福島第1原発の状態は、現場での必死の努力にも関わらず依然として予断を許さない深刻な状況が続いています。
4月12日に政府は、IAEAによる原子力施設事故での国際原子力事象評価尺度(INES)をレベル7(深刻な事故)に引き上げると発表しました。(なおIAEAのINES-2009のpdfファイル<英文>はこちらで参照できます。)
今となって遅すぎというのが率直なところ。
チェルノブイリと比較してこれまでの放射性物質の排出量が1/10とかレベル7が厳しすぎとかあるが、3つの原子炉と4つのプールに関わる事故であること、現在も進行中であること、さらに海水や地下水への排出とかが計算に入れられていないこと等から レベル7で軽すぎることはないように思える。
全ての冷却機能が失われ、水素爆発の相次ぐ発生など当初から米国やフランス等の海外では、INESの評価は、6以上だろうとされていました。
原子力安全・保安院の中村審議官は、すでに震災翌日の会見で、検出された放射性物質から「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と炉心溶融の可能性に言及していました。
これは、振り返ると妥当な科学的推察でしたが、菅首相と枝野官房長官は、「国民に不安を与えた」と問題視し、中村審議官を会見の担当から外し、西山審議官へと交替になりました。
「ればたら」というのは、へたくそなゴルフみたいなことになりますが、この時点で危機感を国民と共有ししかるべき手が打たれてきたらと残念に思われます。
そして以降は、今日のような政治的意図を優先した大本営発表スタイルとなりました。
すなわちデータや根拠は示さずに「直ちに影響ない」といったことを連発する枝野官房長官に代表される説明スタイルです。
まるである種の誘導や洗脳を意図しているかのようなディベート的な言い回しに終始する意味のない会見となってしまいました。
また解説のために連日、原子力推進派の御用学者がマスコミに登場し、次々と深刻な事象が起こっても口を揃えて問題は、軽微でコントロールされており、国民の健康影響等に問題は無いとの説明が一貫して強調されてきました。
また食品の放射線についても後付けで絶対に安全とされるコーデックスのガイドラインの水準から我が国独自の緊急事態の「ここまでは国民に我慢して貰おう」との政治的水準へと上げられています。
3月18日段階で原子力安全・保安院は、INESのレベル5としていました。
さらに3月24日には、政府は、原子力委員会から「レベル7の可能性がある」と報告を受けていたにも関わらず放置し隠蔽してきたことになります。
「不確かな情報で国民に不安を与えない」とは、いかにもお上的な発想で国民目線から外れ、国民を軽視しているように見えてしまいます。
しかし明らかに見通しが甘く、これが裏目となり、結果的に海外や国民にも不安感をあおり、むしろ不信感を招くことになってしまいました。
これまでに『ありとあらゆる手を打ちベストを尽くした』とか開き直っていますが、現実には、限られた選択肢のなかから優先順序の一部の手しか打てるはずも無く、往々にして無策の人に限って自己防衛のための責任逃れのパターン化した発言になります。
「先の見通しを立てられる知恵と結果責任を全うしようとする覚悟」がこれまでの行動から感じられないことを国民は、見抜いています。
「日本がつぶれることも想定しなければ」
「原発周辺の避難区域に10年、20年住めない」
等の度重なる心ない発言は後で否定してもすでに被災地の人の信用を失墜してしまっています。
20ほども肝いりで乱立させた「本部」や「会議」は、混乱しており、どの問題をとっても遅々として進まず、まさに会議は踊るとの状態になっているとされています。
「復興構想会議」の議長のコメントもミスキャストなのかわかりませんが、のっけから『震災復興税』を持ち出すなど菅首相の思いを代弁するような政治的なバイアスの強いもので国民に違和感や嫌悪感を感じさせてしまうものとなっています。
統一地方選前半戦の民主党の惨敗は、全てに後手後手で問題解決が進まない菅政権への猛省を促したいとの国民の強いメーセージであったと思います。
にも関わらず『地方選と国政とは別だ』などと国民の思いが伝わらない状態になっています。
また文部科学省は12日、福島県で採取した土壌と葉物野菜からストロンチウム89と90を検出したと発表しています。
土壌は、3月19日に浪江町と飯舘村で採取されたもので、葉物野菜は、3月19日、大玉村や本宮市などで採取されたもの。
分析自体に時間がかかるとしても発表がここまで遅れたのも不思議ですが、文部科学省がこの分析に着手するのが遅かったということかも知れません。
ただこれらのレベルは、いずれも微量で人体に影響がないレベル。
土壌では、ストロンチウム90が最大のレベルのもので32ベクレル/土壌1kg、ストロンチウム89が260ベクレル/土壌1kgとのこと。
同時に分析されたセシウム137は 、51,000ベクレル/土壌1kgで、ストロンチウム90の値は、この0.06%の量だった。
葉物野菜では、ストロンチウム90が最大のレベルのもので5.9ベクレル/野菜1kg、ストロンチウム89が61ベクレル/野菜1kgでとのこと。
こちらもセシウム137比べて、0.007%の量。
ストロンチウム89、90はベータ線のみを放射するので今までのガンマ線検出器では検出できず、分離の前処理を含め測定に1~4週間かかるため発表が遅れていたもの。
ストロンチウム90は、半減期が28.9年と長くベータ崩壊してイットリウム90に変わり、イットリウム90も半減期2.67日でベータ崩壊してジルコニウム90となる。
ストロンチウム89は、半減期が約50日と短く、ともに高レベルのベータを放出します。
化学的性質が同じアルカリ土類金属のカルシウムとよく似ていて水に溶けやすく、人体では骨にたまる傾向がある。
土壌では深い場所まで届き、根から吸い上げられ植物に吸収されやすいとされています。
とくにこれらのストロンチウム同位体の海水への流出と魚介類での濃縮が懸念されます。
ウラニウム235の核分裂では、核分裂生成物は、質量数90−100および135−145の附近に2つの山を持つ分布を持っています。
揮発性が高いため水素爆発等に伴って広域に拡散し、大気中や土壌で検出されているヨウ素131、セシウム137は、後ろ側の山の質量数に対応するもの。
これに対してストロンチウムは、前の方の山の質量数に対応した核種になります。
ストロンチウム89、90は、燃料棒には核分裂生成物としてセシウム同位体と同様にともに約10%程度含まれていると推測されるが、この分析結果からするとストロンチウムの同位体の福島第1原発からの大気中への放出は抑制されかなりの部分が水側にトラップされたものと考えられる。
ストロンチウムは、カルシウムなどと同じアルカリ土類金属なので水に吸収されると水酸化物になると思われ、また海水由来の硫酸イオンと結合し、硫酸塩などの不溶性物質として、かなりの部分は、圧力容器、格納容器、サプレッションプールの底等に固形分として堆積しているのではと推測される。
ただこれらの圧力容器、格納容器等は、破損しているとのことなので、ストロンチウムの同位体の一部は、プルトニウムなどの核分裂副生成物の粒子状物質と共に汚染水と共に地下水や海水に流出していることも懸念される。
トレンチやタービン建屋に溜まっている汚染水についてストロンチウムの検出が報告されていないが、これは隠ぺいというよりは、放射線量が強いため汚染水の表面層の水しかサンプリングされていないためか、または、ガンマ線の核種のみの分析にとどまり、ガンマ線を放出しないストロンチウムを目的とした分析がされていないのではないかと思われる。
沈殿物部分の汚染水のサンプリングととくにガンマ線核種以外のベータ線、アルファ線放出核種の分析も必要。
また2号機の取水口でのサンプリングも底部の砂も含め、ストロンチウム89、90等をターゲットとしたベータ線放出核種の放射性物質の分析を進めて欲しい。
また核分裂副生成物(プルトニウム、アメリシウム等)をターゲットとした分析も必須ではないかと思われる。
これらの分析情報は、魚介類に関わる国民の食の安全を守るために不可欠なデータと思われ、この種の情報公開に不透明さや遅れがあってはならない。
太平洋戦争の際の太平洋各地での玉砕と敗戦の悲劇は、日本軍が情報収集・解析を軽視したところに起因するとされている。
今回の事故を最小の被害範囲にとどめて終息させるには、的確な分析データに基づく情報収集と解析が基本になる。
地震と津波でセンシングシステムの大半を失ってしまったが、世界の知恵を借りて現在の事象を科学的に分析し、的確に把握することが肝心。
歴史は繰り返されることも多いが、今回の原子力事故も政治家等のバイアスがあったり、決して精神論等が先走ることがあってはならない。
東京電力が以下の3段階からなる工程表を17日に発表しています。
- 原子炉と使用済み燃料プールの冷却
- 放射性物質が含まれた汚染水のとじ込め・処理と大気・土壌中の放射性物質の抑制
- 避難指示区域などの放射線量の測定と低減
の3つの区分のもと3ヶ月程度での目標達成の「ステップ1」とそれに続き、3~6カ月での解決を目指す「ステップ2」がこの工程表の骨子。
スマートにまとめられた工程表だが、実際には、各種の的確な分析データの迅速な収集と放射線量が高い現場での地道で困難な作業の積み上げが中心になります。
世界の衆知と技術を集め目標必達を果たして欲しいと願っています。
さて本日は、「やる気」を呼び起こす究極の手法を説いた本を紹介します。
「モチベーション」をテーマにしたコンサルティング会社の代表である筆者:小笹 芳央氏がさまざまな企業の現場で培ってきた自分や人の思考と行動を変えさせることができるモチベーション・マネジメントのポイントを説いています。
<<ポイント>>
組織を変革するモチベーション・マネジメントの方法について豊富な事例や物語を交えて説く本。
本書では、
モチベーション・マネジメントの方法論、
変化を生み出す「Unfreeze:アンフリーズ=解凍」、「Change:チェンジ=変化」、「Refreeze:リフリーズ=再凍結」の3つのステップ、
時間、空間、‥‥、集団等の6つのマジックと
さらにそれぞれの4つの技術の組合せによる24の効果
などを分かり易く説いています。
本書:「変化を生み出すモチベーション・マネジメント」です。
「6つのマジックで思考と行動が変わる」との副題が付いています。
本書は、著者:小笹 芳央氏にて、2011年3月にPHP研究所より「PHPビジネス新書」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯および表紙カバーの裏面等には、以下のように書かれています。
10年間進化を重ねた
「やる気」を
呼び覚ます究極の手法
解凍(アンフリーズ)→変化(チェンジ)→再凍結(リフリーズ)
「変わらないといけない」を「変わりたい」にする技術。
周囲の環境が高速で激変する今、変化に対して二の足を踏むことは死を意味する。逆に、モチベーション高く変化に挑むことができたら、どんな時代も軽々と生き抜いてゆける――。
本書では、絶対化された状況を「アンフリーズ=解凍」し、「チェンジ=変化」させる誘因を提供、新たな行動が正しいと認識させて「リフリーズ=再凍結」する6つのマジックを紹介。
部下を生き生きと変化させ、組織を変革する方法論を、豊富な事例や物語をまじえてわかりやすく解説する。
ざっとした本書の概要を紹介します。
下記の目次のように本書は、6つの章から構成されています。
全般的に抽象的な概念等を解説するための多数のイラストが挿入されて分かり易く工夫されています。
また5章では、新卒向け求人サイトの運営会社の営業部のマネジャーがメンバーのモチベーションアップを図るという架空の物語が挿入されて臨場感が感じられるものとなっています。
とくに終章は、筆者が代表取締役社長の会社でモチベーション・マネジメントを実際にどのように運用しているのかの具体的な実践例の紹介となっています。
最初の章では、なぜ今、モチベーション・マネジメントが必要かとの変化することの必要性や背景の説明にはじまっています。
そして行動経済学の観点から変化を阻む心理的抵抗等を分析し、
本書の中核となる変化を促す「アンフリーズ=解凍」→「チェンジ=変化」→「リフリーズ=再凍結」の3ステップによる方法論を概説するという展開になっています。
第2章~第4章が本書の中核になります。
ここでは、上記の3つのステップの詳細な解説と
それを効果的に推進するための「時間のマジック」等の6つのマジック。
さらに各マジック毎の4つの具体的な技術を説く
といった構成になっています。
なかなか人は、その根のところではなかなか変わることが難しいもの。
だからこそ本書のような練られ実績をあげてきた方法論が必要。
本書の方法論は、抽象的な英語のカタカナ文字等で説かれていますが、具体的な事例を交え説得力のある解説となっています。
本書は、一環してビジネスでの展開を念頭に描かれていますが、ビジネスに限らずスポーツなど幅広い範囲で活用できるメソッドを提供しているように思う。
<<本書で何が学べるか>>
本書では、自分自身も含め部下を生き生きと変化させ、組織を変革するのに有効な方法論をわかりやすく解説しています。
<<まとめ>>
中堅社員などを抱えるマネジャーだけでなく自分を変えたいと思っている人は、本書を読んで下さい。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 変化を生み出すモチベーション・マネジメント
第2章 Unfreeze/現状の確信に揺らぎを与える
第3章 Change/変化に導いて、新しい行動を引き出す
第4章 Refreeze/新たな行動が正しいと確信させる
第5章 ある若手の物語
終章 リンクアンドモチベーションでの実践例
- 2011年04月17日
- ビジネス、自己啓発、スキルアップ
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