功させ銀メダルに輝いた浅田真央選手。
敢えて困難な自身の限界となる頂きを目指して挑戦し、重圧の下で3回転半ジャンプの大技をすべて成功させ自己ベストを更新したことは大健闘であったと思います。
一方で自分の技の完成度を上げることに集中し、自身の持てる力をすべて出し切り世界最高得点で演技した金妍児(キム・ヨナ)選手。
浅田真央選手という存在があってこその今回の金妍児選手の優勝だったと思います。
ミリオンセラーとなった『思考の整理学』の著者:外山滋比古先生が下記で紹介する本の「無敵が大敵」とした一節で以下のように述べています。
『世の中を敵と味方の二つに分けるのは粗雑な考え方である。
敵は、にくいもの、われに害を与えるものなりと決めて、敵の効用ともいうべきもに思い至らないのは未熟である。
たくさん敵があれば、それはむしろ天の恵みだと考えて感謝する位にならないと豊かな人生を送ったと言えないだろう。
若いうちは、ことに強敵、大敵が必要で、それに負けない意志と努力があれば、人生はそれだけ大きいものになる。
夢にも敵がなければよい、などと考えないことだ。無敵を願うのは弱い心である』
全く共感できるところで、浅田真央選手が今回のオリンピックは、頂きを目指す通過点と考え、これから更に、金妍児選手に負けない意志と努力を積み上げていけば、その伸びしろからすれば、どう見ても、次には、確実に最高峰に輝くしかない揚々とした可能性が見えています。
今回のオリンピックは沢山のドラマと感動を提供してくれましたが、人生をも考えさせてくれる物語がありました。
さて本日、紹介する一冊は、英文学者、言語学者、評論家、エッセイストの外山先生による人生論です。
<<ポイント>>
「人生はプラスとマイナスの交錯であり、マイナス先行の方がよい」をテーマに外山滋比古先生が説く含蓄深く人生を説いている本。
本書の「まえがき」で筆者も述べていますが、
- 「人間万事塞翁が馬」
- 「禍福は糾える縄の如し」
といった中国の言葉で、「人間の災いと福は、より合わせる縄のように入れ替わる」
すなわち、
- 幸福をプラス
- 災いをマイナス
とすれば、プラス、マイナスは縄のように交錯してあらわれる。
その場合、『マイナス先行がよく、プラス先行ではうまくない。』
というのが本書のテーマで、筆者の体験談、世界の箴言、多彩な話題を取り上げて論じています。
すなわち、逆境の経験こそ幸福を生み出す母であるといった論を展開しています。
本書:「「マイナス」のプラス」です。
「反常識の人生論」との副題が付いています。
本書は、著者:外山 滋比古先生にて、2010年1月に 講談社より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
失敗や挫折のすくない人生はもっとも弱い!
「知の巨人」が看破する幸福の法則
- コンプレックスは弱虫をはげまし、力づける先生のようなもの。
- 世の中を敵と味方の2つに分けるのは粗雑な考え方である。
- 真の不幸は、我慢すべきものがない、すくないことである。これを、教養のある人たちが知らずに一生を終えるのは、ちょっとした悲劇と言える。
- 試行錯誤は人間の生き方の基本的ルール。
本書は、4つの章に区分されていますが『マイナス先行がよく、プラス先行ではうまくない。』がテーマですが、一貫して筆者の歩んだ道と人間の生き方の本質に対する考え方はどのようなものかについて語っています。
鮮やかにかつ鋭く、筆者の美学の世界を語っています。
一端を紹介します。
本書の最初と最後の題材になります。
「前列人間と後列人間」と題して、集まった人が写真をとるために並ぶ際にどこを選ぶかを題材に、『優れた黒子、慎み深さ、桃李主義』の徳を論じ、
- 「桃李不言下自成蹊」(桃李(とうり)もの言わざれども、下おのずから蹊(みち)を成す)
- 「美酒は看板を要しない」
とし、自分を売り出していつも自己宣伝をする前列人間のPR人間は、はじめは華やかだが、実力を伴わないことが多くやがて落ち目を迎える。
後列人間の桃李主義は、実力にものを言わせ、空虚な自己顕示を恥じる。
かけだしでは、PR馬に遅れを取るかも知れないが、第三コーナーあたりから頭角をあらわし、第四コーナーを回るころには先頭を競うまでになっていると説いています。
「考える人間」と題して、(このあたりは、「思考の整理学 (ちくま文庫) 」で取り上げていたテーマでもありましたが)、『思考力をつける毎日の習慣』について以下のような習慣について説いています。
朝、目をさましたら、すぐ起きないで、ぼんやりする。
なるべく過ぎ去ったことは頭に入れない。
浮き世離れしたことが頭に浮かんだら、それを喜び、忘れて困るようだったら、メモをする。
毎朝十分か二十分、こういう時間をもてば誰でも思考家になれる。
考える人間になれる。
夜、考えごとをするのは賢明でない。
思考は朝に限る。
この朝の思考を十年続ければ、その人は人のまねでない考えをもつことができるようになる。
考える人間は朝つくられる。
と説いています。
ところで、先日、トヨタ自動車のリコール問題をめぐって開かれたアメリカ議会の公聴会に豊田章男社長が出席しました。
テレビでこの公聴会での応答の様子やその後の米国でのディラーを集めてのスピーチや工場視察といった豊田章男社長の行動がこぞって報じられました。
公聴会のやりとりを米国の顧客がどう捉えたかということもありますが、公聴会が終わっても問題の解決のすべてはこれからスタートになります。
豊田章男社長は、その経歴からするとこれまでは、明らかにプラスの人生をずっと歩んで来られた人と思います。
一般には、今回の苦境でプラスからマイナスに転じたのかと見られますが、ここは、見方を変え、社長としてのスタートが逆境のマイナスからスタートしたと考えると今回のリコール問題は、名実共に押しも押されもせぬ名経営者になっていくための試練の機会ということになります。
これが正解という答えが無い問題を前にまさにその覚悟と人物の真価が問われることになりますが、これからの顧客の信頼回復に向けての豊田社長の舵取りが注目されます。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、「人生はプラスとマイナスの交錯であり、マイナス先行の方ががよい」と外山 滋比古先生が経験談から箴言や各種のエピソードを交えてご自身の人生観を説いています。
<<まとめ>>
自分を見つめ直したいと考えていたり、知の刺激を受けたいと思っている人には、本書はお薦めの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
1. 結果を見れば
前列人間と後列人間
「どうせ」の短慮
三分の人事、七分の天
無敵が大敵
知らなきゃ強い
我慢
2. 失敗とはなにか
自信喪失
コンプレックス
傷のあるリンゴ
はじめの幸運
上り坂下り坂
3. 一人前であるということ
つつ抜け
ことばづかい
傍若無人
なしのつぶて
ブタが木にのぼる
4. 私の流儀
同じ釜の飯
試行錯誤
潮どき
朝の日記と予定表
カネと自由
考える人間
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- 2010年03月01日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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