環境経営に精通している会計のプロの著者:本郷 孔洋氏が、環境問題および環境経営の最新事情や背景をわかりやすく俯瞰し、解説している環境経営の入門書を紹介します

本書の「はじめに」で2010年以降は、地球温暖化防止のための新たな国際的合意(ポスト京都議定書)の時期で、東京都の排出権取引がスタート、環境税の導入も検討されているなどといった動向から、これからは、環境負荷を考慮しながら(社会的責任を果たし)、そのコストを負担してもなお発展できる企業でなければ立ちいかなるとした上で、本書では、「環境経営の見取り図」を提供したいと述べています。

本書では、環境問題および環境経営の最新事情や背景を分かり易く解説すると共に企業がエコの波をチャンスに変えるための以下のような具体策についても説いています。

  • 「今後の環境政策の行方は?」
  • 「規制をチャンスに変えるには?」
  • 「エコを意識したマーケティングとは?」
  • 「多様化するステークホルダーへの対応法とは?」
  • 「新しいビジネスモデル開発のポイントは?」
  • 「環境会計とは?」

<<ポイント>>

環境問題が企業に及ぼすインパクトの考察をはじめ、環境経営の最新事情や背景を俯瞰し、これからの時代の企業経営について解説している環境経営の入門書

本書では、

環境とヒト(人間)との関わり方の考察にはじまり、

「環境」を無視した経営は成り立たないこと、

環境と事業活動との関わり方を展望し、

環境を巡るトレンドから、

さらには、企業がそれをどのように経営に取り入れ、

アピールしていくべきかについて

環境経営の観点から解説しています。

本書:「わかる!環境経営」です。

エコの波をチャンスに変える」との副題が付いています。

本書は、著者:本郷 孔洋氏にて、2010年3月にPHP研究所より、「PHPビジネス新書」の一冊として発行されています。

<<本書のエッセンスの一部>>

本書の帯には、以下のように書かれています。

社長!

「環境」を知らずに利益が出せるとお思いですか?

  • 「今後の環境政策の行方は?」
  • 「規制をチャンスに変えるには?」
  • 「エコを意識したマーケティングとは?」
  • 「環境会計とは?」

本書は、環境経営を軸に「環境がわかると見えてくるもの」との視点で以下の5つの関わりを章のテーマとした5章からなる構成となっています。(例えば、「環境がわかると人間が見えてくる」(第1章)など)

  • 人間
  • 事業
  • 会社
  • 社会
  • 真価

また各章の終わりには、「『mottainai』(もったいない)を三方良しで解決する」といった『Columnが挿入され、身近なトピックス等を取り上げて解説しています。

環境と人間との関わり」について、循環型社会における企業経営の方向性と環境問題から浮かびあがってくる現代社会のテーマについて俯瞰するという観点から概観しています。

ここでは、20世紀型資本主義の考察から始まり、資本主義の本質が変化してきていること。

グリーンニューディール、…、環境問題の動向などを俯瞰し、環境問題を考えることは「人間とは何か」を考えることとなどを論じています。

環境と事業」に関して、我が国の環境規制の歴史と環境経営(ビジネス)の流れを時系列的に3つのステージ(「環境マーケティング(PR)」、「環境マネジメント」、「環境そのものをビジネスにしていく」との時代)に区分し概観しています。

また環境ビジネスについて以下の3つがその特徴と事例を挙げて考察し、排出権取引など解説した上で、21世紀は水が最大のビジネスになると説いています。

  1. 中小企業が主役
  2. つなぎビジネスが肝
  3. 手間ヒマが付加価値

環境と会社」に関して、企業経営の5つの基本構造(経営戦略マーケティングマネジメント、評価(会計)、財務)の最初の3つを中心に「環境(エコ)」との関わりを考察し、広報宣伝活動、環境マネジメントは必須であること、リスクマネジメントの重要性などを説いています。

環境と社会」に関して、会社とは?、社会とは?を考察し、多様化するステイクホルダー(利害関係者)との関係等で企業の社会的責任(CSR)が増大化していることなどを挙げ、「環境を考慮した企業文化を作る」といったことの意義等を説いています。

環境と真価」とのテーマのもと、企業の基本構造の「評価(会計)」、「財務」について論じています。

評価(会計)」に関しては、オフバランスまで含めた会社の真の状態を浮き彫りにする環境会計、また「財務」に関しては、「エコファンド」、「エコファイナンス」など企業評価の基準が変化していることなどの背景のもと環境問題について「企業の成長戦略」との捉え方の重要性を説いています。

また本書の「おわりに」で本書の主要ポイントを総括し整理した上で、これからの時代を生きる個人のスタンスに触れて若い人に向けて以下の2点を説いています。

  1. 「21世紀は知識社会であり、個人の時代。独立しても飯を食えるだけの能力開発」をしておくこと。
  2. 環境に関する知識とセンスを身に付けるため「今のうちに環境に関する資格を取っておく」こと。

また巻末には、さらなる環境経営の学習のための参考文献、参考サイトがまとめられ、幾つかの環境問題を考える上での重要な用語の解説が掲載されています。

<<本書で何が学べるか?>>

筆者によると本書は、「環境経営入門の入門書」で講義に向けてのオリエンテーションに相当するとしています。

しかし、それは謙遜で、本書では、環境問題および環境経営の最新事情や背景を分かり易く概観した上で、エコのトレンドをビジネスチャンスに変える視点など環境問題をどう経営に取り入れ、アピールしていくかを説いています。

とくに《公認会計士》の視点から環境経営を軸に環境と人間、事業、会社、社会、真価との関わりについて説いています。

<<まとめ>>

本書は、エコに関心がある学生の皆さんからビジネスパーソン、また環境経営に関心がある経営者にも読んで頂きたい一冊です。

なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 環境がわかると人間が見えてくる
第2章 環境がわかると事業が見えてくる
第3章 環境がわかると会社が見えてくる
第4章 環境がわかると社会が見えてくる
第5章 環境がわかると真価が見えてくる

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