福島第1原子力発電所の状況は、予断を許さない環境が続いています。
電源の供給により中央制御室の照明などが復活し、原子炉圧力容器への淡水注入が行われるようになった。
しかし24日福島第一原子力発電所3号機タービン建屋でケーブル敷設作業を行っていた協力会社の作業員3名が足に被曝するとの事故が発生した。
1号機、2号機、3号機の建屋地下階の溜まり水から圧力容器由来と考えられる通常運転中の原子炉内の水の約1000万倍という高濃度の毎時1,000ミリシーベルト以上の高い放射線量が計測されています。
とくに2号機、3号機では、ランタン140、バリウム140、セシウム134と136と137、ヨウ素131と134、銀108、テクネチウム99、コバルト58などの核種が検出されています。
また放水口近くの海水から50ベクレル/mlの放射性ヨウ素131が検出されています。
本日(3/27)の枝野官房長官の会見によると「原子炉は、破損の状況ではない」 とのことです。
圧力容器部分が健在ということを強調したものでしょうが、そこに繋がっている配管系から放射性物質が漏れていたら一部破損と同じで余り意味の無い認識と思われます。
自衛隊、消防、及び現場作業者のみなさんの決死の頑張りによってこの状態で維持できている点は、評価されるべきと思います。
ただここに至って現場の計測機が故障、東京電力の対応が遅いとかのエクスキューズはまずいと思います。
政府には、常に結果責任を確実に果たすことが求められています。
与党でなく野党の立場ならば、建設的な着地点を考えず理論的に批判してきて済んできたと思います。
未だにそのような立場に染まってしまっているのではないかと懸念します。
施策の結果が現実になにをもたらすかという建設的な着地点を知恵を使って見通すことが必要です。
知識のある人が沢山集まって議論を重ねたりしているのかもしれませんが肝心の先の現実を見通す知恵が不足しているために問題を克服どころか逆に複雑にしてきたように思われます。
完全を期してマニュアルのようなものを新たに作り上げようとするよりは、不完全でも知恵で補って今あるマニュアルを実行することの方が大切。
ここに大きな問題があると思います。
プルトニウムの検出確認が行われていないことを指摘され、官房長官が周辺土壌の汚染調査を急がせたと報道されています。
これまでの報道とかから推定すると放射性核種の同定の手段は、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を検出することが中心に実施されてきたと思われます。
しかしプルトニウムのppbやpptレベルでの高感度検出には、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)質量分析装置(ICP-MS)が必要です。
また分析するための分離等の前処理操作の技術も必要になります。
したがってプルトニウムの高感度検出ができる試験機関等は、熟練した技術者も含めて限られると思います。
国民の安心安全の点からは、発電所プラント周辺の土壌ではなく、優先されるべきは、食品および水道水へのプルトニウムの微量分析です。
従来放射能が検出された食品および水道水について万が一にもプルトニウムが検出されていないことを確認すべきです。
私は、食品中へのウラニウム、プルトニウムの汚染がないことは確認され検出されていないということかと思っておりました。
しかし実際には、食品及び水道水中のプルトニウムの分析は、想定されないとのことからなされていないように思われます。
食品および水を先ず確認して発電所プラント付近の土壌のプルトニウムの分析はその後でも良いのではと思われます。
土壌からプルトニウムが検出されなければそれで良いのですが、万が一にも検出されるとまた後手を踏んでしまうことになります。
このような動きになっているのは、現実の結果に対して責任を持つとの意識が希薄なためのように思えてなりません。
食品、水に含有される放射能の安全性について、アルファ線、ベータ線の内部被曝とX線による外部被曝とを対比するような解説がマスコミでありますが適切ではないように感じます。
そのマスコミ(政府、原子力保安院、東電)の解説の論拠となっているのは、ICRP(International Commission on Radiological Protection:国際放射線防護委員会)の考え方でガンマ線の外部被曝に換算するような形でDose Coefficient(線量係数)という換算係数を用いる考え方です。
たしかにガンマ線の外部被曝の場合は、X線の場合との比較で大きく異なってはいないかと思われます。
アルファ線、ベータ線の内部被曝については、細胞に与えるダメージがガンマ線より大きなものとなり、ガンマ線も含め局所的にエネルギーが集中することとその核種により、その元素がもともと持つ生理的・化学的性質(毒性レベル等)が基本的に異なっているということがあるためです。
内部被曝をガンマ線(X線)について実効線量に換算するのにmSv/Bqの実効線量係数が適用されますが、ガンマ線(X線)については近似できるとしてもベータ線、アルファ線の場合には同じ考え方にはかなり問題があるように感じます。
2号機の水たまりの高放射能の問題(タービン建屋にたまった水から、運転中の原子炉内の水の約1000万倍にあたる非常に高い濃度の放射性物質が検出されていること)がネックで作業がストップしています。
天野IAEA事務局長は26日、使用済み核燃料プールを冷却するための給水作業の成果がいまだ不確かとしています。
山また山が続いているこの緊急事態対応をさらに見通しの立たない愚策で悪化させないためリーダーが現実の結果責任のもと先を見通す行動ができなければ、自分からその座を降りて、できる人にリーダーを変わってもらうとかできないものでしょうか。